ピクセル密度とDORI

5月, 2023

概要

映像監視における一般的な運用要件は、映像の中の人物や物体の検知 (Detection)観察 (Observation)認識 (Recognition)識別 (Identification) (「DORI」と略されます) です。

必要な詳細レベルが決まったら、ピクセル密度モデルが、必要なカメラ解像度を把握するための基本的なガイドラインを提供します。このモデルは、識別に必要となる、人の顔の水平方向のピクセル数に基づいていますが、ピクセル密度は多くの場合、1メートルあたりまたは1フィートあたりのピクセル数で表されます。

運用要件必要なピクセル密度
検知4ピクセル/顔25ピクセル/m8ピクセル/ft
観察10ピクセル/顔63ピクセル/m20ピクセル/ft (19ピクセル/ft)*
認識20ピクセル/顔125ピクセル/m40ピクセル/ft (38ピクセル/ft)*
識別40 ピクセル/顔250ピクセル/m80ピクセル/ft (76ピクセル/ft)*

* 製品データシートでは、より正確なピクセル/mからの換算値が使用されていますが、実際には四捨五入された値が使用される傾向にあります。

ピクセル密度モデルは、使いやすいガイドラインとなります。しかし、実際には、光の方向、光学系の品質、画像圧縮など、結果に影響を与える可能性のあるその他の要因がかならずあります。Axisでは、ピクセル密度やその他多くの要素を考慮しながら、適切な場所で適切な詳細レベルを提供する監視システムを計画するのに役立つ、ピクセル密度モデルを採用したオンラインツールを提供しています。

  • AXIS Site Designerにはカメラセレクターツールが搭載されており、照明条件や設定距離で必要な詳細レベルなどの複数の基準に基づいて適切なカメラを選択することができます。

  • レンズカリキュレーターは、さまざまなカメラとレンズの組み合わせについて、設定距離におけるカメラの撮影範囲とピクセル密度を決定します。

  • ピクセルカウンターは、Axisカメラに統合されたツールで、運用要件を簡単に検証することができます。カメラのライブビューにピクセル数で計測した幅と高さのフレームを表示する、シンプルな視覚補助です。

  • AXIS Plugin for Autodesk® Revit®を使用することで、Autodesk Revit建築図面で直接、インタラクティブなAxis製品を選択して配置し、設計に監視を組み込むことができます。プラグインにはプロダクトセレクターが含まれており、シーンに合わせて対象範囲を確認し、設定を調整することができます。

DORIの定義に関連する距離の計算は、新しいAxis製品の製品データシートにも記載されています。

指定されたこれらの運用要件は、視覚的なビデオ映像を人間のオペレーターが解釈する状況において有効です。ビデオ分析アプリケーションなど、画像解析がソフトウェアによって行われるシステムの場合は、他の定義が適用されます。サーマル画像 (サーマルカメラ使用) の場合も、運用要件が異なります。

また、外部ディスプレイを使用して監視する場合、個人を検知、観察、認識、識別する能力は、そのディスプレイの画面解像度に大きく依存することにも注意する必要があります。

はじめに

監視システムを設計する際は、そのシステムの目的を念頭に置くことが重要です。データシートや技術仕様を使用して最適な解像度のカメラを探すこともできますが、コストと労力を最適化するためには、どのカメラとセットアップが目的の運用要件に適しているかを重視する必要があります。例えば、映像から個人を識別できる必要があるのか、それとも誰かがいるかどうかだけを検知できればよいのか。

このホワイトペーパーでは、システムの運用要件を満たすカメラを選択する方法について説明します。また、ピクセル密度の要件と、監視システムを計画するためのAxisツールについても説明します。

運用要件

検知 (Detection)観察 (Observation)認識 (Recognition)識別 (Identification)の必要性を区別します。これらの要件は、DORIという頭文字で呼ばれることもあります。

映像監視における一般的な運用要件。
運用要件詳細レベル
検知個人が存在するかどうかを判断することができます。
観察

そこにいる人数や、特徴的な衣服などの個人の特徴的な詳細を確認することができます。

認識閲覧者は、表示された個人が以前に見たことのある人物と同じであるかどうかを判断することができます。
識別個人を識別することができます。

これらの要件の仕様 (可視光カメラ) は、国際規格IEC 62676-4 (セキュリティアプリケーションでの使用向け映像監視システム - Part 4: アプリケーションガイドライン) に準拠しています。

これらの運用要件の仕様は、視覚的なビデオ映像を人間のオペレーターが解釈する状況において有効です。ビデオ分析アプリケーションなど、画像解析がソフトウェアによって行われるシステムの場合は、運用要件の他の定義が適用されます。サーマル画像 (サーマルカメラ使用) も、運用要件の仕様が異なります。

3つの運用要件基準を表すため、同じ人物の画像を3枚組み合わせたもの。カメラに最も近い人物は、十分識別できるほど近くに写っています。真ん中の人物は認識できますが、一番遠くの人物は検知しかできません。

ピクセル密度モデル - 運用要件とカメラ解像度の関連付け

監視システムに必要な詳細レベルが決まったら、その要件を満たすカメラを探す必要があります。ここで重要となるのが、詳細レベルをカメラの解像度に関連づけたピクセル密度モデルです。

ピクセル密度モデルとは?

モデルの基本は、人間の顔の幅とその特徴的な識別要素を、要求された詳細レベルで表すために必要なピクセル数です。標準化されたピクセル密度の要件を取得するには、人間の平均的な顔幅を16 cm (6 5/16インチ) と仮定して、顔のピクセル密度を1メートルまたは1フィートあたりに必要なピクセル数に再計算します。表は、これにより導き出された、さまざまな運用要件のカテゴリーに対するピクセル密度を示しています。

さまざまな運用要件に対するピクセル密度
運用要件必要なピクセル密度
検知4ピクセル/顔25ピクセル/m8ピクセル/ft
観察10ピクセル/顔63ピクセル/m20ピクセル/ft (19ピクセル/ft)*
認識20ピクセル/顔125ピクセル/m40ピクセル/ft (38ピクセル/ft)*
識別40 ピクセル/顔250ピクセル/m80ピクセル/ft (76ピクセル/ft)*

* IEC 62676-4には、値がピクセル/m単位で記載されています。測定にメートルではなくフィートを使用する市場向けに、当社では標準化された値をピクセル/ftに変換しています。Axis製品のデータシートには、正確に変換された値 (19、38、76ピクセル/ft) が記載されており、これを使用して距離を計算しています。ただし、実際には、四捨五入された値 (20、40、80ピクセル/ft) が多く使用されます。

通常、IEC 62676-4などでは、人間の顔を識別するために、顔幅に対し少なくとも40ピクセルを確保することが推奨されています。可能であれば、さらに高いピクセル密度を確保することで、照明が不十分な場合や人の顔がカメラに直接向いていない場合など、最悪の条件に備えた安全マージンを得ることができます。

特定のカメラ設定で達成できるピクセル密度は、特に、カメラと対象の人物または物体との間の距離によって異なります。カメラから離れた場所にいる人物は、カメラに近い場所にいる人物よりもピクセル密度が低くなります。

複雑な現実を簡略化したモデル

ピクセル密度モデルは、複雑な現実を単純化したモデルであることを覚えておく必要があります。このモデルは指針として使用できますが、この簡略化された法則に従えば、カメラが運用要件を満たせるという保証はありません。また、ピクセル密度のガイドラインに準拠していない場合でも、必ずしも運用要件が満たされないわけではありません。実際には、光の方向、光学系の品質、画像圧縮など、結果に影響を与えるその他の要因がかならずあります。Axisでは、ピクセル密度やその他多くの要素を考慮しながら監視サイトを設計するためのオンラインツールをいくつか提供しています。

光学系の選択は、それ自体が科学となるほど特に重要で、これが内蔵レンズを含めて徹底的にテストされたカメラを販売しているメーカーと提携することを推奨する理由です。

また、外部ディスプレイを使用して監視する場合、個人を検知、観察、認識、識別する能力は、そのディスプレイの画面解像度に大きく依存することにも注意する必要があります。

サイトデザイン用ツール

Axisでは、ピクセル密度と運用要件を撮影シーンやカメラの機能に関連付けるツールをいくつか提供しています。これらのツールは、運用要件を満たす総合的な監視サイトを設計するのに役立ちます。

DORIの定義に関連する距離の計算は、DORIが関連する新しいAxis製品の製品データシートにも記載されています。これらの計算では、画像の中心を基準点として使用し、レンズの歪みを考慮します。

AXIS Site Designer

AXIS Site Designerは、必要なカメラ、アクセサリー、録画ソリューションを選択するのに役立つ包括的なオンラインサイトプランニングツールです。カメラセレクターツールは、さまざまな照明条件に対し、設定距離で必要となるピクセル密度や詳細レベルなど、さまざまな基準に基づいて、適切なカメラを選択するのに役立ちます。

AXIS Site Designerでは、カメラの撮影範囲全体で各カメラの達成可能なピクセル密度を視覚化することができ、運用要件ごとに異なる色合いで表示されます。

AXIS Site Designerのデバイスセレクターツールのスクリーンショット。

レンズカリキュレーター

オンラインレンズカリキュレーターツールは、さまざまなカメラとレンズの組み合わせについて、設定距離におけるカメラの撮影範囲とピクセル密度を決定します。

レンズカリキュレーターのスクリーンショット。

ピクセルカウンター

ピクセルカウンターはAxisカメラに統合されたツールで、カメラの設定を行う際に運用要件を簡単に確認することができます。ピクセルカウンターは枠の形をした、シンプルな視覚補助です。カメラのライブビューに対応するカウンターと共に表示し、フレームの幅と高さをピクセル数で表示することができます。画像内をドラッグアンドドロップで調整、移動することが可能です。

ピクセルカウンターを表示したカメラビュー。ツールは、フレームの水平方向のピクセル数が96、つまり識別が可能であることを示しています (要件: 顔の水平方向のピクセル数が40以上)。

AXIS Plugin for Autodesk® Revit®

AXIS Plugin for Autodesk Revitを使用すると、選択したAxisカメラの3DカメラモデルをAutodesk Revitの建築図面に配置することができます。このモデルは、カメラの撮影範囲 (DORIエリアを含む) を示し、建築プロジェクトの監視要件に適合するように、設定可能なプロパティで撮影範囲を確認できるようにします。モデルの撮影範囲はカメラの実際の撮影範囲に対応し、ユーザーに3Dによる信頼性の高いプランニングオプションを提供します。