i-CSレンズ

2月, 2023

概要

i-CSレンズでは、レンズ自体の光学特性に関する情報が保持されます。これには、ズーム、フォーカス、絞り開口部をリモート制御できるモーターが備わっています。このレンズをカメラに取り付けると、カメラでレンズの情報が読み取られます。また、カメラによりレンズのモーターが制御され、光学系に関連する画質が最適化されます。i-CS レンズは、このタイプのレンズに対応しているカメラで使用することができます。

たとえば、幾何学的歪みに関するデータがカメラで読み取られ、たる型歪曲の補正(BDC)の機能が働きます。また、レンズからのデータに基づき、カメラの電子動体ブレ補正(EIS)によって自動的に画像の安定化が図られます。

i-CSレンズには、ズームやフォーカスなどの物理的な設定リングは備わっていません。i-CSレンズを搭載したカメラを設置する際は、カメラで目的の視野を捉えられることを確認するだけで済みます。他の設定はリモートで実行することができます。これにより、カメラの設置と設定に伴うコスト、労力、時間を最適化することが可能となります。多数のカメラを使用している場合は、こうした要素が特に重要となります。

はじめに

インテリジェントなCSマウントレンズ「i-CSレンズ」には、関連性の高い多くの光学特性に関する情報が格納されています。また、これには、ズーム、フォーカス、絞り開口部をリモート制御できるモーターが備わっています。光学特性に関する情報が読み取られ、レンズのモーターが使用されることで、内蔵レンズと同様に、カメラで光学系全体が最適化されます。

付いているラベルにより、 i-CSレンズであることを特定可能

Axisのi-CSレンズ対応カメラでは、オープンプロトコルにより通信が行われます。レンズから得られた情報とプロトコルにより、カメラにおいて常に画質の最適化が実現します。たとえば、幾何学的歪みに関するデータがカメラで読み取られ、たる型歪曲の補正(BDC)の機能が働きます。また、レンズからのデータに基づき、カメラの電子動体ブレ補正(EIS)によって自動的に画像の安定化が図られます。

本ホワイトペーパーでは、i-CSレンズの仕組みと主要メリットについて簡単にご説明します。

CSマウント規格

「Cマウント」と「CSマウント」は、交換可能レンズ用のマウント規格です。Axis固定ボックス型カメラは、両方の規格に対応しています。

CマウントとCSマウントの外観はほぼ同じです。両方共に口径が1インチ、TPI(1インチあたりのネジ山数)が32となります。Cマウント規格の更新版であるCSマウントは製造コストが低く、Cマウントよりも一般的に使用されています。

フランジバック(FFD)とは、レンズをカメラに取り付けた状態での取り付けフランジからカメラのイメージセンサーまでの距離ですが、CSマウントとCマウントではこのフランジバックが異なります。

  • CSマウント:FFD=12.526 mm(≈ 1/2インチ)

  • Cマウント:FFD=17.526 mm(≈ 11/16インチ)

つまり、CSマウントレンズが取り付けられる位置は、Cマウントレンズよりもカメラセンサーに5 mm近いということになります。これが両レンズの唯一の相違点です。

オープンプロトコル

AxisとレンズメーカーのComputar®との共同開発により誕生したi-CSレンズは、業界規格に準拠しています。このオープンプロトコルは、AxisとComputar®から無料で入手することができます。カメラとレンズ間の通信には、I2Cシリアルバスが使用されます。オープンスタンダードであるため、レンズメーカーは異なる機能を備えた独自のi-CSレンズを開発・製造することができます。これは、交換可能なレンズです。

i-CSレンズの特徴

i-CSレンズには、以下のような特徴に関するデータが保存されます。

  • 型式&メーカー

  • 幾何学的歪み

  • 特定のズームとピント位置における焦点距離

  • 特定のズームと絞り位置におけるF値(F値は焦点距離と入射瞳径の比です)

  • トレース(特定の距離にある物体の鮮明な画像を取得するために必要となるズームレンズとフォーカスレンズの相対的な位置を示すデータ)

  • 口径食/ケラレ(レンズの中心からの距離に応じて、レンズを通過する光量が低下する現象)

  • 変調伝達関数(MTF)(異なるズーム位置とレンズ位置におけるレンズの解像度を表す値)

  • 動作温度範囲(レンズは温度センサーを内蔵)

i-CSレンズ対応のAxisカメラでは、口径食を除くすべての特徴がサポートされています。

モーター制御

レンズに内蔵されている3つのモーターにより、レンズの機能の自動制御とリモート制御が可能となります。ズーム、フォーカス、絞り開口部のリモート制御は、カメラの設置やメンテナンスにおいて大きなメリットとなります。また、BDCやEISなどの機能もサポートされています。

一般的な機能のリモートモーター制御機能により、同じレンズを異なる目的に使用できるため、レンズの汎用性が高まります。たとえば、フォーカスと絞り開口部を自動的に制御する必要のある場所に設置されるカメラにこのレンズを使用することができます。また、ズームを定期的に再調整する必要があるカメラにも同じレンズのタイプを使用することが可能となります。i-CSレンズにはオープンプロトコルが使用されているため、異なる機能を備えたさまざまなカメラでこれを使用することができるのです。

カメラとレンズ間の通信

i-CSレンズは、このタイプのレンズがサポートされているカメラで使用することができます。これに対応していないカメラでは、i-CSレンズのケーブルコンタクトがカメラコネクターと一致しないため、i-CSレンズを接続することができません。

カメラとレンズ間の通信はケーブル接続経由で発生し、カメラでi-CSレンズのタイプが正確に検知されます。

レンズ調整

i-CSレンズでは、ほとんどの調整が自動的に行われます。最初に必要なズームをリモートで設定し、フォーカスを微調整すれば、カメラで絞り開口部が自動的に調整されます。カメラにはi-CSレンズの設定に関する情報が含まれているため、あらゆる照明条件において絞り開口部が最適化されます。BDCやEISを有効化すれば、カメラでこうした機能が自動的に調整されます。

電子動体ブレ補正

電子動体ブレ補正(EIS)により、カメラが振動を受けてもスムーズなビデオが実現します。振動の典型的な例として、強風時にポールに取り付けられたカメラが揺れる状況が挙げられます。EISの機能は、カメラのWebインターフェースで有効化することができます。

カメラでレンズの焦点距離が認識されていなければ、EISが適切に機能しない場合があります。i-CSレンズを搭載したカメラの場合は、レンズから焦点距離が直接読み取られるため、面倒な手動設定は必要ありません。

たる型歪曲の補正

完璧なレンズというものは存在しません。どのようなレンズにも限界があり、何らかの収差や画像の欠陥が生成される可能性があります。収差の1つとして挙げられるバレル歪曲では、直線が外側に湾曲します。i-CSレンズには、その幾何学的歪みに関する情報が格納されています。そのため、カメラでその情報が読み取られることで、バレル歪曲が補正されます。たる型歪曲の補正(BDC)は、多くのAxisカメラでサポートされています。この機能は、カメラのWebインターフェースで有効化することができます。

容易な設置、使用、メンテナンス

i-CSレンズには、ズームやフォーカスなどの物理的な設定リングは備わっていません。i-CSレンズを搭載したカメラを設置する際は、カメラで目的の視野を捉えられることを確認するだけで済みます。他すべての設定はリモートで実行することができます。これにより、設置プロセスに伴うコスト、労力、時間を最適化することが可能となります。多数のカメラを使用している場合は、こうした要素が特に重要となります。

迅速簡単に設置できることは、屋外の設置における大きなメリットとなります。屋外設置では、カメラがエンクロージャー内に配置され、届きにくい場所に取り付けられることが多いため、これは非常に有益な要素です。交通量の多い高速道路や交差点などに設置する場合は、その一帯を一時的に閉鎖しなければならないこともあります。i-CSレンズを搭載したカメラなら、事前にカメラをエンクロージャーに納めて、指定場所に直接取り付けるだけで済みます。設置場所でハッチを開けて、ズームやフォーカスを設定する必要がありません。これにより、時間や労力を節約できるだけでなく、カメラを乾燥やほこりから保護することが可能となります。

レンズ機能をリモート制御できることで、カメラの設定がより簡素化します。カメラは出荷時に無限遠に設定されています。カメラのWebインターフェースでズームレベルを設定すると、無限遠に焦点が固定されます。たとえば、常にフォーカスを維持するエリアを選択して、フォーカスを微調整することができます。オートフォーカスボタンをクリックすると、カメラで可能な限り最適なフォーカスが設定されますが、他の対象にフォーカスする必要性が発生した場合は、Webインターフェースを使用して手動で再度フォーカスを調整することが可能です。随時、必要な距離に合わせて手動でフォーカスを設定することができます。i-CS レンズのお陰で、ズームレベルを変更しても、カメラにおいて同じ距離でフォーカスが維持されます。

後にズームやフォーカスを再調整する必要性が発生するかもしれません。i-CSレンズにはリモートのズーム機能やフォーカス機能が備わっているため、こうした操作をリモートで行うことができます。設置場所まで運転する、道路を閉鎖する、はしごを登る、ハッチを開けてカメラにアクセスするといった手間が全くかかりません。