煙アラート

11月, 2021

概要

重要!煙アラート機能は、認定済みの検知ソリューションに代わるものではありません。煙アラートを火災警報センターに接続することはできません。

煙アラートは、煙・災検知器のビデオ分析機能で、一部のAxisカメラに組み込まれています。これにより、カメラはビデオストリームの継続的なリアルタイム分析により、火災の発生を検知して位置を特定することができます。検知されると、煙アラートは、セキュリティスタッフへのライブ映像や通知のプッシュ送信、スピーカーの起動、ビデオ録画の開始など、ユーザーが設定した方法で対応することができます。

    映像に基づく火災検知は、従来の煙検知器よりも迅速に反応します。

映像に基づく煙・火災検知を利用する最大のメリットは、天井に設置された煙検知器による従来の検知システムよりも反応が早いことです。つまり、煙アラートは、特に天井の高い空間や、小さな火災でも重大な結果を引き起こす、重要なインフラ施設のリスクの高い施設で、迅速に警告を提供することができます。煙アラートは、煙と物理的に接触することなく、火災が制御可能な段階での介入を可能にし、被害を最小限に抑えることができます。

煙アラートは一般的に、検知ゾーンに十分な煙が出現してから数秒以内に反応します。この機能がPTZカメラに組み込まれている場合は、カメラをプリセット位置で再調整した後にのみ、検知を実行できます。

煙・災検知器は、屋内や屋根のある場所で最適に機能しますが、天候や照明の状態が十分に安定していれば、屋外でも使用できます。煙の検知にはある程度の明るさが必要ですが、炎は完全な暗闇でも検知できます。この機能では、検知ゾーンと感度を設定できるため、動的なシーンでも使用できます。

はじめに

煙検知用のビデオ分析アプリケーションは、ネットワークカメラが火災の発生を初期段階で認識できるようにすることで、ネットワークカメラを強化します。カメラが環境をスキャンしている間、ソフトウェアのアルゴリズムは映像をリアルタイムで継続的に分析し、火災の発生を検知して位置を特定します。

このホワイトペーパーでは、ビデオ煙・火災検知器について、その仕組みや利点、重要なインフラ施設や工業環境での典型的な使用例などを簡単に説明しています。また、煙アラート機能と、Axisカメラでの使用方法についても具体的に説明しています。

背景

重要な環境では、たとえ小さな火災であっても、莫大な経済的損失を引き起こし、人命を危険にさらす可能性があります。これは、特に可燃性環境や危険な場所だけでなく、さまざまなタイプの重工業環境や重要なインフラ施設にも当てはまります。このような環境では、いくつかの理由により、従来の煙・火災検知器は効果が低い場合があります。

従来の煙・火災検知器

以下は、最も一般的に使用される従来の検知テクノロジーです。

  • スポット型煙検知器。プラスチック製の筐体に収納されています。煙がこの筐体に到達すると、光学的 (光電) または熱的に、あるいはその両方の組み合わせによって検知することができます。

  • 光電式分離型煙検知器。投影される光線を使用して、広い範囲にわたり煙を検知します。このタイプの検知器は、遮光の原理に基づいて動作します。煙が透過光の一定の割合を遮ると、煙が検知されます。

  • マルチポイント吸引式煙検知器。パイプのネットワークを介して空気を吸引します。この空気サンプルは、集中管理された高感度の検知ユニットで処理されます。

  • 炎検知器。火や高温ガスによって放出される特定のパターンの赤外線スペクトル帯を監視します。

従来の検知テクノロジーは、費用対効果が高く、ほとんどの環境で優れた性能を発揮します。しかし、これらの方法 (炎検知器を除く) では、燃焼生成物との物理的な接触が必要です。天井が高い環境では、煙が従来の天井設置型検知器に到達するまでに時間がかかりすぎる場合があります。また、従来の検知器は、重工業環境での通常稼働時に存在する化学物質、粉塵、蒸気などによって汚染され、消耗することがあります。

映像に基づく煙・火災検知器

ビデオ分析アプリケーションは、煙と物理的に接触することなく、危険が発生した時点と場所を即座に「見る」ことができます。高解像度のセキュリティカメラに搭載された高度なソフトウェアアルゴリズムが環境をスキャンし、リアルタイムで継続的に分析することで、火災事故の発生場所を正確に特定します。ネットワークを介したイベント処理により、検知器は録画をトリガーしたり、音声アラームやメール送信などでオペレーターに警告を発したりすることができます。

    ビデオカメラが火災を検知すると、ネットワーク上でさまざまなアクションをトリガーすることができます。

重要なインフラ施設内のリスクの高い施設など、ビデオ煙検知機が使用される環境によっては、カメラを防爆仕様にする必要があります。

Axisカメラ内蔵煙アラート

煙アラートは、映像に基づく煙・火災検知器の分析機能で、一部のAxisカメラに組み込まれています。ビデオ映像をリアルタイムに分析し、煙や炎の兆候がないか確認します。視界内に煙が現れると、煙アラートは5秒以内に反応します (デフォルト感度設定)。これにより、火災がまだ制御可能な段階にある最初の数分間に、迅速な対応と介入が可能になります。

    煙アラートは、火災の発生を早期に警告し、正確な位置を示します。

検知されると、煙アラートはテキストラベルおよび動的ゾーン境界として画面にオーバーレイできるアラームを発し、視野内のアラームの位置を強調表示します。

煙アラートは、認定済みの検知ソリューションに代わるものではなく、火災警報センターに接続することはできません。ただし、煙アラートは、必須の煙検知器を補完するための追加チェック機能として、多くの場合、早期警告やより正確な位置情報の取得を可能にします。また、火災検知器が必須ではない場合や、広大な屋外エリアなど、他のタイプの煙検知器が設置できない場合にも役立ちます。

検知の前提条件

煙アラートは、煙の検知と炎の検知に別々のアルゴリズムを使用します。ユースケースに応じて、どちらか一方のアルゴリズムだけを使用し、もう一方のアルゴリズムをオフにすることも可能です。

煙アラートは、次のいずれかが発生したときにアラームをトリガーします。

  • 煙が視野の2%以上を覆っている状態が5秒以上続く
    (視野内の同じ場所、デフォルトの感度レベルの場合)

  • 炎の大きさが視野の0.1%を超える状態が20秒以上続く
    (視野内の同じ場所、デフォルトの感度レベルの場合)

炎は完全な暗闇 (0ルクス) でも検知できます。ただし、炎を検知するためには、カメラがデイモード (IRカットフィルターがオン) で動作している必要があります。これは、炎の検知アルゴリズムが色情報に依存しているためです。

煙は5ルクス以上の光源レベルで検知することができます。

アラームの応答

煙アラートでは、アラームに対するシステムの応答を設定することができます。

    典型的な応答
  1. ライブ映像やアラーム通知をセキュリティスタッフや管理室にプッシュ送信する。
  2. スピーカーやフラッシュライトなどの警報装置を作動させ、注意を喚起する。
  3. インシデントの録画を有効にして、インシデント前後の映像を追加する。
  4. インシデントの確認と分析を行えるように録画映像を送信する。

検知設定と環境への配慮

設置前に、カメラの配置を慎重に検討する必要があります。検知は、言うまでもなくカメラの視野内でのみ可能です。しかし、理想的な検知条件を作るためには、他にも考慮すべき点があります。

条件管理

煙アラートは、屋内エリアや屋根のあるエリアで最適に機能します。このような場所は、環境条件を管理しやすいためです。屋外で使用する場合は、安定した照明を当て、雨や雪などの天候の変化から保護したり、レンズに直射日光が当たらないようにしたりするなど、環境条件をできる限り安定させる必要があります。

最低照度要件

最新のセキュリティカメラは、映像に基づく煙検知に推奨される光源レベルよりも低い光源レベルで、視覚的に美しい映像を提供することができます。ただし、低照度環境の映像では通常、視覚的なノイズの原因となるカメラの設定 (ゲイン、露出時間、絞りなど) が必要で、これが検知アルゴリズムに干渉することがあります。最適な検知性能を得るためには、人工照明を使用して、最低限の光源レベルを確保することが推奨されます。

調整式検知ゾーン

カメラのレンズに直接光が当たらないようにすること、また、検知ゾーン内に非常に暗い部分と非常に明るい部分が混在しないようにすることが必要です。これは、埃、湿気、煙の発生源 (通常稼働時に煙を放出する機械など) にも適用されます。このような発生源や現象がある場合は、それらをマスキングするように検知ゾーンを調整する必要があります。デフォルトでは、検知ゾーンはカメラの全視野に設定されていますが、ユーザーインターフェースで直接ゾーンを描くことにより、ニーズに応じた検知ゾーンを設定することが可能です。煙アラートは、複数の重なり合った検知ゾーンにも対応します。

調整式検知感度

必要に応じて、環境に合わせて煙や炎の検知感度を調整することができます。外乱の少ない安定した環境では、感度を上げてより高い検知精度を得ることができます。非常に動的なシーンや屋外のアプリケーションでは、感度を下げて、煙や炎のような現象によるアラームの過剰なトリガーを防ぐことができます。感度を下げると検知時間が長くなり、煙の検知では、アラームがトリガーされるまでの煙の量が増加します。

PTZカメラ内蔵煙アラート

煙アラートは、固定ビューカメラとPTZ (パン/チルト/ズーム) カメラの両方で使用できます。

煙や炎を検知できるようにするには、PTZカメラを再調整するために、少なくとも数分間は同じ視野を維持する必要があります。カメラが動いているとき、またはプリセット位置にないときは、検知アルゴリズムが停止します。カメラは、各位置で定義された検知ゾーンを記憶します。

利点

早期警告

煙アラートは、その視覚的な性質により、事実上どのような距離からでも火災の発生源を直接見つけることができます。

    映像に基づく火災検知は、従来の煙検知器よりも迅速に反応します。

煙アラートは、煙が天井に設置された従来型の検知器に到達する前に、早期警告を発します。これは、天井の高い屋内空間や、重要なインフラ施設内のリスクの高い施設などの環境で特に当てはまります。検知時間の短縮により、被害やダウンタイムを抑え、場合によっては人命を救助するための時間を得ることができます。

映像による確認

煙アラートにより、火災の発生場所を正確に確認し、被害を最小限に抑えながら迅速に消火活動を行うことができます。管理室のオペレーターは、ビデオ映像をリアルタイムで監視することができます。これにより、火災の性質や深刻度、段階を評価することができます。

インシデント発生前の録画に基づいて、オペレーターはその場所に人がいるかどうかを確認し、全体的な状況をより適切に把握できます。これにより、緊急時のリソースも有効に活用することができます。

インシデント発生後の分析

インシデントの発生後、ビデオ映像はリスク分析と今後のインシデント防止に使用することができます。火災の発生を映像で捉えることは、火災の原因を特定するだけでなく、予防策を評価・改善するための絶好の機会を提供します。

代表的な使用事例

煙アラートは、検知速度が重要な環境や、従来の検知器が機能しない環境で特に役立ちます。検知システムは通常、周囲に人があまりいない広いエリアをカバーします。

影響力の大きい環境

化学工場などの一部の環境では、小さな火災でも大きな被害につながる可能性があります。このような影響力の大きい高リスクの環境では、従来の煙検知器は被害が発生してからしか作動しない可能性があります。

ここで、煙アラートアプリケーションが非常に有用な補完物となります。迅速な検知は、火災発生のリスクと影響を劇的に軽減します。また、煙アラートの視覚的な性質により、管理室のオペレーターはあらゆる異常を慎重に監視し、実際のアラームと不要なアラームについて十分な根拠に基づいた判断をすることができます。

天井の高い環境

煙アラートは、高層ビルや広い屋内空間での使用に最適です。食品加工工場、製材所、その他の生産施設や倉庫などの環境では、煙が天井に設置された従来の煙検知器の高さまで上昇しない場合や、検知器に上昇する速度が十分でない場合があります。これは、成層と呼ばれるプロセスにより、煙の上方への移動が妨げられるためです。

屋根が太陽によって暖められ、断熱性が低いと、天井の下に熱気の層が形成されます。地上の火事で煙が上がると、煙の温度は上方に向かうにつれて低下します。立ち上る煙の平均温度が上部の熱気層の平均温度よりも低い場合、この層が煙の天井への到達を妨げます。

天井に設置された従来の検知システムで煙を検知するためには、火災が非常に大きく、熱気層を通過して天井まで煙が上昇するのに十分な熱と煙が生成される必要があります。

しかし、映像に基づく煙検知器は、煙と物理的に接触する必要がありません。遠くからでも、火元から発生した煙をすぐに確認できるため、早期発見が可能です。