Axis Zipstreamテクノロジー

7月, 2026

概要

Axis Zipstreamテクノロジーにより、フルフレームレートと高解像度を維持しつつ、ストレージコストを削減することで、フォレンジックの有用性を高めることが可能になります。インテリジェントな圧縮方法によって、画像内の重要な詳細は、ビデオストリーム内で維持しつつ、不要なデータは省略されます。

現在のネットワーク映像監視システムのほとんどは、帯域幅と録画用のストレージによって制限されます。大幅に改善された標準互換のビデオエンコーダを実装できるZipstreamにより、帯域幅とストレージの要件を標準型の圧縮よりも平均で50%以上削減することが可能となります。これを活用することで、重要な詳細部分と動きを高画質で維持しながら、Axis独自の圧縮拡張機能により残りの画像情報をフィルターによって除去し、帯域幅の使用を最適化することができます。

Zipstreamは、リアルタイムでビデオストリームを分析する、以下のアルゴリズムの集合体です。

  • ダイナミックROI (関心領域) — シーン内の物体、人物、動きに基づいて関心領域が特定され、フォレンジック調査の観点から適切な圧縮レベルが適用されます。

  • ダイナミックGOP (Group of Pictures) — シーンに動きがない場合、カメラは帯域幅を大量に消費するIフレームの送信頻度を下げます。

  • ダイナミックFPS (フレーム/秒) — シーン内に動きがない場合や動きが少ない場合、ビットレートを低減します。カメラでは映像がフルフレームレートでキャプチャーおよび分析されますが、不要なフレームは除去されます。

Zipstreamは、継続的に改良され、機能が強化されています。2015年の市場への導入以降、4K Ultra HDやサーマル、360°パノラマカメラのサポートに加え、PTZカメラ機能、ダイナミックFPS制限、ダイナミックFPSフレームスキップなど、さまざまな強化が図られています。最近では、2つのZipstreamプロファイルが追加され、より高度なビデオ圧縮技術を有効にすることが可能になったほか、Zipstreamをより直感的に簡単に操作できるようになりました。ストレージプロファイルは、ストレージ向けにビデオストリームを最適化し、ネットワーク負荷分散プロファイルは、高負荷のネットワークシナリオ向けにビデオストリームを最適化します。

Zipstreamは、システムオンチップARTPEC-9を搭載したカメラでAV1をサポートしています。これらのカメラは3つすべてのビデオコーデック (AV1、H.264、H.265) を並行してサポートしており、長期間にわたる柔軟な移行を可能にします。ARTPEC-9は、チップの最大性能の限界まで複数のストリームを同時に配信することができます。

はじめに

過去10年の間に、センサー、光学機器、カメラの画像処理機能といったカメラテクノロジーが急速な進歩を遂げたことで、映像の解像度、フレームレート、ダイナミックレンジが向上し、シーンをより詳細にキャプチャーできるようになりました。その結果、証拠映像やフォレンジック分析の信頼性は高まっていますが、これは、適切な場所から、適切な時間に、適切な品質で映像を取得できることが前提条件となります。また、ビットレートの増加に伴い、ストレージと帯域幅への要求も高まりました。

Axis Zipstream technologyにより、規格に準拠したビデオエンコーダを実装することができます。これは、標準のエンコーダよりも効率的です。これは、映像監視用に最適化されており、帯域幅とストレージの要件を平均で50%以上削減します。Zipstreamは、 画像内の重要な詳細は、ビデオストリーム内で完全な解像度を維持しつつ、不要なデータが省略される一連の高度な圧縮アルゴリズムで構成されています。Zipstreamは、新たな動的機能の搭載により、継続的に改善されています。

ビデオエンコード規格

監視ビデオの映像を効率的に保存するには、映像を処理する必要があります。これは、重複する情報を低減・削除して映像データを生成する、ビデオ圧縮アルゴリズムを使って行います。これらのビデオ圧縮アルゴリズムは、映像の中ですでに送信された領域を特定することにより、次の画像フレームへ重複して送信することを防ぎます。またこのアルゴリズムは、画質を落とすことなく、ビデオの中で詳細部分を省略できる箇所を特定することもできます。

H.264、AV1、H.265などのビデオエンコーディングの国際規格は、連携して機能する圧縮方法を組み合わせてビデオの保存、共有、表示のためビデオストリーム構文を形成します。

  • H.264は、現在最も広く利用されているビデオ圧縮規格です。これは、数日分の監視映像が1枚のSDカードに収まるように圧縮する非常に効率的な規格です。H.264は、Advanced Video Coding (AVC) またはMPEG-4 Part 10としても知られています。これは、ITおよび通信業界の標準化組織であるISO/IEC Moving Picture Experts GroupとITU-T Video Coding Experts Groupによって共同で開発されました。

  • AV1は、Alliance for Open Media (AOM) のライセンスが不要なため、オープンソースプロジェクトにとって使いやすい現代的な規格です。AV1は、クラウド統合を必要とするソリューションが増加する今後のセキュリティ監視において、重要な役割を果たすと予想されています。

  • H.265は H.264に代わるものとして開発されましたが、ライセンスの問題により、企業が広く使用することは困難でした。その結果、ハードベンダーにとってはクライアントデコーダのプリインストールが困難になっており、また、ユーザーが独自で実装するには複雑性が高すぎるという状況になっています。H.265はHigh Efficiency Video Coding (HEVC) または ITU-T H.265としても知られています。これは、ISO/IEC Moving Picture Experts Group と ITU-T Video Coding Experts Groupによって共同で開発されました。

ビデオエンコーダ規格は、実際のビデオ圧縮方式を規定するものではありません。再生を実行する構文と方式のみが標準化されているだけです。このため、ファイル形式の相互運用性(デコーダの互換性)を維持しながら、より優れたビデオエンコードソリューションを作成することができます。

Zipstreamを活用することで、監視アプリケーションでネイティブH.264/AV1/H.265ビデオエンコーダをより効率的に実装することができます。これには、ネットワークカメラが大幅に低いビットレートでビデオを生成できるようにするための、監視に固有のさまざまな方法が含まれています。

Zipstreamの動作原理

Axis Zipstreamテクノロジーは、カメラにおいてリアルタイムでビデオストリームの分析を実現するアルゴリズムの集合体です。Axis独自の圧縮方式では、所定の画質で関心のある動きや詳細を保持しながら、その他の領域では積極的にフィルターを適用して圧縮し、利用可能な帯域幅を最大限に活用できるようにします。

Zipstreamは、H.265やAV1に代わるものではありません。Zipstreamは、わずかな調整によって、H.264、AV1、H.265などの多数のビデオ圧縮規格に適用できるビデオエンコーダの強化技術です。

ビットレート削減アルゴリズム

Zipstreamは、ビットレートを低減するための3つのアルゴリズムで構成されています。

ダイナミックROI (関心領域)

ダイナミックROIにより、シーン内の物体、人物、動きに基づいてリアルタイムで関心領域が特定され、フォレンジック調査の観点から最適な圧縮レベルが適用されます。このプロセスがすべての画像コンテンツに適用されるため、完全に柔軟なダイナミックROIが実現します。このダイナミックROIにより、コンテンツに応じて自動的に拡大、縮小、変形、分割、結合、非表示、再表示が実行されるため、即座に帯域幅を調整できるというメリットがあります。

画像のどの部分に関心のある情報が表示されるかはわからないため、Zipstreamでは、予期しないイベントに備えてシステムを準備します。この自動ダイナミックROIは、領域を手動で設定しなければならない従来型ROIよりもはるかに便利です。

ダイナミックGOP(Group of Pictures)

ダイナミックGOPを使用することで、シーン内に動きがない場合に、帯域幅を大幅に消費するIフレームがカメラから送信される頻度が低下します。動きの少ない一般的な監視シーンの映像なら、詳細部分を一切失うことなく、極めて低いビットレートまで圧縮することが可能となります。このアルゴリズムにより、動きの量に応じて圧縮ビデオにおけるGOP長をリアルタイムで調整することができます。

圧縮ビデオストリームがH.264規格に対応している場合でも、このアルゴリズムを有効化して録画された映像は、すべてのクライアントやVMSでスムーズに再生されるとは限りません。

ダイナミックFPS(Frames Per Second)

ダイナミックFPSにより、ビデオフレームの不要なエンコーディングを回避できるため、ビットレートを削減することができます。これは、ストリームからビデオフレームを除外するという方式で実施されます。カメラにおいてフルフレームレートで映像がキャプチャーされて分析される場合でも、大幅に低いフレームレートで静的な監視シーンがエンコーディングされます。シーン内の動きは制御変数として使用されるため、遠くにある小さな動体はフルフレームレートでレンダリングされないことがあります。被写体がカメラに近づいてくるとフレームレートが上がり、あらゆる重要な部分の詳細をとらえます。1秒間に配信されるフレームの数はカメラによって自動的に制限され、多くのシーンで相当量のデータが保存されます。

ダイナミックFPSには、最小許容動的フレームレートを設定できるパラメーターがあります。これにより、ストリームfpsと設定された最小fpsとの間のダイナミックフレームレートが選択され、最小fpsを必要とするサポートシステムと、より高いfpsを必要とするシステムでの使用が可能になります。

圧縮ビデオストリームがH.264/AV1/H.265ビデオ規格に対応していても、ダイナミックフレームレートで録画された映像は、一部のビデオ管理システムでスムーズに再生されない場合があります。この場合は、フレームスキップを無効化する(ダイナミックFPSフレームスキップモードを「空」に設定する)ことで、ダイナミックFPSを引き続き使用できるようになります。フルストリームのフレームレートが維持されている間、ビデオのフレームレートが変化します。フレームスキップをオフにすると互換モードとなり、ビットレートの削減量はフレームスキップがオンになっているときよりも小さくなりますが、これにより、すべてのユーザーがダイナミックFPSを活用できるようになります。

一部の監視ケースでは、法律上の要件によりダイナミックフレームレートを使用できない場合があります。こうした場合でも、適切な最小フレームレート値を選択することで、ダイナミックFPSアルゴリズムを活用することができます。

ストレージプロファイル

Axisのビデオ製品のほとんどは、ライブ閲覧ではなく、後で閲覧するために録画するために使用されています。Zipstreamのストレージプロファイルは、ビットレートを最小限に抑えつつ、ビデオストレージ用に情報を最大限に確保することで、この主な用途に対応できるよう設計されています。カメラはあらかじめ設定されたプロファイルを使用することで、そのタイプのカメラに最も適した特定のZipstreamアルゴリズムを自動的に有効にし、より高度なビデオエンコーディングツールを使用することができます。プロファイルはカメラの性能によって異なり、結果はカメラのタイプによって異なることがあります。

ストレージプロファイルは、通常のZipstreamと比較して、Pフレーム1つあたり最大2つの双方向フレーム (Bフレーム) を持つ代替のGOP構造を使用し、ビデオエンコーダ処理で今後の情報を使用できるようにすることでビットレートを節約します。Bフレームを使用するとビットレートが上がる場合があるため、Bフレームの数は動的に変更されます。ビットレートの低減以外にも、BフレームはBフレームあたり1フレーム/秒のレイテンシーをもたらします。たとえば25フレーム/秒の映像の場合、ストレージ用に最適化された映像を使用すると、80ミリ秒のレイテンシーが追加されます。なお、H.264ベースラインプロファイルはBフレームをサポートしていないため、ストレージプロファイルを使用する場合はH.264 ハイプロファイルにオーバーライドされます。

    I、B、Pフレームを含む一般的なシーケンスの例。Pフレームは、先行するIフレームまたはPフレームだけを参照するのに対し、Bフレームは、その前後のIフレームまたはPフレームを参照する場合があります。ストレージプロファイルでは、Bフレームの数が動的に変更されます。

ストレージプロファイル ([Optimize for storage“ (ストレージ用に最適化)]) を選択すると、代替のダイナミックGOPアルゴリズムとBフレームが有効になりますが、その他のZipstreamの設定は変更されません。

ストリームの要求が多すぎてカメラに過度な負荷がかかると、ストレージプロファイルのビデオが優先されます。これは、その証拠価値を確実に維持するためです。

ネットワーク負荷分散プロファイル

Iフレームの急上昇が問題となりうる厳しいネットワーク条件に対して最適化されたこのプロファイルは、WiFi、4G、5G、LTE、またはその他の無線ネットワークに適しています。高負荷のネットワークシナリオでは、ビットレートの急上昇を最小限に抑えるよう、設定が自動的に最適化されます。Iフレームを小さくしたり、段階的デコード更新Pフレームに置き換えたりすることも可能です。

Iフレームは、動的な圧縮調整によってデータを隣接するPフレームに移すことでサイズが縮小され、その結果、Pフレームのサイズがわずかに大きくなります。段階的デコード更新技術では、Iフレームの更新情報を、1つの大きなIフレームにまとめて送信するのではなく、Iブロック (イントラブロック) を複数の連続するPフレームに分散させます。

Iフレームの挙動は、オプションパラメーター[Gradual decode refresh (段階的なデコード更新)] から制御できます。

ビットレート低減の想定値

Zipstreamは、リアルタイムのシーン情報を使用して平均ビットレートを低減します。各アルゴリズムのビットレートの削減量を個別に評価し、その結果を合算することで、総ビットレートの削減量を推定することができます。この表は、H.264で圧縮されたビデオで想定されるビットレート低減率を示しています。

各アルゴリズムで想定されるビットレート低減率
Zipstreamアルゴリズム ビットレート低減

ダイナミックROI

10~50% (Zipstreamの強度パラメーター、シーンの動き、およびシーンの内容によって異なる)

ダイナミックGOP

0~50% (シーンの動きによって異なる)

ダイナミックFPS

0~50% (シーンの動きによって異なる)

ダイナミックGOPによるビットレート低減グラフ

この図は、Zipstreamをオフ (1)、低 (2)、高 (3) に設定した場合の1つのビデオの瞬間ビットレートをプロットしたものです。ダイナミックROIとダイナミックGOPはオンになっていますが、ダイナミックFPSはオフになっています。タイプが異なる4つの動きのシナリオ (A、B、C、D) が示されており、それぞれZipstreamアルゴリズムが動作する条件が異なります。

    瞬間ビットレート (黄色) とビットレートの低減 (濃い灰色)。
  1. Zipstreamオフ。
  2. >Zipstream強度: 低。ビットレート (黄色) が明らかに低減されています。
  3. Zipstream強度: 高。ビットレート (黄色) はさらに低減されています。

すべてのストリームは可変ビットレート (VBR) ストリームで、Pフレーム (GOP長) は32に設定されています。Iフレーム更新のたびに、ビットレートが明らかに急上昇しています。

図中のA~Dは、ビデオ内でさまざまなタイプの動きが見られる時間区間を示しています。Zipstreamは、それぞれの時間区間の条件に応じて動作が異なります。

  • A. ビデオの中で小さな短い動きが見られる時間区間。ダイナミックROIアルゴリズムが、シーン内で動きのある部分を検知し、その関心領域に対して圧縮率を低く設定できるようにします。

  • B. より顕著で長く続く動きが見られる時間区間。このビデオシーケンスには、より高いビットレートが必要となります。ダイナミックROIによって優先度の低い情報を省略できるため、この区間でもある程度はビットレートが低減されます。

  • C. 動きのない時間区間。このダイナミックGOPアルゴリズムにより、Pフレーム数を増やすことが可能となり、不要なIフレームの更新を防ぐことができます。

  • D. 長く続く小さな動きが見られる時間区間。動きは想定通り録画され、Pフレーム数は通常に戻ります。

ダイナミックFPSによるビットレート低減グラフ

このグラフは、Zipstream強度が高に設定されたビデオの瞬間ビットレートを示しています。ダイナミックROI、ダイナミックGOP、およびダイナミックFPSがオンになっています。4つのシナリオ (E、F、G、H) が示されており、フレームレートが記載されています。

    瞬間ビットレート(黄色)、ビットレートの低減 (濃い灰色)、およびフレームレート (グラフの下部)。
  • E. シーンに動きのある場合は、カメラにおいて30フレーム/秒でデータが生成されます。

  • F. 動きが少なくなると、フレームレートが大幅に低下します。フレームレートが下がると転送されるデータが少なくなるため、ビットレートが削減されます。

  • G. 動きが全くない完全な静的シーンでは、Iフレーム間のフレームレートがほぼゼロまで下がります。まばらに分散されたIフレームの更新のみがビットレートソースとなります。

  • H. 再度動きが検知されると、カメラのデータ生成が瞬時に30フレーム/秒に戻ります。

典型的なシーンにおける測定例

このチャプターでは、さまざまなタイプの監視シーンにおいて、通常のZipstreamおよびストレージプロファイルを使用した定常録画における実測ビットレートの低減について紹介します。

Zipstreamによるビットレートの低減

    上: 時々動きのある明るいシーン
    ビットレート総削減率: 25%。
    >Zipstream強度: 低。ダイナミックGOP: オフ。ダイナミックFPS: オフ。

    上: 頻繁にわずかな動きが見られる昼間の全体把握シーン。
    ビットレート総削減率: 50%。
    Zipstream強度: 高。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オフ。

    上: 時々わずかな動きが見られる暗いシーン (ノイズの多いビデオ)
    ビットレート総削減率: 90%。
    Zipstream強度: 高。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オフ。

    上: 時々より顕著な動きが見られる昼間のシーン。
    ビットレート総削減率: 73%。
    Zipstream強度: 極限。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オン。

    上: 動きがほとんどないナイトモードのシーン。
    ビットレート総削減率: 99.7%。
    Zipstream強度: 極限。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オン。

    上: 頻繁にごくわずかな動きが見られる昼間の全体把握シーン。
    ビットレート総削減率: 85%。
    Zipstream強度: 極限。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オフ。

ストレージプロファイルによる、さらなるビットレートの低減

Zipstreamのストレージプロファイルを使用すると、従来のZipstream設定に比べて、ストレージ容量を大幅に節約できます。動きの多いシーンでも、異なる圧縮ツールが使用されるため、ストレージプロファイルはビットレートをさらに下げることができます。このようなシーンでは、常に動きがあるため、ダイナミックGOP (およびダイナミックFPS) はあまり重要ではありません。動きが少なくなると、ダイナミックGOPがさらなる削減をもたらします。

    上: わずかな動きが頻繁に見られる昼間のシーン、Zipstreamのストレージプロファイル
    さらなるビットレートの低減*: 40%
    * 従来のデフォルトのZipstreamと比較 (強度: 低)。ダイナミックGOP: オフ。ダイナミックFPS: オフ。)

    上: 動きが頻繁に見られる昼間のシーン、Zipstreamのストレージプロファイル
    さらなるビットレートの低減*: 33%
    * 従来のデフォルトのZipstreamと比較 (強度: 低)。ダイナミックGOP: オフ。ダイナミックFPS: オフ。)

    上: 動きが頻繁に見られる夜間のシーン、Zipstreamのストレージプロファイル
    さらなるビットレートの低減*: 32%
    * 従来のZipstreamと比較 (強度: 極限。ダイナミックGOP: オンダイナミックFPS: オン

特定のカメラおよびコーデック向けのZipstream

PTZカメラ

PTZカメラ向けのZipstreamアルゴリズムによって、カメラがパン、チルト、ズームを行っているときも、ビットレートの低減が可能になります。このアルゴリズムにより、画像の重要な詳細部分を維持するために使用されるダイナミックROIが自動的に更新されるため、リアルタイムでビットレートが削減されます。PTZの使いやすさを向上し、システム要件を削減するため、ダイナミックビットレートコントローラーを追加することで、カメラの動きにより発生する帯域幅のピークを回避できるようになります。これは、カメラの動きが高速の際に、重要な被写体の進行方向を維持して追跡を可能にするため、オペレーターがナビゲーションに使用できる基準点を維持できる一方で、全体的な画質が低下されるためです。

ストレージプロファイルとネットワーク負荷分散プロファイルはPTZカメラで動作しますが、ライブビューモードでは若干の遅延が生じる可能性があります。

高度なダイナミックROI

ダイナミックROIアルゴリズムにより、PTZカメラでシーンの動きとカメラの動きの両方が同時に補正されます。カメラが動いているときに、映像内の重要度と優先度の高い一部の領域を特定し、その他の領域の圧縮率を上げて使用帯域幅を低減します。アルゴリズムのこの部分により、フォレンジック調査に適した高精細の映像の確保が可能となると同時に、帯域幅とストレージの平均使用量の削減が実現します。

ダイナミックビットレートコントローラー

高度なダイナミックROIが有効になっているときでも、PTZカメラは固定カメラよりも多く帯域幅を必要とします。これは、カメラの素早いリポジショニング時に、新しい情報が非常に高いレートでキャプチャーされるためです。しかし、動きによるブレはどちらにしても画質を低下させるため、ダイナミックビットレートコントローラーを使用してビットレートを自動的に低減させ、カメラの動きにより引き起こされる帯域幅のピークを抑えることもできます。PTZカメラは通常、パン、チルト、ズームをほんの一瞬のうちに実行します。カメラが再度停止すると同時に、ビットレートコントローラーはただちにビットレートを戻し、最適な画質を提供します。

ダイナミックビットレートコントローラーにより、伝送装置(スイッチとルーター)、ストレージ(録画サーバーとディスクサイズ)、表示デバイス(コンピューターとデコーダー)など、システム全体の要件が削減されます。これは、複雑性の低い送信チャネルを使用してリモートPTZカメラを動作させ、同時にPTZカメラの利点と柔軟性を維持できることを意味します。

PTZカメラのビットレート低減グラフ

この図は、Zipstreamを使用した場合と、使用しない場合のビデオの瞬間ビットレートをプロットしたものです。タイプが異なる4つの動きのシナリオ (J、K、L、M) が示されており、それぞれZipstreamが動作する条件が異なります。

    PTZカメラの瞬間ビットレート (黄色) とビットレートの低減 (濃い灰色)。
  1. Zipstreamはオフになっています。
  2. PTZ (パン/チルト/ズーム) のZipstreamがオンになっています。ビットレート (黄色) が明らかに低減されています。

どちらのストリームも可変ビットレート (VBR) ストリームで、Pフレーム (GOP長) は32に設定されています。

図中のJ、K、L、Mは、ビデオ内でさまざまなタイプの動きが見られる時間区間を示しています。Zipstreamは、それぞれの時間区間の条件に応じて動作が異なります。

  • J. この時間区間では、カメラは最初、全体把握位置で静止しており、シーン内で動きはありません。Zipstreamによって、ストレージ容量が大幅に削減されています。その後、シーン内でわずかな動きが検知されます。

  • K. カメラがパン・ズームし、シーン内の動きを高解像度で捉えます。カメラが素早く位置を変えるためビットレートは上昇しますが、動的ビットレートコントローラーがその上昇を大幅に抑えることができます。

  • L. カメラは、シーン内の動きの高画質ビデオをキャプチャーします。Zipstreamは、シーン内の優先度の低い領域で自動でビットレートを低減します。

  • M. 動きが収まると、カメラがパン・チルトし、より広い範囲をカバーします。ビットレートとビデオ品質は、このような撮影シーン内の動きに合わせて自動的に調整されます。

4K Ultra HD、8K、およびマルチメガピクセルカメラ

Zipstreamは、ビットレートの削減が最も求められる、4K、8K、およびマルチメガピクセルカメラでも使用できます。こうした高解像度カメラを利用することで、証拠能力の高い映像を非常に効率的にキャプチャーすることができますが、必要なストレージ容量が大きいため、これには多額のコストがかかっていました。現在では、Zipstreamを活用することで、4Kストリームをリアルタイムで分析して、送信量とストレージを削減できるようになりました。8Kカメラには、十分なパフォーマンスを発揮できるよう2つのARTPECチップが搭載されています。

360°パノラマカメラ

パノラマカメラは、1台のマルチセンサーカメラで180º~360ºの広範囲を監視できる固定カメラです。監視用に使用されることが多く、特に広いエリアでのアクティビティの監視やインシデントの検知、人の流れの追跡、エリア管理の改善などに活用されています。最新のパノラマカメラモデルは、マルチメガピクセル解像度で広範なエリアをカバーできるほか、高精細の歪み補正画像機能も備わっています。すべてのパノラマビューオプションでこうしたカメラがサポートされているZipstreamにより、ストレージ要件を大幅に削減することが可能となります。

AV1対応

ARTPEC-9システムオンチップを搭載したカメラでは、Zipstreamはハードウェアアクセラレーションを利用したAV1ビデオエンコードをサポートします。AV1はセキュリティ用途ではまったく新しいものですが、低ビットレート、新機能、幅広いクライアントデコーダのサポートにより、最終的にはH.264に取って代わると予想されているビデオエンコーダです。

AV1は、クラウドソリューション向けの主要なビデオエンコーダ規格となる可能性が高く、クラウドとの統合やモバイルユーザーによるリモートアクセスを必要とするオンプレミスソリューションにとっても有用であることが証明されると考えられます。急速に拡大するエコシステムを背景に、AV1は低フットプリント向けに最適化されていますが、オフロードが必要な場合にはカスタムハードウェアを使用して処理能力を拡張することもできます。

H.265対応

Zipstreamはグローバルビデオエンコーディング規格のH.265に対応しています。しかし、ノイズのない放送ビデオ向けに開発されたH.265は、一般的に困難な照明条件が発生しやすい映像監視業界にはまだ完全に導入されていません。また、H.265のエコシステムのサポートは依然として限られており、目立った進展は見られません。

H.265に対応するZipstreamは、初期のH.264バージョンと同じツールと利点を備えていますが、複雑なシーンではより低いビットレートとなります。H.265により、移動する物体を非常に効率的かつ詳細にエンコーディングすることができますが、場合によっては、ZipstreamではH.264を使用するほうが帯域幅を削減できる可能性があります。

ZipstreamはカメラのSoCに応じて、再設定や複雑なシステム設定を必要とせずに、同じカメラでH.264、H.265およびAV1を並行してサポートすることができます。ストリームごとに選択可能なコーデックと設定が可能となる真のマルチストリーミングにより、これらすべてのタイプの映像の送信や保存が可能となり、最大限の柔軟性が実現します。このマルチコーデックアプローチは、規格の移行期間を可能な限り円滑に進めるための中心となるソリューションです。

Zipstreamによるストレージの削減

カメラ監視システムの場合は、高画質を維持しながら、ビットレートを削減する必要があります。シーン内のわずかな変化も検知し、インシデント発生後に高度なフォレンジック調査を実施できる必要があります。Zipstreamは静的シーンに低いビットレートを使用するため、連続録画を可能にします。

AXIS Camera Station Edgeでは、システムコストとインストールの容易さが優先されるため、さらに低いビットレートが望まれます。これは、費用対効果に優れたエッジストレージに、十分な画質の映像を保存することを目的としています。しかし、イベントの経過を容易に検索して理解するためには、適切な方法で画質を低下させる必要があります。Zipstreamは、余分なデータを生成することなく、動きによりトリガーされる各イベントの録画セグメントを長くすることで、見落とされるトリガーの数を低減します。

ストレージコストやネットワークの負荷の低減を望むすべてのユーザーにZipstreamは最適です。システムの規模やストレージソリューションに関わらず、どのような映像監視システムでも、ストレージ容量の削減が直接的な総コストの削減につながります。Zipstreamを使用すると、録画1分当たりに必要なストレージ容量が低減されます。これにより、ストレージ容量を増やすことなく、録画時間の延長と解像度の向上を図り、カメラ台数を増やすことができます。

ZipstreamとAV1を使用するカメラは、低ビットレートの効率的なビデオエンコードを必要とするクラウドソリューションにとって非常に魅力的です。AV1はプラグインを必要とせず、多くのモバイルデバイス、コンピューター、Webブラウザでネイティブにサポートされているため、AV1対応のZipstreamはクラウドプロバイダーのツールボックスとのシームレスな統合が可能です。さらに、AV1をWebRTCと併用することで、従来のH.264によるエンコードと比較して大幅に低いビットレートで、リアルタイム、低遅延、高解像度のビデオストリーミングを実現できます。

ビットレート制御とフォレンジック詳細

Axisは、シーンの内容に応じて、リアルタイムで画質が調節される可変ビットレート(VBR)方式のネットワークビデオを使用することを推奨しています。ストレージ容量を削減するために固定ビットレート(CBR)を使用することはお勧めできません。これは、カメラからCBRビデオが転送される場合は、ビットレートの制限により、フォレンジック調査で重要となる詳細部分が削除される可能性があるためです。

Zipstreamを利用することで、制限の有無に関わらず、システム設置担当者はVBRを使用することができ、これによりストレージを削減しながら、最適な画質を確保できるようになります。これにより、監視システムで高画質映像を維持することが可能となります。顔やタトゥー、衣服の模様といった現場検証において重要な詳細部分は分離・保存され、白い壁や芝生、植物など、重要度の低い部分は削除されます。

ストレージソリューションやネットワーク帯域幅の上限値を変更できない場合は、ZipstreamをMBRと共に使用して、システム帯域幅の一時的な急上昇を回避することができます。

Zipstreamの管理

多くのVMSソリューションでは、Zipstreamを自動でリクエストできます。また、カメラのwebインターフェースやAXIS Device ManagerからZipstreamを有効にすることもできます。

クラシックプロファイルでは、さまざまなアルゴリズムを個別に設定することや、他のプロファイルのいずれかを使用することが可能です。

  • クラシックプロファイル:Zipstreamアルゴリズムの主要部分を個別に制御できる、デフォルトのプロファイルです。

  • ストレージプロファイルビデオがストレージおよび後のアクセスのために最適化されるようにZipstreamを設定します。VMSを使用してビデオストリームをリクエストすると、ストリームプロファイルパラメーターを追加してストレージ最適化されたストリームを取得できます。VMS統合が利用できない場合は、カメラのwebインターフェースを使用して、強制的にすべてのストリームがストレージプロファイルを適用するようにできます (Zipstreamの設定で [Optimize for storage“ (ストレージ向けに最適化)] を選択してください)。

  • Network load-balancing profile (ネットワーク負荷分散プロファイル):高負荷ネットワーク向けにビデオを最適化するようにZipstreamを設定します。オプションのパラメーターの [Gradual decode refresh (段階的なデコード更新)] は、以下の値を使用してIフレームの挙動を制御します。

    • Auto (オート):ビデオフレームワークがこのパラメーターを内部で管理します。デフォルトの設定です。

    • Low (低):段階的なデコード更新は無効になっていますが、Iフレームは他のプロファイルより高度に圧縮されます。

    • バランス :ほとんどの更新では、イントラブロックをPフレームに分散させることで、段階的なデコード更新が行われます。ビデオ再生中のデコード互換性を維持するために、一部の圧縮済みIフレームが引き続き使用されます。

    • Extreme (極限):すべての更新は、段階的なデコード更新によって行われます。最初の (高度に圧縮された) Iフレームを除き、その後のすべての更新はイントラブロックを通じて処理されます。

Zipstreamの設定

Zipstreamは、シーンの動き、シーンの内容、環境光のレベル、およびユーザーが操作できる設定に基づいて、圧縮されたビデオストリームを最適化します。これには、Zipstreamの特定の設定やビデオストリームの一般的な設定が含まれます。

Zipstreamの設定:

  • 強度:Off (オフ) からExtreme (極限) までのさまざまなレベルがあります。Zipstreamの強度を高く設定すると、ストレージ容量は最小限に抑えられますが、一部のシーンでは影響が見られる場合があります。

    • Off (オフ):ビットレートは低減されません。

    • Low (低):ほとんどのシーンで認識できる画質低下なし。これはデフォルトのオプションです。あらゆるタイプのシーンでビットレートの低減に使用できます。

    • Medium (中):一部のシーンで、動きのない部分などの関心の低い領域で、ノイズが少なく、詳細レベルが若干低くなるという影響が見られます。

    • High (高):一部のシーンでは、動きのない部分など、関心の低い範囲でノイズが少なく、ディテールレベルが低くなることで、目に見える効果が得られます。この強度は、クラウドに接続されたデバイスや、ローカルストレージを使用するデバイスに推奨されます。

    • Higher (さらに高):多くのシーンで、動きのない部分などの関心の低い領域で、ノイズが少なく、詳細レベルが低くなるという影響が見られます。

    • Extreme (極限):ほとんどのシーンで、影響が見られます。ビットレートは、可能な限り小さなストレージに最適化されています。

  • ダイナミックGOP: オンまたはオフ。オンにすると、許可されるGOP長に上限を設定することができます。

  • ダイナミックEPS: オンまたはオフ。オンにすると、許可されるフレームレートの下限を設定することができます。

  • ダイナミックFPSフレームスキップモード:オフまたは低減。

ダイナミックGOPとダイナミックFPSを同時に使用して、ビットレートをさらに低減することもできます。VMSやその他のクライアントソフトウェアがGOP長の変動に対応できない場合は、最大GOP長を短く設定するか、ダイナミックGOPをオフにします。ソフトウェアがフレームレートの変動に対応できない場合は、ダイナミックFPSの最小許容値を設定するか、ダイナミックFPSのフレームスキップをオフにします。

Zipstreamに対応するカメラは、デフォルトで強度は「低」に設定され、ダイナミックGOPおよびダイナミックFPSはどちらもオフに設定されています。このデフォルト設定は、すべての既存のソフトウェアアプリケーションに対応しつつ、ビットレートを低減します。すべての強度パラメーター設定も、すべての既存アプリケーションに対応しつつ、ビットレートを低減します。

一般的なビデオストリームの設定:

  • Compression (圧縮)。 Zipstreamがオンになっていても、カメラの一般的な圧縮パラメーターが重要なフォレンジック詳細に適用される圧縮率を制御します。通常、このパラメーターは30に設定されており、Zipstreamが有効な場合もこの値が推奨されます。

  • Bitrate control (ビットレート制御)。 エンコーダに組み込まれているビットレートコントローラーをZipstreamと組み合わせて、最大ビットレート(MBR)制限を適用することができます。MBRは可変ビットレート(VBR)構成で、これにはシステムにおける一時的な帯域幅の急上昇を回避するための上限が含まれます。ただし、ZipstreamやVBRの効果を最大限に引き出すためには、MBRの制限値を十分高く設定してシーン内で移動する物体の詳細を捉える必要があります。保存期間を延長するためにビットレートを制限する場合は、クラウド接続カメラまたはエッジストレージ搭載カメラのZipstreamの強度パラメーターをHigh (高) に設定し、ダイナミックGOPを有効にします。この設定は、動体検知録画トリガーや複雑度の変化にビットレートを適合させることのできるMBRシステムと組み合わせる場合に適しています。

Axis Zipstreamの設定およびパラメーターの詳細については、以下のAxis開発者向けドキュメントを参照してください。

略語一覧

AOM:Alliance for Open Media

AV1:AOMedia Video 1

CBR:固定ビットレート(Constant bitrate)

FPS:フレーム/秒(Frames per second)

GOP:Group of Pictures

HEVC:高効率ビデオコーディング(High Efficiency Video Coding)

IEC:国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)

ISO:国際標準化機構(International Organization for Standardization)

ITU:国際電気通信連合(International Telecommunication Union)

ITU-T: ITU 電気通信標準化部門 (Telecommunication Standardization Sector)

MBR:最大ビットレート(Maximum Bitrate)

MPEG:動画像符号化専門家グループ(Moving Picture Experts Group)

PTZ:パン/チルト/ズーム(Pan-Tilt-Zoom)

ROI:関心領域(Regions Of Interest)

SoC:システムオンチップ(System on chip)

VBR:可変ビットレート(Variable bitrate)

VCEG:ビデオ符号化専門家グループ(Video Coding Experts Group)またはビジュアル符号化専門家グループ(Visual Coding Experts Group)

VMS:ビデオ管理システム(Video Management System)