監視におけるレーダー
概要
非可視技術をベースにしていますが、レーダーは監視目的に適した多くの特徴があります。レーダーは、他の監視技術ではアラームを見逃したり誤報を発したりする可能性のある多くの状況、たとえば、照明が不十分な場所、暗闇、霧の中、シーンに動く影や光がある場合などに威力を発揮します。またレーダーは、レーダー情報から個人を特定できないため、プライバシーの維持にも役立ちます。
Axisレーダーには物体の追跡と分類が統合されており、ディープラーニング分類アルゴリズムによって、検知された物体の種類(人間や車両など)を区別します。レーダーは、検知した内容に応じてさまざまなアクションをトリガーするように設定できます。
レーダーは、プライバシー問題が原因でカメラが許可されていない環境などでも、それだけで使用できます。ただし多くの場合、レーダーは、ビデオ装置と音声装置が搭載されたセキュリティシステムに統合されます。
代表的な設置を以下に示します。
レーダーと可視光カメラの組み合わせ - レーダーで検知した個人の識別用。この組み合わせは、特にPTZ(パン/チルト/ズーム)カメラとの併用で効果を発揮し、レーダーによる正確な地理的位置に基づいて人物や車両を追跡できます。
レーダーとサーマルカメラの組み合わせ - レーダーの広い検知範囲がサーマルカメラの狭く長い検知範囲を補完します。
レーダーと音声装置 - 視覚的な識別が許可されていない、または優先されない場合。抑止音声メッセージは、レーダーによって検知された侵入者を効果的に阻止できます。
交通統計用やドライバーフィードバック用のレーダー — レーダーを使用して車両の台数計測や、スピード違反車両の検知が可能です。また、レーダーをデジタル速度標識に接続してドライバーにフィードバックを提供することができます。
Axisはまた、レーダーとカメラを1つの装置に統合したレーダー・ビデオ融合型カメラも提供しています。ビデオ分析とレーダー分析を組み合わせることで、さらに優れた検知、分類、可視化が可能になります。
Axisレーダーは、公衆がさらされる電磁界の安全限度内で動作します。通常の動作中、放射量は推奨基準レベルよりも大幅に低くなります。これにより、放射線の安全性を気にすることなく、同じ場所で複数のレーダーを安全に使用できます。
本書の最後のセクションでは、レーダー、可視光カメラ、サーマルカメラの相違点と類似点を比較表にまとめています。技術にはそれぞれ長所と限界があるため、多くの場合は、複数の技術を組み合わせると効果的です。
はじめに
レーダーは、電波に基づいた確立済みの検知技術です。1940年代ごろ軍事用として開発されたレーダーは、すぐに他の市場にも広がっていきました。その用途は常に発展し続けており、現在では、天気予報、道路交通監視、航空・船舶の衝突防止などが一般的な用途となっています。最新の半導体技術により、非常に便利なサイズのレーダーシステムオンチップを自動車や小型の消費財製品でも使用できるようになりました。民間のセキュリティ市場では、レーダー装置でビデオカメラやその他の技術を補完して、監視システムを拡張・改善することができます。
このホワイトペーパーでは、レーダー技術のしくみについて簡単に説明し、セキュリティと監視におけるその具体的な用途の詳細について説明します。レーダーを設置する前に考慮すべき要素、およびこうした要素が検知効率にどのように影響するかについて説明します。ここでは、ビデオ分析やサーマルカメラなどの他のセキュリティ技術と比較してレーダーの長所と短所に焦点を当て、最適な監視を実現するためにさまざまな技術を組み合わせる方法を示します。
レーダーとは?
レーダーという用語は、radio detection and rangingという、より説明的なフレーズを基にした頭字語です。レーダーとは、電波を使って物体を検知し、その距離がどれくらいかを判断する技術です。
仕組み
レーダーは、無線周波域(つまり電波)の電磁波で構成された信号を送信します。レーダー信号が物体に当たると、通常、信号はさまざまな方向に反射・散乱します。信号のごく一部は反射されてレーダー装置に跳ね返り、レーダーの受信機によって検知されます。検知された信号はぶつかった物体の位置、大きさ、速度を判断するために使用可能な情報を提供します。

採用している原則は同じですが、レーダーは短い無線パルスまたは連続信号のいずれかで構成されます。これらの基盤となる技術は、反射する信号の移動時間または周波数シフトのいずれかの測定値に基づいています。レーダーは検知された物体までの距離やその物体の速度を提供するように設計でき、高度な信号処理によって検知プロセスをさらに微調整できます。Axisレーダーは、周波数変調連続波(FMCW)レーダー(距離と速度の両方を決定できるレーダーのタイプ)です。こうした装置では、視線速度(レーダーに向かう、またはレーダーから離れる物体の速度成分)を測定し、それを使って実際の速度を計算します。
RCS (レーダー反射断面積)
レーダーによる物体の可視性は、レーダー反射断面積 (RCS) によって決定されます。これは、物体の大きさ、形状、および材質に関する情報から算出可能な数値であり、最終的にはレーダーから見た物体の大きさを決定します。人間のRCSは通常0.1 m2~1 m2の範囲で変動します。ただし、これは潰れた缶の一般的なRCSでもあり、物理的にはずっと小さいのですが、レーダーにとっての可視性は高くなります。RCSは m2単位で測定されますが、実際の面積に対応しているわけではなく、仮想的な換算値です。
物体 | レーダー反射断面積 | |
虫 | 0.00001 m2 | |
鳥 | 0.01 m2 | |
人物 | 0.1~1 m2 | |
潰れた金属の缶 | 0.1~1 m2 |
監視にレーダーを使用する理由
レーダーは、可視光カメラなどとは、まったく異なる技術に基づいた監視を提供します。レーダーは、可視光カメラ、サーマルカメラ、ホーンスピーカー、PIR(受動型赤外線)動体検知器などと組み合わせてセキュリティシステムに組み込むことも、スタンドアロンで使用することもできます。スタンドアロンで使用した場合、または音声装置と併用した場合、プライバシーを守る非視覚的な監視が可能になります。
可視性が低い環境でも高い信頼性を実現
レーダーは、視覚的印象を検知しないため、霧などの視界をさえぎる気象現象による影響を受けません。また、強い逆光や完全な暗闇など、困難な状況や低光量の状況でも機能を発揮します。こういった状況下では、レーダーは映像監視を補完する非常に優れた手段となります。分析機能を搭載したサーマルカメラも同様に機能しますが、レーダーはより多くの物体情報を低コストで提供し、広い範囲での検知が可能です。
低い誤報率
監視では、実際のインシデントを見逃さないようにすると同時に、誤報の数を抑えることが不可欠です。たとえば、保安担当者に直接アラームを送信する場合、誤報率を最小限に抑えることが重要です。誤報が多すぎると、保安担当者がシステムを信用できなくなり、本当のアラームを誤報と見なしてしまう可能性があります。
さまざまなタイプの動体検知器やビデオ分析機能からのアラームは、多くの場合、ビデオ録画をトリガーしたり、あらかじめ録音された音声メッセージをトリガーして望ましくない行為を抑止したり、管理室のオペレーターに直接通知したりするよう設定されています。ビデオ録画をトリガーする誤報率が高いと、大量の映像が録画されます。こうした大量の録画は、すべての録画を保存するのに十分なストレージがない場合、またはアラームによってトリガーされたすべての録画を検索するのに必要なリソースが多すぎる場合に問題となる可能性があります。また、録音メッセージをトリガーする誤報率が高いと、抑止力が大幅に損なわれる恐れがあります。
レーダーは、以下のような原因に応じて、誤報をなくしたり、最小限に抑えたりすることができます。
視覚効果。 ビデオ動体検知器は、監視シーンの設定されたピクセル数の変化に基づいて動きを登録します。ピクセル数が以前と比べて一定以上数変化すると、検知器はこれを動きとして解釈します。ただし、ピクセルの変化だけを基準にすると、単なる視覚事象に起因するアラームが多数発生します。一般的な例としては、動いている影や光線が挙げられます。これらにはレーダー反射断面積がないため、レーダーはこのような視覚効果を無視し、物理的な物体の動きのみを検知します。
悪天候。 雨や雪が降ると、映像に基づく検知器の視界が大幅に損なわれますが、レーダーの信号はあまり影響を受けません。
虫や雨滴。 ビデオ動体検知では、カメラのすぐ近くに非常に小さな物体があると誤報が発生することがあります。カメラのレンズ上の雨粒や虫がその一般的な例です。虫は光に引き寄せられるため、映像監視に暗視用の赤外線照明を併用している場合は、特に問題となることがあります。レーダーは、装置のすぐ近くにある物体を無視するように設計できるため、こういった誤報の原因を排除することができます。ビデオでは、このようなことは不可能です。
内蔵分析機能
Axisレーダーには、分析機能を追加する必要はありません。物体を検知、追跡、分類する機能すべてがレーダー装置に内蔵されています。
プライバシーを確保した監視
監視カメラは個人のプライバシーを侵害するものと認識される可能性があります。監視カメラの設置には、当局の許可や、ビデオに映っているすべての人からの同意が必要になる場合があります。場所によっては、非視覚的なレーダー検知の方が適した選択肢になります。レーダーと、レーダーがトリガーしたときに抑止音声メッセージを再生するネットワークスピーカーなどを組み合わせることで、より高い安全性が得られます。
Axisレーダー
Axisレーダーは、スタンドアロンの検知器として使用することもできますが、シーンの視覚的なビューを提供するカメラと組み合わせて使用することもできます。Axisレーダーは、厳しい環境下で検知能力を高め、誤報を最小限に抑えることが望ましい屋外の設置に適しています。レーダーは、その高度な追跡アルゴリズムと、それによる位置情報や速度情報により、セキュリティシステムに新たな機能を追加することもできます。
Axisレーダーは、オープンエリアの監視を目的としています。これには通常、工業用の敷地や屋上など柵で囲まれたエリアや、営業時間外は活動が予想されない駐車場などが挙げられます。
一般的な機能と能力
Axisレーダーは、Axisカメラと多くの機能を共有しています。たとえば、レーダーをセキュリティシステムのカメラと同様に扱うことができます。主要なビデオ管理システム (VMS) と、一般的なビデオホスティングシステムに対応しています。Axisカメラと同様、AxisレーダーはAxisオープンVAPIX®インターフェースに対応しており、さまざまなプラットフォームで統合が可能です。
さらに、Axisカメラと同様、Axisレーダーは、検知時にさまざまなアクションをトリガーするよう設定できます。犯罪防止のため、たとえば統合されたリレーを使用してLED投光器を切り替えたり、ホーンスピーカーで音声を再生したり、ビデオ録画を開始してセキュリティ担当者に警告を送信したりできます。分類機能では、検知された物体が人物や車両などに分類された場合にのみ、このルールが適用されるようにできます。
物体が動いている場所を見やすくするために、平面図や航空写真など、レーダーがカバーしている範囲を示す参照マップをアップロードできます。

レーダーは、継続的に更新される位置情報を提供します。これは、位置や速度などレーダー特有の情報が拡張機能として追加された、ONVIF仕様準拠のオープンメタデータストリームを介して実行されます。サードパーティの開発者は、この情報を使用して、クロスラインディテクションや速度監視などの用途に適したアプリケーションを作成することができます。また、レーダーの位置情報と方位を追加して、オーバービュー画像やマップでリアルタイムに検知を視覚化することもできます。
レーダーには速度と距離に関する情報があるため、物体の速度と物体がどのようにエリアを通過するかに基づいてフィルタリングする機能も提供します。
代表的な使用例
レーダーは、検知や抑止を最適化するために他の装置と組み合わされることが多くあります。一般的なレーダーの使用は以下の通りです。
レーダーとカメラによる検知と視覚による確認。 アラームの原因を効率的に特定したり、個人を識別したりするため、ビデオカメラでもシーンを監視できます。このユースケースでは、代わりにレーダーとビデオを融合したカメラを使用することで、さらに優れた検知、分類、視覚化を実現できます。
PTZオートトラッキング。 Axisレーダーは、PTZ(パン/チルト/ズーム)オートトラッキングに使用できます。レーダーが検知すると、接続されたPTZカメラが自動的にトリガーされ、検知された物体に焦点を合わせて追跡し、視覚的な詳細情報を提供します。レーダーが物体の正確な地理的位置を提供するため、オートトラッキング機能が可能です。Axisでは、エッジベースとサーバーベースのオートトラッキングを提供しています。サーバーベース機能では、複数のPTZカメラとレーダーを組み合わせて、さまざまな場所に設置できます。
レーダーとサーマルカメラによる外周保護。 外周部にサーマルカメラを設置し、立入制限区域内の侵入者を追跡するためのレーダーで補完することで、立入制限区域を保護することができます。この設定では、サーマルカメラの狭く長い検知範囲と、レーダーの広い検知範囲をコスト効率よく組み合わせて使用することができます。
プライバシーを維持した検知と抑止。 レーダーとネットワークホーンスピーカーを設置することで、レーダーで検知した侵入者を音声メッセージで効率的に抑止できます。
交通速度とドライバーのフィードバック。 レーダーはスピード違反車両の検知に使用できます。設定と最高速度についてはユーザーマニュアルをご確認ください。レーダーをデジタル速度標識に接続して、通過車両の速度を表示できます。このような速度標識はドライバーにフィードバックを提供し、ドライバーに速度を落とさせるのに非常に効果的です。
交通統計データ。 レーダーは車両をカウントし、車両の速度や進行方向に関する交通統計データを収集できます。カメラとAXIS Speed Monitorを使用することで、監視対象道路の状況や安全性に関する実用的な洞察を得るための統計データを可視化できます。
エリア監視と道路監視
Axisレーダーは、オープンエリアの監視を目的としています。Axisレーダーはエリア監視と道路監視のどちらにも使用できます。レーダーには2つのプロファイルがあり、それぞれが各シナリオ用に最適化されています。
エリア監視プロファイルは、低速で移動する物体用に最適化されています。このプロファイルを使用すると、物体が人物、車両、または不明であるかを検知できます。これらの物体が検知されたときにアクションをトリガーするルールを設定できます。
道路監視プロファイルは、郊外の道路や高速道路を高速で走行する車両の追跡用に最適化されています。
プロファイルとそれぞれの速度仕様の詳細については、各レーダーのユーザーマニュアルを参照してください。
シナリオと除外範囲
動きを検知する場所を決定するために、複数のゾーンを追加できます。さまざまなゾーンを使用して、さまざまなアクションをトリガーできます。ゾーンには次の2種類があります。
シナリオ(以前は対象範囲と呼ばれていた)とは、動く物体によってルールがトリガーされるエリアです。デフォルトのシナリオはレーダーによってカバーされるエリア全体です。シーンの部分別に異なるルールを作成したい場合は、シナリオを追加できます。シナリオを追加する際、物体がエリアに侵入した場合にトリガーするか、1本または2本のラインを横断した場合にトリガーするかを選択できます。
除外範囲は、動く物体が無視されるエリアです。シナリオ内に不要なアラームが何度もトリガーされる範囲がある場合に、除外範囲を使用できます。
除外範囲による望ましくない反射の処理
金属などの反射材でできた物体はレーダーの性能を妨げる可能性があります。反射は真の検知と区別するのが難しい誤検知を引き起こすことがあります。
不要な検知は、交通量の多い道路や、葉が揺れている木や茂みのある場所など、動いている物体が多いエリアでも発生する可能性があります。
レーダーのWebインターフェースで除外範囲を追加することにより、不要な検知を回避できます。レーダーは、定義された除外範囲内のすべての動体を無視します。

検知範囲と複数のレーダーの使用
検知範囲は、検知する物体の種類によって異なります。また、シーンの地形やレーダーの取り付け高さとチルトにも左右されます。複数のレーダーを設置することで、各レーダーの本来の検知範囲よりも広いエリアをカバーできます。
電磁干渉を避けるため、同じ共存エリア内で隣接するレーダーの最大許容数を超えないようにしてください。干渉はレーダーの性能に悪影響を与えます。干渉の問題は、同じ共存エリア内にあるレーダーの数に応じて増加しますが、周囲環境や、フェンス、建物、または隣接するレーダーへのレーダーの方向にも左右されます。同じ共存エリア内で隣接するレーダーの最大許容数を超える場合は、隣接するレーダーの向きを互いに遠ざける必要があります。また、Axisレーダーには、干渉を最小限に押さえるために有効化できる共存オプションも用意されています。
各レーダーで最大限の検知範囲と最小限の干渉を実現するための範囲仕様と設置アドバイスについては、該当するインストールガイドとユーザーマニュアルを参照してください。また、AXIS Site Designerを使用して、レーダーの配置と検知範囲を計画することもできます。
追跡と分類
物体の検知、追跡、および分類はすべてレーダーに統合されているため、追加の分析アプリケーションは不要です。反射信号の位相シフトと周波数シフトを測定することにより、Axisレーダーは移動物体の位置、速度、方向、サイズに関するデータを取得します。
次に、データは検知された物体を追跡および分類する、レーダーの高度な信号処理アルゴリズムによって処理されます。システムは、反射データをクラスターにグループ化して各物体を表し、クラスターが連続するタイムフレームでどのように移動するかに関する情報を収集してトラックを形成します。動きのパターンの数学的モデルを応用し、データを「フィルタリング」することによって、人や車両など、物体がどのカテゴリーに属するかをアルゴリズムによって決定することができます。従来の機械学習をディープラーニングと組み合わせた分類アルゴリズムは、人物や車両、さまざまな動物からのレーダーシグネチャーの大容量のデータセットを使用して学習しています。ユーザーによる、さらなるトレーニングは必要ありません。
適用された数学的モデルは、レーダーがフレームを見逃した場合や、物体が短時間遮蔽された場合などに、必要に応じて物体の位置を予測することもできます。追跡アルゴリズムによって、ノイズや故障の測定に対するレーダーの堅牢性が向上します。
検討事項
すべての検知技術と同様、Axisレーダーの性能が最適ではない状況も考えられます。このような状況には次のようなものがあります。
揺らめいている静止物体が誤検知を引き起こす可能性があります。レーダーは通常、風に吹かれて揺れる木、植込み、旗などを除外できますが、強風や突風が発生すると、フィルタリングアルゴリズムが十分に機能しない場合があります。これが問題となる場合は、代わりにゾーン全体を除外できます。
植物により、動きが非常に遅い物体の検知効率が制限される可能性があります。 所定の範囲と速度に対して、レーダーが検知できる物体は1つのみです。たとえば、ある方向の50m離れた場所にゆっくりと揺れる木々がある場合、別の方向の50m離れた場所でゆっくりと移動している人物の検知が阻害される可能性があります。
込み入った環境では、誤検知が発生する可能性があります。 車両や建物など、反射する物体が多数存在するシーンでは、レーダー信号の複数の反射により誤検知が発生する可能性があります。
2つ以上の動いている物体(人を含む)が誤って1つの物体(人を含む)に分類される場合があります。レーダーが物体を個別のものとして区別するには、通常、物体が3m(10フィート)以上離れている必要があります。
交通監視に使用する場合は、使用する装置とプロファイルの最高速度を確認してください。トラッキングアルゴリズムは、データシートに記載されている最高速度以下の速度に対応するように設計されています。最高速度を超える物体は見逃されたり、誤った角度で検知されたりする可能性があります。
EMFの安全性
電磁場(EMF)を放出する無線機器のメーカーは、製品の安全性を確保するために厳しい国際規格と規制を遵守する必要があります。これには、24GHzや60GHzの周波数帯で動作するAxisレーダーも含まれます。こうした帯域の装置にライセンスは必要ありませんが、Axisは独自のテストと認証サービスプロバイダーで実施される評価を使用して、人体が受ける電磁場に関する地域規制と国際規制への準拠を保証しています。
電磁波の暴露限度は、電磁波を放出する装置の安全な動作を確保するために、広範な医学的研究に基づいて設定されています。多くの国は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)1 が定めたガイドラインを採用していますが、米国は連邦通信委員会(FCC)2 が施行する同様の制限に従っています。こうした制限は、健康への悪影響が観測されるレベルよりも大幅に低い、大きな安全マージンを確保した保守的な設定となっています。
Axisレーダーはこうした安全制限の範囲内で動作します。通常動作時の放射は規定の基準レベルよりも大幅に低いため、放射線の安全性を心配することなく、同じサイトで複数のレーダーを安全に使用できます。
Axisレーダーは、100mWを大幅に下回る電力を送信するもので、標準のWi-Fi®ルーターのパワー出力と同等です。電力密度は2乗の反比例に従い、発生源からの距離が増加するにつれて急速に減少します。その結果、わずか数センチメートルの短距離で、Axisレーダーの電力密度はすでにEMF暴露限度をはるかに下回ります。
Axisでは、最大の安全性を確保するため、レーダーから少なくとも20cm(~7.9インチ)の距離を保つことを推奨しています。この距離であれば、電力密度はわずか0.2W/m²であり、ICNIRPとFCCの両方が定めた公衆暴露限界の10W/m²を大幅に下回ります。この推奨事項により、レーダーの近くにいる人々の安全性と安心がさらに高まります。
1 電磁界への暴露制限に関するICNIRPガイドライン(100kHz ~ 300GHz)、https://www.icnirp.org/cms/upload/publications/ICNIRPrfgdl2020.pdf
2 無線周波数放射の環境影響を評価するためのFCCガイドライン、https://www.fcc.gov/document/guidelines-evaluating-environmental-effects-radiofrequency
監視技術の比較
すべての設置状況に最適な単一の技術は存在しません。この表は、レーダーを含む監視技術を複数の要素を考慮して比較したものです。
Axisレーダー | 動体検知録画機能付き監視カメラ | 分析機能付きサーマルカメラ | |
距離/範囲 | 中程度/広い | 短い/広い | 長い/狭い |
照明が必要 | 不要 | 必要 | 不要 |
誤報率 | 低 | 高 | 低 |
Cost(価格) | 中 | 低 | 高 |
物体情報 | 検知、位置、GPS座標、速度、距離、動きの角度 | 検知、認識、識別 | 検知、認識 |
この比較からわかるように、レーダー監視は他の技術よりも、位置や速度など、さまざまなタイプの物体情報を提供します。ただし、すべての技術には独自の長所と短所があるため、最適な監視を実現するためには、複数の技術を組み合わせて相互に補完することが推奨されます。