電源プロファイル
概要
Axisのカメラにはヒーターが内蔵されているため、指定の温度範囲内で動作するように設計されています。ヒーターは効率的に制御され、ヒーターが起動する温度は、カメラのモデルなどのさまざまな要因によって異なります。
特定のAxisカメラでは、低電力の電力プロファイル(低電力モード)を選択することができます。これにより、大半のヒーターが無効化されます。周囲温度やカメラに関係する状況によっても異なりますが、低電力モードを使用すると、カメラの消費電力を最大50%削減することが可能です。
周囲温度が推奨最低温度以上の環境で、この低電力モードを使用することができます。この温度はカメラのWebインターフェースに指定されています。周囲温度が推奨最低温度を下回る可能性のある状況下では、カメラをフルパワーモード(デフォルトモード)で使用することが勧められます。
低電力モードを利用することで、カメラの年間消費電力を削減することが可能となります。当社の推定では、カメラがスウェーデンのルンドに設置されている場合は24%、ニューヨークに設置されている場合は13%、温暖な気候のダラスに設置されている場合は4%の削減が実現します。
はじめに
カメラの消費電力を削減することで、エコロジカル・フットプリント(環境への影響)と長期的な監視システムのコストを削減することができます。これを実現する方法の1つとして、Axisカメラで低電力の電力プロファイルを使用する手段が挙げられます。本ホワイトペーパーでは、低電力モードの概要、その利点、制限事項についてご説明します。
低電力モードの機能
低電力モードにすると、カメラ内の大半のヒーターが無効化されます。この低電力モードを利用することで、カメラの消費電力を最大50%削減することが可能となります。この削減率は、周囲温度、カメラのモデル、ファームウェアのバージョン、カメラのワークロードなどによって異なります。
レンズやモーターなど、カメラの重要機能を監視する役目を果たすシステムは、選択する電力プロファイルに関係なく、アクティブなまま維持されます。カメラのモデルによって異なりますが、AXIS Q6225-LE PTZ Cameraの前面ガラスのヒーターなどは、低電力モードになっている場合でも手動で起動することができます。
異なる温度における消費電力
当社は異なる温度におけるカメラの消費電力をチェックすることを目的として、電力プロファイルが備わっているAxis PTZカメラを気候室に配置して、+50°C(+122 °F)から-5 °C(+23 °F)にゆっくりと温度を下げていく実験を実施しました。
同じカメラを使用して、1度目はフルパワーモード(デフォルトの電力設定)で、2度目は低電力モードで実験を実行しています。カメラのパワーメーター機能で、両方の実験で消費電力を監視しました。カメラの1つのアクティブなビデオストリームが、SDカードに継続的に記録される仕組みです。
周囲温度が+10 °C(+50 °F)から+5 °C(+41 °F)に低下した状況下で、フルパワーモードのカメラの消費電力が約15 Wから約32 Wに増加しています。これは、周囲温度が+6 °C(+43 °F)を下回ったときにヒーターが起動されたためです。
低電力モードになっているカメラの場合は、同じ温度範囲で消費電力が15 Wに維持されています。これは、ヒーターがオフに維持されたためです。結果として、+6 °C(+43 °F)で消費電力が約53%削減されました。
グラフを見ると、ヒーターがオフの状態の測定値について2つの電力モードの間にわずかなずれが生じていますが、これは、パンモーターやチルトモーターの位置など、わずかなテスト条件の相違に起因するもので、電力プロファイルとは無関係です。
ヒーターが起動する温度は、カメラのモデルなどによって異なります。
要件と構成
低電力モードを含め、電力プロファイルは特定のAxisカメラに備わっており、これを利用するにはAXIS OSの更新が必要とある場合があります。
カメラを初めて起動する際、または工場出荷時設定にリセットした後の起動プロセス中に、低電力モードを選択することができます。低電力モードを使用する場合は、これを意図的に選択する必要があります。デフォルト設定はフルパワーモードになっています。
初回起動後のカメラ設定でも、低電力モードを選択することができます。電源プロファイルは、カメラのWebインターフェースの「システム > 電源設定」にあります。ここで、パワーメーター機能をオンにすることも可能です。この機能を有効化すると、カメラの消費電力を容易に測定および監視できるようになります。
電力プロファイルとミッドスパン
低電力モードは、起動時に実行されるPoE電力ネゴシエーションとは関係がありません。電力プロファイルに関係なく、カメラでは通常通りPoE電力ネゴシエーションが実行されますが、低電力モードでは使用する電力が少なくなる可能性が高くなります。低電力モードは、カメラの平均消費電力を抑えることを目的とした機能であり、それほど強力でないミッドスパンを有効化することを意図したものではありません。
たとえば、AXIS Q6225-LE PTZ CameraでカメラのIR機能を使用するには、90 Wミッドスパンが必要となります。多くの場合、低電力モードではカメラの消費電力が低下しますが、IRを有効化するには90 Wミッドスパンが必要となります。
他のAxisカメラにも同じ原理が当てはまります。一部の周囲温度における消費電力を考えると、60 Wミッドスパンではなく、30 Wミッドスパンを使用できるように思えるもしれませんが、フルパワーモードで 60 Wミッドスパンが必要なカメラでは、低電力モードでも60 Wミッドスパンが必要となります。低電力モードにおいては、60 Wミッドスパンから供給される電力のカメラによる消費量がフルパワーモードよりも低くなる可能性は高くなりますが、それでも60 Wミッドスパンが必要です。
低電力モードにおける制限事項
電力プロファイルがサポートされている各カメラには、低電力モードを使用する上での最低推奨周囲温度というものが指定されています。この温度は、それほど風が吹いていない比較的乾燥した環境に適用されます。これは、Webインターフェースに指定されています。
推奨温度よりも低い温度でカメラを低電力モードにすると、氷や結露が発生する危険性があります。これにより、カメラのパンやチルト機能に影響が及ぼされ、監視エリアの鮮明な視界を維持することができなくなる可能性があります。周囲温度が推奨最低温度を時々下回るような状況下では、カメラをフルパワーモードで使用する必要があります。
周囲温度に応じた節電の例
低電力モードによる消費電力の削減率は、カメラの周囲温度に大きく左右されます。そのため、正確な消費電力の削減率を計算または予測することは困難ですが、以下の例を目安としてください。以下の目安は、スウェーデンのルンドにカメラを設置することを前提条件としています。下のグラフは、2022年3月~2023年3月に1時間ごとに測定された平均周囲温度が摂氏で示されています。破線が引かれた温度で、カメラのヒーターが起動します。
温度が破線を下回っている状況下で、カメラを低電力モードすると、消費電力を削減できる可能性があります。ただし、これが可能となるのは、3月、11月、12月のほとんどの期間、および1月、2月、4月の一部です。
低電力モードにより実現する消費電力の削減値を温度データと合わせて分析すると、ルンドに設置されたカメラの場合は、電力消費量を年間24%削減できることになります。
この例では、温度が-5 °C(+23 °F)を時折下回る場合があります。これほど低温になる可能性がある場合は、フルパワーモードを使用する必要があります。
同様の方法を使用して、他の場所の温度データを分析すると、ニューヨークに設置された同じカメラの場合は、その消費電力が13%削減される計算となります。ダラスのような温暖な都市でも、主に1月と12月には比較的寒い朝があることから、カメラの年間消費電力を4%削減できる可能性があります。