有効投影面積(EPA)

3月, 2023

概要

カメラ(マウントを含む)のEPA(有効投影面積)とは、風速と空気密度が異なり得るさまざまな屋外設置において、カメラにかかる風荷重を計算する際に使用する面積の値です。

AxisのカメラおよびマウントのEPA値は、データシートを参照いただくか、またはAxis supportまでお問い合わせください。表記されている値は、最悪の状況を想定した数値です。

はじめに

カメラ(マウントを含む)のEPA値とは、ポールマウントやパラペットマウントなど、屋外設置においてカメラにかかる風圧力を計算する際に必要となる面積の値です。AxisのカメラおよびマウントのEPA値は、データシートを参照いただくか、またはAxis supportまでお問い合わせください。

本ホワイトペーパーでは、AxisにおけるEPA値の計算方法、およびこの値を使用して風荷重を概算する方法について簡単にご説明します。

背景 – カメラの屋外設置における風荷重

カメラを屋外に設置する場合、予測される風荷重を把握することが重要となります。そうすれば、適切なポールの寸法や適切なサイズのボルト接続などを確認し、カメラをしっかりと設置することができます。適切に設置することで、カメラへの風荷重の影響を最小限に抑えることもできます。一般に、光学ズームを搭載したカメラは、ズームインした際に振動の影響を受けやすい傾向にあります。そのため、こうしたタイプのカメラを使用して、遠方の物体を監視する場合は、これが特に重要となります。

風によってカメラにかかる圧力は、いくつかの要因により左右されます。そのうちの風速と空気密度という2つの要因は設置環境の影響を受け、カメラのサイズと抗力係数という他2つの要因はカメラの物理的側面に依存します。この物理的側面の組み合わせにより、EPAが定義されます。

風荷重を正確に計算するには、固有振動数や渦放出など、より複雑な他の風要因も考慮に入れる必要があります。本ホワイトペーパーの本筋からは多少離れますが、重要な設置時にこうした要因が重要となる場合があります。

風荷重(抗力)の計算式

物体の抗力(FD)は、物体の受圧面積(見付面積)(A)(つまりその断面)、抗力係数(Cd)、空気密度(ρ)、風速 (v)に基づきます。抗力はNで表され、以下の計算式で算出することができます。

空気密度(ρ):空気密度は、気圧と同様に、高度が高くなるにつれて低くなります。また、大気圧、温度、湿度の変化によっても左右されます。抗力の計算では、通常、空気密度は1.2 kg/m3に設定されます。これは、気温15 °Cでの海抜0メートルにおける気圧です。

風速(v):計算において、風速は二乗されます (すなわち、v2)。つまり、抗力への影響が非常に高いということです。風速の単位は「m/s」となります。

受圧面積(A):受圧面積は、物体の最大断面積で見積もります。つまり、風向に関して最悪の状況を想定するということです。受圧面積の単位は「m2」となります。

抗力係数(Cd:抗力係数は、無次元の値です。これは、空気といった流体環境における物体(カメラやマウントなど)の抗力または抵抗を定量化するために使用される数値です。風の形状と方向によって変化する抗力係数を正確に測定するには、風洞を使用する以外に方法はありません。抗力係数が低いほど、(特定の物体のサイズに対する)風の抵抗が少ないということになります。通常、普通の球体のCdは0.47ですが、同じ断面積の立方体の場合はCdは通常1.05となります。

図に示されているように、一定の風向と断面積においても、物体の形状によって抵抗係数が異なります。

EPA – 周囲の環境に左右されないための対策

抗力の計算式における環境非依存の2つの要因により、EPAが割り出されます。

有効投影面積 = Cd A

カメラのEPAとマウントのEPAを加算することで、カメラとそのマウントの合計EPAを導き出すことができます。特定のカメラとマウントの合計EPAにより、風速と空気密度が異なるさまざまな設置場所において風によりかかる負荷を計算することが可能となります。

AxisにおけるEPA値の決定方法

AxisのカメラとマウントのEPA値は、常に抗力係数を1として計算されています。これは、最悪の状況を想定した数値です。実際には、Axisカメラの抗力係数は比較的小さいのですが、カメラの設置方法によっては、不十分な取り付けオプションや振動が要因となって、風荷重により監視結果に影響が及ぼされる可能性があります。

風向に関して、最悪の状況を想定し、カメラやマウントの最大断面積を受圧面積の値として計算しています。抗力係数「Cd」が1に設定されているため、カメラやマウントのEPAは、「m2」単位で表される最大断面積と同じになります。

例:カメラ設置時における風荷重の判断方法

下図は、AXIS T91G61 Wall Mountに取り付けられたAXIS Q6315-LE PTZ Network Cameraを示したものです。この設置における合計EPAは、カメラのEPAとマウントのEPAの合計値となります。

この設置における合計EPA(0.088 m2)は、カメラのEPA(0.045 m2)とマウントのEPA(0.043 m2)の合計値となります。図が色付けされているのは、個別の装置としてマウントとカメラを色分けすることのみを目的としていることにご注意ください。

空気密度の値「1.2 kg/m3」を考慮に入れて抗力の計算式で計算すると、この設備における風荷重は以下のようになります。

- 風速「5 m/s」で約1.3 N

- 風速「25 m/s」で約33 N