サーモグラフィカメラ
概要
サーマル画像技術を搭載したAxisのサーモグラフィカメラは、特定エリアのリモート温度監視に使用することを目的としています。天候や照明条件を問わず、重要インフラ設備の監視を目的とした広範な用途に使用することができます。このカメラに搭載されている特別な機能として、温度アラーム、複数のポリゴン検出エリアの監視機能、等温画像、スポット温度測定機能が挙げられます。等温画像とスポット温度測定をオペレーターの視覚補助として使用する場合、温度アラームを用いて、アラームをトリガーすることができます。
非常に汎用性の高いAxisのサーモグラフィカメラは、Axisの光学カメラの補完として利用することが可能です。しかし、これは必須というわけではありません。Axisサーモグラフィカメラは、どのような汎用監視システムでも使用することができます。
はじめに
Axisのサーモグラフィカメラを活用することで、物体やプロセスを監視して、温度が設定値以上/未満になった場合にこれを検知することができます。これにより、損傷、故障、火災、また他の危険な状況を防止することが可能となります。
特定の 一点のみを測定する一般的な温度センサーとは異なり、Axisのサーモグラフィカメラを活用すれば、温度をリモートで監視し、監視対象現場で発生したイベントを視覚的に確認することができます。
サーマル画像
新しいセンサーや新材料が登場し、キャリブレーションが改善されたことで、サーマルカメラの信頼性が高まると共に、価格がより手頃となり、その用途も広がりました。これにより、サーマル画像がますます利用しやすくなりました。サーマルカメラは、航空、船舶、セキュリティと監視、産業プロセスといった分野、また消防署や法執行機関などの公共サービスで利用されています。
サーマル画像の詳細については、www.axis.com/solutions/thermal-imagingをご覧ください。
熱放射の波長
従来型の画像は、可視光がさまざまな物体から反射することで生成されます。可視光の波長範囲はおよそ0.38~0.78 μmですが、サーマルカメラはこれよりも波長が長い熱放射を検知できるように設計されています。熱放射または赤外線放射(熱)と呼ばれるこの放射は、人間の目には見えません。異なるタイプのセンサーテクノロジーを搭載したこのカメラにより、可視スペクトルで熱画像を可視化することができるのです。
下図のように、赤外線スペクトル領域はいくつかのサブ領域に分割されます。Axisのサーマルカメラにより、一般的に長波長赤外領域と呼ばれる領域(下図の7)を検知することができます。
- X線
- 紫外線
- 可視光
- 約0.75~1.4 μmの近赤外線(NIR)放射
- 1.4~3 μmの短波長赤外線(SWIR)放射
- 3~5 μmの中波長赤外線(MWIR)放射
- 8~14 μmの長波長赤外線(LWIR)放射 — Axisサーマルカメラで検知可能
- 約15~1,000 μmの遠赤外線(FIR)放射
- マイクロ波放射
- ラジオ/テレビの波長
Axisの赤外線イルミネーターはNIR領域(図の4)で機能しますが、これは光学カメラへの光の提供を目的としていることにご注意ください。Axisサーマルカメラは完全な暗闇でも機能するため、イルミネーターは必要ありません。
温度測定
絶対零度(0ケルビンまたは-273 °Cまたは-459 °F)を超える温度の物体はすべて、赤外線を放射します。氷の場合も、温度が-273 °C以上であれば、赤外線が放射されます。物体の温度が高いほど、放出される熱放射の量が増えます。物体とその周辺との温度差が大きいほど、サーマル画像はより鮮明になります。ただし、サーマル画像のコントラストは、温度だけでなく、物体の放射率にも左右されます。
放射率と反射
物質の放射率 (e) は、放射熱エネルギーを吸収/放射する能力の尺度です。放射率は、物質の熱の伝わりやすさを表す熱伝導率など、物質の特性に大きく依存します。表面に吸収されたすべての放射線は、最終的にその表面から放射されます。
すべての物質の放射率は0~1の間となります。入射する(入ってくる)放射線を完全に吸収できる想像上の物体「黒体」は「e=1」となりますが、より反射率の高い物質の場合はこれよりもe値が低くなります。木、コンクリート、石、人間の皮膚、植物などのほとんどの物質は、電磁スペクトルのLWIR領域の放射率が高くなります(0.9以上)。一方、ほとんどの金属は、放射率が低い傾向にあります(0.6以下)。これは、表面の仕上げによって異なり、表面の光沢が強いほど、放射率が低くなります。
物質に吸収されなかった熱放射は反射されます。反射エネルギーが大きいほど、測定結果が誤って解釈されるリスクが高くなります。誤読を防ぐには、反射が最小限になるようにカメラの測定角度を選択することが重要です。一般的に、可視スペクトルで鏡のような機能を果たす物質は、LWIR領域でも同様に機能します。こうした物質の場合は、温度の測定値が監視対象の物体から反射された他の物体の影響を受ける可能性があるため、監視が困難になる可能性があります。
Axisサーモグラフィカメラは、通常、放射率が高い(0.9以上)物体の監視に適していますが、慎重に測定設定を行えば、放射率が低い(0.5以上)物体も検知できる可能性があります。
カラーパレット
Axisのサーモグラフィカメラでは、放射エネルギーが測定され、この測定値が温度測定値に変換されます。つまり、光を測定することで対応する温度の測定値が得られるわけです。センサーの各ピクセルが、放射された温度を読み取る小さな温度計として機能します。Axisのサーモグラフィカメラでは、さまざまなデフォルトのカラーパレットが使用されます。

強度の高い色は、デジタルで作成された疑似色です。つまり、これはシーンにおける本物の色ではありません。サーマル画像は一般的に白黒で作成されますが、人間の目は白黒の色合いよりもカラーの色合いを見分けるほうが得意なため、温度差を強調するためにカラーパレットが使用されます。パレットの上部は、シーンで測定される最高温度を表しています。
Axisサーモグラフィカメラ
両方共にサーマル画像を生成するAxisサーマルカメラとAxisサーモグラフィカメラは、同じセンサー技術を搭載しています。Axisのサーマルカメラは、主に監視目的で使用されます。温度アラームを設定できるAxisのサーモグラフィカメラは、温度監視に使用されますが、これは検知目的でも使用することができます。



カメラの特性
適切なレンズを選択することで、サーモグラフィカメラの検知性能を最適化し、大半の用途の要件を満たすことができます。焦点距離の短いレンズを選択すれば、より広い視野が実現します。焦点距離の長いレンズを使用すれば、より遠くの物体を監視することができます。
精度
サーモグラフィカメラの測定精度は、条件によって異なります。精度を最大限に高めるには、物体の材料やカメラまでの距離、またカメラの角度や周囲の状況といった要素を慎重に考慮に入れる必要があります。放射率の項で述べたように、反射や物質の特性が測定値に影響を与えることがあります。放射率をどの程度正確に把握しているかが、測定の精度に大きく影響します。一般的に、放射率が低いほど精度は低くなります。また、霧、雪、雨などの悪天候によっても精度が低下する場合があります。
アラーム
Axisサーモグラフィカメラは、温度アラームや早期火災検知などの独自の機能を備えています。これらの機能により、監視エリア内の重大な状況を評価し、適切に対応することができます。
温度とアラーム
主な機能として、2種類の温度アラームを設定できることが挙げられます。検知対象エリアの最高温度、最低温度、平均温度に基づいてアクションがトリガーされるように選択できます。温度が設定された制限値を超えると、デバイスがアラームをトリガーし、通知を送信します。また、温度変化の速度に基づいて、設定を行うことができます。この場合は、温度が急速に上昇または低下した場合に、アラームがトリガーされます。
検知対象エリアとその温度をビデオ ストリームに表示することができます。

早期火災検知
早期火災検知は、サーマル画像を使用して監視エリアの温度変化を検知するとともに、くすぶっている火を燃え広がる前に検知します。温度が設定された制限値を超えた場合にアラームをトリガーして通知を送信するようにデバイスを設定することができます。
動体追尾により、早期火災検知は温度が設定制限値を超える物体を含む移動物体を除外します。監視エリア内の静止物体に焦点を当てます。このフィルターは、動体によってトリガーされる誤報の数を低減します。ただし、動いている物体が30秒以上静止している場合、トラッカーはその物体が再び動き始めるまで、それを静止物体として分類します。
早期火災検知は、火災発生による被害のリスクを軽減します。火災が拡大したり他のエリアに燃え広がったりする前に、潜在的な火災の発生を迅速に封じ込めます。
等温帯パレット
等温画像で強調表示される温度帯を構成することができます。これにより、シーンで発生している現象を容易に判断することが可能となります。Axisのサーモグラフィカメラでは、等温帯パレットに基づきこれが表示されます。パレットは固定されていますが、異なる色範囲の温度を調整設定して、重要な温度を際立たせることができます。

- Iso-Axis-WH
- Iso-Fire-BH
- Iso-Fire-WH
- Iso-MidRange-BH
- Iso-MidRange-WH
- Iso-Planck-WH
- Iso-Rainbow-WH
等温帯パレットを使用して制限を設定し、特定の色を特定の温度レベルに分離することができます。低レベルは、パレットの色が始まる温度の地点を指しています。中レベルと高レベルは、それぞれの温度範囲が始まる温度の始点を指しています。

- 高レベル
- 中レベル
- 低レベル
等温帯パレットは、オペレーターの視覚的な補助として、特定温度を強調表示することのみを目的としています。たとえば、特定の物体で注意すべき重要な温度に低レベル制限が設定されていれば、その温度を超過しているすべての対象が際立つように表示されます。温度アラームが発信された場合、アラームがトリガーされた要因が重要な物体か他の物体かが等温画像に示されるため、オペレーターはアラームが誤作動かどうかを速やかに確認することができます。
スポット温度測定機能
別の機能として、スポット温度測定機能が挙げられます。これにより、画像の特定のエリアをクリックして、その場所の温度を表示することができます。
等温帯パレットと同様、スポット温度はオペレーターの視覚的な補助としてのみ使用されます。

メタデータ
Axisのサーモグラフィカメラでは、サーモグラフィデータがカメラのイベントストリームに追加されます。これにより、データを簡単に抽出して、他のアプリケーションで使用することができます。データには、アラーム情報、検知対象エリアの温度(最高、最低、平均)、最高温度と最低温度の座標が含まれています。
さまざまな用途
Axisのサーモグラフィカメラは、温度監視を目的とする広範な用途で使用することができます。例として、以下のような用途や場所が挙げられます。
ガスタービンや水タービンなどの発電設備、接続されたスイッチギア
変圧器や変電所など、他の重要な電気設備
石炭の山、リサイクル施設、保管場所、サイロなどの火災危険区域
機器の過熱の検知を目的とした産業プロセスの監視
サーマル画像を活用することで、故障の予測、問題箇所の特定、絶縁状態の確認など、さまざまな問題に対処することができます。サーマル画像により、問題が可視化する前や機械の動作が停止する前に問題個所を特定することができるため、これは故障を事前に防ぐ上でも有用です。これにより、部品の故障や発火の兆候となる過熱、破裂する危険性のある配管の詰まり、締め付けの悪い接合部の緩みなどを検知して、危険を予測することが可能となります。
サーマル画像には、他にもいくつかの用途があります。タンク本体とその内容物の温度差で残量を可視化することで、タンクの残量検知を実施することができます。サーマル画像を活用することで、エネルギー効率を改善することも可能となります。たとえば、断熱材に隙間があるパイプからの熱損失を検知できれば、エネルギーの節約やコストの削減につながります。
