Axis Zipstreamテクノロジー
概要
Axis Zipstreamテクノロジーにより、ストレージコストを削減しながら、より高いビデオ解像度と現場検証の有用性を向上することができます。インテリジェントな圧縮手段により、ビデオストリームにおいて画像内の重要な詳細部分をしっかりと確保し、同時に不要なデータを消去します。
現在のネットワーク映像監視システムのほとんどは、帯域幅と録画用のストレージによって制限されます。大幅に改善された標準互換のビデオエンコーダを実装できるZipstreamにより、帯域幅とストレージの要件を標準型の圧縮よりも平均で50%以上削減することが可能となります。これを活用することで、重要な詳細部分と動きを高画質で維持しながら、Axis独自の圧縮拡張機能で残りの画像情報に高度なフィルタ処理を実行して、帯域幅の使用を最適化することができます。
Zipstreamは、リアルタイムでビデオストリームを分析する、以下のアルゴリズムの集合体です。
ダイナミックROI(関心領域)— これにより、シーン内の物体、人物、動きに基づいて関心領域が特定され、フォレンジック調査の観点から適切な圧縮レベルが適用されます。
ダイナミックGOP(Group of Pictures)— このアルゴリズムにより、シーンに動きがない場合は、カメラで帯域幅が大量に消費されるIフレームの送信頻度が低下します。
ダイナミックFPS(フレーム/秒)— これにより、シーン内に動きがない場合や動きが少ない場合に、ビットレートが低下します。カメラでは映像がフルフレームレートでキャプチャーおよび分析されますが、不要なフレームはエンコードされません。
Zipstreamは継続的に改良され、新機能が追加されています。2015年に発表されて以来、4K Ultra HDやマルチメガピクセル、360°パノラマカメラのサポートに加え、PTZカメラ機能、ダイナミックFPS制限、ダイナミックFPSフレームスキップなど、さまざまな強化が図られています。最新のアップデートでは、ストレージ用にビデオストリームを最適化するプロファイルが追加されました。これにより、より高度なビデオ圧縮技術が実現すると同時に、Zipstreamをより簡単かつ直感的に使用できるようになります。
Zipstreamは現在、システムオンチップ「ARTPEC-9」を搭載したカメラでAV1をサポートしています。これらのカメラはH.264と並行してAV1とH.265をサポートしており、長期間にわたる柔軟な移行を可能にします。ARTPEC-9は、チップの最大性能の限界まで複数のストリームを同時に配信することができます。
はじめに
過去10年の間に、センサー、光学機器、カメラの画像処理機能といったカメラテクノロジーが急速な進歩を遂げたことで、映像の解像度、フレームレート、ダイナミックレンジが向上し、シーンをより詳細にキャプチャーできるようになりました。その結果、証拠映像やフォレンジック分析の信頼性は高まっていますが、これは、適切な場所から、適切な時間に、適切な品質で映像を取得できることが前提条件となります。また、ビットレートの増加に伴い、ストレージと帯域幅への要求も高まりました。
Axis Zipstreamテクノロジーはビデオ監視用に最適化されており、標準のエンコーダよりも大幅に効率の高い、規格に対応したビデオエンコーダの実装です。これにより、帯域幅とストレージの要件を平均で50%以上削減することができます。インテリジェントな圧縮アルゴリズムの集合体であるZipstreamにより、ビデオストリームにおける画像内の重要な詳細部分が確保され、同時に不要なデータが消去されます。Zipstreamは、新たな動的機能の搭載により、継続的に改善されています。
ビデオ圧縮アルゴリズム
監視ビデオの映像を効率的に保存するには、映像を処理する必要があります。これは、重複する情報を低減・削除して映像データを生成する、ビデオ圧縮アルゴリズムを使って行います。これらのビデオ圧縮アルゴリズムは、映像の中ですでに送信された領域を特定することにより、次の画像フレームへ重複して送信することを防ぎます。またこのアルゴリズムは、見た目の画質を落とすことなく、詳細部分を削除できる映像箇所を特定することもできます。
連携して動作する最先端のビデオ圧縮方式は、ひとつの国際規格にまとめられています。これは、映像の保存、共有、表示用に作成されたビデオストリームシンタックスです。
今日、最も使用されているビデオ圧縮規格はH.264です。これは、十分効率的に数日間の監視映像を1枚のSDカードに保存できるサイズに圧縮することができます。
AV1は、Alliance for Open Media (AOM) のライセンスが不要なため、オープンソースプロジェクトにとって使いやすい現代的な規格です。AV1は、クラウド統合を必要とするソリューションが増加する今後のセキュリティ監視において、重要な役割を果たすと予想されています。
H.265は H.264に代わるものとして開発されましたが、ライセンスの問題により、企業が広く使用することは困難でした。その結果、ハードウェアベンダーにとってクライアントデコーダをプリインストールすることは難しく、またエンドユーザーが独自に実装するには複雑すぎました。
さまざまなビデオエンコーダ規格は、実際のビデオ圧縮方式を規定するものではありません。再生を実行する構文と方式のみが標準化されているだけです。このため、ファイル形式の相互運用性(デコーダの互換性)を維持しながら、より優れたビデオエンコードソリューションを作成することができます。Zipstreamを活用することで、監視アプリケーションでネイティブH.264/AV1/H.265ビデオエンコーダをより効率的に実装することができます。これには、ネットワークカメラが大幅に低いビットレートでビデオを生成できるようにするための、監視に固有のさまざまな方法が含まれています。
Zipstreamの動作原理
Axis Zipstreamテクノロジーは、カメラにおいてリアルタイムでビデオストリームの分析を実現するアルゴリズムの集合体です。関心領域の動きと詳細は、指定されているビデオ品質で保持されますが、Axis独自の方式により他の領域が積極的にフィルタリングされることで、帯域幅が最適化されます。
Zipstreamは、ISO/IECの動画像符号化専門家グループ (MPEG) とITU-Tのビデオ符号化専門家グループ (VCEG) が共同開発した高効率ビデオコーディング (HEVC)/ITU電気通信標準化部門 (ITU-T) のH.265や、Alliance for Open Media (AOM) が開発したAV1規格に代わるものではありません。ビデオエンコーダ向けの拡張テクノロジーであるZipstreamは、わずかな調整を行うだけで、H.264、AV1、H.265といった多くのビデオ圧縮規格に適用することができます。
Zipstreamの有効化
Zipstreamは、多くのVMSソリューションから自動的に要求することができます。Zipstreamをカメラで設定して有効にすることもできます。これは、AXIS Device Managerで効率的に管理することができます。
Zipstreamアルゴリズムのさまざまな部分を個別に設定することも、ストレージプロファイルを使用して、Zipstreamがビデオをストレージ用に最適化するように自動的に設定されるようにすることもできます。
ストレージプロファイルの有効化
クラシックプロファイル:Zipstreamアルゴリズムの主要部分を個別に制御できる、デフォルトのプロファイルです。
ストレージプロファイルZipstreamを構成するプロファイルで、ビデオがストレージと後のアクセスに最適化されるようにします。
カメラからのビデオストリームを要求する際に、ストリームプロファイルパラメータを追加して、ストレージに最適化されたストリームを要求することができます。これは、ストレージプロファイルの有効化に推奨される方法ですが、VMSの統合が必要です。利用できない場合は、カメラの設定インターフェースにより、すべてのストリームでストレージプロファイルを使用するように強制することができます。

さまざまな設定オプション
Zipstreamは、以下の4つの要素に基づいて、圧縮ビデオストリームを調整します。
シーンの動き
シーンの内容
環境光レベル
さまざまな設定オプション
Zipstreamに影響する設定オプション:
圧縮
GOP長
フレーム数
強度(Zipstreamの強度)
ダイナミックGOP
ダイナミックGOP制限
ダイナミックFPS(フレームレート)
ダイナミックFPS制限
ダイナミックFPSフレームスキップモード
Zipstreamのエフォートレベルは、以下のように強度パラメーターで決まります。
強度 | エフォートレベル | 視覚的な変化 |
オフ | オフ | なし |
10 | 低 | ほとんどのシーンで、視認できる画質変化なし |
20 | 中 | 一部のシーンで、低ノイズと、関心の低い領域における詳細部分のわずかな画質低下が見られる |
30倍 | 高 | 多くのシーンで、低ノイズと、関心の低い領域における詳細部分の画質低下が見られる |
40倍 | 高 | さらに多くのシーンで、低ノイズと、関心の低い領域における詳細部分の画質低下が見られる |
50 | 極高 | ほとんどのシーンで、低ノイズと、関心の低い領域における詳細部分の画質低下が見られる |
強度パラメーター設定はすべて、既存の全ソフトウェアアプリケーションで使用可能であり、同時にビットレートを低減できます。
その他のパラメーターは、以下のように設定できます。
ダイナミックGOP | 説明 |
オフ | ダイナミックGOP調整:オフ |
オン | ダイナミックGOP調整:オン |
ダイナミックGOP制限 | 説明 |
実際の値 | ダイナミックGOPの長さの最大許容値 |
ダイナミックFPS | 説明 |
オフ | ダイナミックフレームレート調整:オフ |
オン | ダイナミックフレームレート調整:オン |
ダイナミックFPS制限 | 説明 |
実際の値 | ダイナミックFPS最小許容値 |
ダイナミックFPSフレームスキップモード | 説明 |
Empty | フレームスキップ:オフ |
ドロップ | フレームスキップ:オン |
Zipstreamに対応しているネットワークカメラは、デフォルトで強度パラメーター「10」で構成され、動的GOP/FPSが無効になっています。このデフォルト設定は既存のアプリケーションすべてで使用可能で、同時にビットレートを低減できます。
ビットレート削減アルゴリズム
ビットレートは、ZipstreamのダイナミックROI、ダイナミックGOP、またはダイナミックFPSのいずれかにより低減できます。
ダイナミックROI(関心領域)
ダイナミックROIにより、シーン内の物体、人物、動きに基づいてリアルタイムで関心領域が特定され、フォレンジック調査の観点から最適な圧縮レベルが適用されます。このプロセスがすべての画像コンテンツに適用されるため、完全に柔軟なダイナミックROIが実現します。このダイナミックROIにより、コンテンツに応じて自動的に拡大、縮小、変形、分割、結合、非表示、再表示が実行されるため、即座に帯域幅を調整できるというメリットがあります。
画像のどの部分に関心のある情報が表示されるかはわからないため、Zipstreamでは、予期しないイベントに備えてシステムを準備します。この自動ダイナミックROIは、領域を手動で設定しなければならない他の従来型ROIよりもはるかに便利です。
ダイナミックGOP(Group of Pictures)
ダイナミックGOPを使用することで、シーン内に動きがない場合に、帯域幅を大幅に消費するIフレームがカメラから送信される頻度が低下します。動きの少ない一般的な監視シーンの映像なら、詳細部分を一切失うことなく、極めて低いビットレートまで圧縮することが可能となります。このアルゴリズムにより、動きの量に応じて圧縮ビデオにおけるGOP長をリアルタイムで調整することができます。圧縮ビデオストリームがH.264規格に対応している場合でも、このアルゴリズムを有効化して録画された映像は、すべてのクライアントやVMSでスムーズに再生されるとは限りません。
ダイナミックFPS(Frames Per Second)
ダイナミックFPSにより、ビデオフレームの不要なエンコーディングを回避できるため、ビットレートを削減することができます。これは、ストリームからビデオフレームを除外するという方式で実施されます。カメラにおいてフルフレームレートで映像がキャプチャーされて分析される場合でも、大幅に低いフレームレートで静的な監視シーンがエンコーディングされます。シーン内の動きは制御変数として使用されるため、遠くにある小さな動体はフルフレームレートでレンダリングされないことがあります。被写体がカメラに近づいてくるとフレームレートが上がり、あらゆる重要な部分の詳細をとらえます。1秒間に配信されるフレームの数はカメラによって自動的に制限され、多くのシーンで相当量のデータが保存されます。
ダイナミックFPS制限パラメーターを使用して、ダイナミックFPSの下限を構成することができます。そして、ストリームフレームレートと構成済みの最小フレームレートの間のダイナミックフレームレートを選択することで、最小フレームレート要件のサポートシステムおよびより高いフレームレートを必要とするシステムでこれを使用することができます。
圧縮ビデオストリームがH.264/AV1/H.265ビデオ規格に対応していても、ダイナミックフレームレートで録画された映像は、一部のビデオ管理システムでスムーズに再生されない場合があります。この場合は、フレームスキップを無効化する(ダイナミックFPSフレームスキップモードを「空」に設定する)ことで、ダイナミックFPSを引き続き使用できるようになります。フルストリームのフレームレートが維持されている間、ビデオのフレームレートが変化します。フレームスキップをオフにすると互換モードとなり、ビットレートの削減量はフレームスキップがオンになっているときよりも小さくなりますが、これにより、すべてのユーザーがダイナミックFPSを活用できるようになります。
一部の監視ケースでは、法律上の要件によりダイナミックフレームレートを使用できない場合があります。こうした場合でも、適切な最小フレームレート値を選択することで、ダイナミックFPSアルゴリズムを活用することができます。
ストレージプロファイル
Axisビデオ製品の主要ユースケースは、ビデオを録画して保存し、後でアクセスできるようにすることです。Zipstreamのストレージプロファイルは、そのユースケースの証拠価値を最大化しつつ、ビットレートを最小限に抑えます。カメラはあらかじめ設定されたプロファイルを使用することで、そのタイプのカメラに最も適した特定のZipstreamアルゴリズムを自動的に有効にし、より高度なビデオエンコーディングツールを使用することができます。プロファイルはカメラの性能によって異なり、結果はカメラのタイプによって異なることがあります。
ストレージプロファイルは、Pフレームあたり最大2つの双方向フレーム(Bフレーム)を持つ新しいGOP構造を利用し、ビデオエンコード処理で今後の情報を利用できるようにすることでビットレートを節約しています。Bフレームを使用するとビットレートが上がる場合があるため、Bフレームの数は動的に変更されます。ビットレートの低減以外にも、BフレームはBフレームあたり1フレーム/秒のレイテンシーをもたらします。例えば25フレーム/秒の映像の場合、ストレージ用に最適化された映像を使用すると、80ミリ秒のレイテンシーが追加されます。なお、H.264ベースラインプロファイルはBフレームをサポートしていないため、ストレージプロファイルを使用する場合はH.264 ハイプロファイルにオーバーライドされます。
ストレージプロファイルでは常にダイナミックGOPが使用されますが、その他のZipstreamの設定はそのまま変わりません。
ストリームの要求が多すぎてカメラに過度な負荷がかかると、ストレージプロファイルのビデオが優先されます。これは、その証拠価値を確実に維持するためです。
ビットレート低減の期待値とサンプルデータ
Zipstreamは、リアルタイムのシーン情報を使用して、平均ビットレートを低減します。ビットレートの総低減量は、各アルゴリズムのビットレート節約量を個別に評価し、その値を合計することで予測できます。以下の表には、ビットレート削減期待値が示されています。本セクションの例と数字はすべて、H.264圧縮に基づいて作成されています。
Zipstreamアルゴリズム | ビットレート低減 | 影響因子 |
ダイナミックROI | 10-50% | Zipstreamの強度パラメーター、シーンの動きと内容 |
ダイナミックGOP | 0-50% | シーンの動き |
ダイナミックFPS | 0-50% | シーンの動き |
以下のグラフには、A、B、C、Dの4つの異なる動きのシナリオで、ダイナミックGOPを使用した場合のビデオの瞬間ビットレートの例が示されています。上のグラフはZipstreamを無効化して録画した場合の結果です。中央のグラフはZipstreamの強度を低くして録画した場合、下のグラフには強度を高くして録画した場合の結果が示されています。すべてのストリームは、GOP長が32の可変ビットレート(VBR)ストリームです。それぞれのIフレームの更新は、ビットレートの急上昇として明確に表示されています。これは、垂直軸で読み取ることができます。灰色で網掛けされたエリアに示されているのが、ビットレートの削減の割合です。
上図の期間は、異なる条件下におけるZipstreamの動作を示すものです。
A:短く小さな動きのある期間。動きが検知されています。この領域のビット数を増やすことで、動きのある部分の画質を維持することができます。
B:大きな動きが長時間続くと、必要なストレージ容量が増加します。しかし、ダイナミックROIにより、削除できる重要度の低い情報の領域を検知できるため、この場合もストレージを削減することが可能となります。
C:動きのない期間が検知され、ダイナミックGOPアルゴリズムにより、不要なIフレームの更新が回避されます。
D:小さくて長い動きのある期間。
上図の例は、ダイナミックFPSを有効にした4つのモーションシナリオ(E、F、G、H)におけるZipstreamの動作を示しています。
E:シーンに動きのある場合は、カメラにおいて30フレーム/秒でデータが生成されます。
F:動きが少なくなると、フレームレートが大幅に低下します。フレームレートが下がると転送されるデータが少なくなるため、ビットレートが削減されます。
G:動きが全くない完全な静的シーンでは、Iフレーム間のフレームレートがほぼゼロまで下がります。まばらに分散されたIフレームの更新のみがビットレートソースとなります。
H:再度動きが検知されると、カメラのデータ生成が瞬時に30フレーム/秒に戻ります。
Zipstreamパラメーター設定
Zipstreamが有効化されても、元の圧縮パラメーターはそのまま使用されます。このパラメーターは、現場検証において重要な詳細部分に適用される圧縮量をコントロールします。圧縮は通常30に設定されますが、この値はZipstreamを有効にする場合にも推奨されます。
エンコーダに組み込まれているビットレートコントローラーをZipstreamと組み合わせて、最大ビットレート(MBR)制限を適用することができます。MBRは可変ビットレート(VBR)構成で、これにはシステムにおける一時的な帯域幅の急上昇を回避するための上限が含まれます。ただし、ZipstreamとVBRの機能をフルに活用するためには、シーン内の動く被写体の詳細部分をとらえられるだけのMBRを設定しておく必要があります。
ビットレートを制限して保存時間を延ばすためには、クラウドに接続されたカメラまたはエッジストレージを使用するカメラの強度パラメーターを30(強度:高)に設定し、ダイナミックGOPを有効化する必要があります。この設定は、動体検知録画トリガーや複雑度の変化にビットレートを適合させることのできるMBRシステムと組み合わせる場合に適しています。エッジストレージは、Axisのネットワークカメラとビデオエンコーダに搭載されている機能です。これにより、内蔵のSDカードやNAS(Network Attached Storage)に直接録画することができます。
ダイナミックGOPとダイナミックFPSのアルゴリズムを同時に使用して、ビットレートをさらに低減することもできます。VMSまたはその他のクライアントソフトウェアがGOP長の変化に対応できない場合は、GOPの最大長を短くするか、ダイナミックGOPを無効にしてください。ソフトウェアがフレームレートの変化に対応できない場合は、ダイナミックFPSフレームスキップを無効にするか、ダイナミックFPSの最小許容値を設定します。
比較の基準
この章では、さまざまなタイプの監視シーンにおけるビットレートの低減率について説明します。
Zipstreamによるビットレートの低減
このセクションでは、Zipstreamがストレージの必要量を削減できるシーンを紹介します。Zipstreamの強度およびダイナミックGOPとダイナミックFPSの有効/無効別に測定されたビットレート総削減率をご覧ください。
![]() | Zipstreamの強度: 低 ダイナミックGOP:オフ ダイナミックFPS: オフ ビットレート総削減率:25% | |
![]() | Zipstreamの強度: 高 ダイナミックGOP:オン ダイナミックFPS: オフ ビットレート総削減率:50% | |||||
![]() | Zipstreamの強度: 高 ダイナミックGOP:オン ダイナミックFPS: オフ ビットレート総削減率:90% | |||||||||
![]() | Zipstreamの強度: 極高 ダイナミックGOP:オン ダイナミックFPS: オン ビットレート総削減率:73% | |||||||||||||
![]() | Zipstreamの強度: 極高 ダイナミックGOP:オン ダイナミックFPS: オン ビットレート総削減率:99.7% | |||||||||||||||||
![]() | Zipstreamの強度: 極高 ダイナミックGOP:オン ダイナミックFPS: オフ ビットレート総削減率:85% | |||||||||||||||||||||
ストレージプロファイルによる、さらなるビットレートの低減
Zipstreamストレージプロファイルを有効にすると、デフォルトのZipstream設定と比較して、ストレージを大幅に節約することができます。動きの多いシーンでも、新しい圧縮ツールが使用されるため、ストレージプロファイルはビットレートをさらに下げることができます。このようなシーンでは、常に動きがあるため、ダイナミックGOP(およびダイナミックFPS)はあまり重要ではありません。動きが少なくなると、ダイナミックGOPがさらなる削減をもたらします。
![]() | Zipstreamストレージプロファイル 有効 さらなるビットレートの低減*: 40% * Zipstreamのデフォルト設定(強度:低、ダイナミックGOP:オフ、ダイナミックFPS:オフ)と比較した場合。 | |
![]() | Zipstreamストレージプロファイル 有効 さらなるビットレートの低減*: 33% * Zipstreamのデフォルト設定(強度:低、ダイナミックGOP:オフ、ダイナミックFPS:オフ)と比較した場合。 | |||||
![]() | Zipstreamストレージプロファイル 有効 さらなるビットレートの低減*: 32% * Zipstreamの最高設定(強度:最高、ダイナミックGOP:オン、ダイナミックFPS:オン)と比較した場合。 | |||||||||
特定のカメラタイプ向けのZipstream
PTZカメラ
PTZカメラのアルゴリズムでは、カメラがパン、チルト、ズームしている間も、Zipstreamによりビットレートの削減が実現します。このアルゴリズムにより、画像の重要な詳細部分を維持するために使用されるダイナミックROIが自動的に更新されるため、リアルタイムでビットレートが削減されます。PTZの使いやすさを向上し、システム要件を削減するため、ダイナミックビットレートコントローラーを追加することで、カメラの動きにより発生する帯域幅のピークを回避できるようになります。これは、カメラの動きが高速の際に、重要な被写体の進行方向を維持して追跡を可能にするため、オペレーターがナビゲーションに使用できる基準点を維持できる一方で、全体的な画質が低下されるためです。
ストレージプロファイルはPTZカメラで動作しますが、ライブビューモードで若干のレイテンシーが発生する場合があります。
高度なダイナミックROI
ダイナミックROIアルゴリズムにより、PTZカメラでシーンの動きとカメラの動きの両方が同時に補正されます。カメラが動いているときに、映像内の重要度と優先度の高い一部の領域を特定し、その他の領域の圧縮率を上げて使用帯域幅を低減します。アルゴリズムのこの部分により、フォレンジック調査に適した高精細の映像の確保が可能となると同時に、帯域幅とストレージの平均使用量の削減が実現します。
ダイナミックビットレートコントローラー
高度なダイナミックROIが有効になっているときでも、PTZカメラは固定カメラよりも多く帯域幅を必要とします。これは、カメラの素早いリポジショニング時に、新しい情報が非常に高いレートでキャプチャーされるためです。しかし、動きによるブレはどちらにしても画質を低下させるため、ダイナミックビットレートコントローラーを使用してビットレートを自動的に低減させ、カメラの動きにより引き起こされる帯域幅のピークを抑えることもできます。PTZカメラは通常、パン、チルト、ズームをほんの一瞬のうちに実行します。カメラが再度停止すると同時に、ビットレートコントローラーはただちにビットレートを戻し、最適な画質を提供します。
ダイナミックビットレートコントローラーにより、伝送装置(スイッチとルーター)、ストレージ(録画サーバーとディスクサイズ)、表示デバイス(コンピューターとデコーダー)など、システム全体の要件が削減されます。これは、複雑性の低い送信チャネルを使用してリモートPTZカメラを動作させ、同時にPTZカメラの利点と柔軟性を維持できることを意味します。
ビットレート低減の例
以下の図には、4つの異なる動きのシナリオ(J、K、L、M)におけるビデオの瞬間ビットレートの例が示されています。上のグラフには、Zipstreamを無効にした場合の結果が示されています。下のグラフは、PTZのZipstreamを有効にした場合の結果です。すべてのストリームは、GOP長が32のVBRストリームです。 瞬時ビットレート(黄色のエリア)は、縦軸で読み取ることができます。
J:最初、オーバービューの位置にあるPTZカメラは動いていません。カメラが完全に静止しているため、標準のZipstreamアルゴリズムによりストレージ容量が大幅に削減されます。突然、カメラにより些細な動きがキャプチャーされています。
K:イベントの高解像度映像を取得するため、オペレーターがPTZカメラをパンおよびズームします。動きが高速の際は、ダイナミックビットレートコントローラーによりビットレートが大幅に削減されます。
L:PTZカメラでイベントが高品質ビデオとして録画されます。標準のZipstreamアルゴリズムにより、画像内における重要度の低い領域のビットレートが自動的に低下します。
M:イベント発生後、オペレーターは広い領域を表示して同様のイベントがないかを確認するため、カメラをパンおよびチルトします。画質は、PTZの動きに合わせて自動的に調節されます。
4K Ultra HDとマルチメガピクセルカメラ
Zipstreamは、ビットレート低減のニーズが最も高い製品、4Kカメラとマルチメガピクセルカメラに対しても有効にすることができます。こうした高解像度カメラを利用することで、証拠能力の高い映像を非常に効率的にキャプチャーすることができますが、必要なストレージ容量が大きいため、これには多額のコストがかかっていました。現在では、Zipstreamを活用することで、4Kストリームをリアルタイムで分析して、送信量とストレージを削減できるようになりました。
360°パノラマカメラ
パノラマカメラは、1 台のカメラで180º~360ºの広範囲を監視できる固定カメラです。監視用に使用されることが多く、特に広いエリアでのアクティビティの監視やインシデントの検知、人の流れの追跡、エリア管理の改善などに活用されています。最新のパノラマカメラモデルを活用することで、マルチメガピクセル解像度で広範なエリアをカバーできるだけでなく、これには高精細の歪み補正画像機能が備わっています。すべてのパノラマビューオプションでこうしたカメラがサポートされているZipstreamにより、ストレージ要件を大幅に削減することが可能となります。
AV1対応
ARTPEC-9システムオンチップを搭載したカメラでは、Zipstreamはハードウェアアクセラレーションを利用したAV1ビデオエンコードをサポートします。AV1はセキュリティ用途ではまったく新しいものですが、低ビットレート、新機能、幅広いクライアントデコーダのサポートにより、最終的にはH.264に取って代わると予想されているビデオエンコーダです。
AV1は、クラウドソリューション向けの主要なビデオエンコーダ規格となる可能性が高く、クラウドとの統合やモバイルユーザーによるリモートアクセスを必要とするオンプレミスソリューションにとっても有用であることが証明されると考えられます。急速に拡大するエコシステムを背景に、AV1は低フットプリント向けに最適化されていますが、オフロードが必要な場合にはカスタムハードウェアを使用して処理能力を拡張することもできます。
H.265対応
Zipstreamはグローバルビデオエンコーディング規格のH.265に対応しています。しかし、ノイズのない放送ビデオ向けに開発されたH.265は、一般的に困難な照明条件が発生しやすい映像監視業界にはまだ完全に導入されていません。また、H.265のエコシステムのサポートは依然として限られており、目立った進展は見られません。
H.265に対応するZipstreamは、初期のH.264バージョンと同じツールと利点を備えていますが、複雑なシーンではより低いビットレートとなります。H.265により、移動する物体を非常に効率的かつ詳細にエンコーディングすることができますが、場合によっては、ZipstreamではH.264を使用するほうが帯域幅を削減できる可能性があります。
ZipstreamはカメラのSoCに応じて、再設定や複雑なシステム設定を必要とせずに、同じカメラでH.264、H.265およびAV1を並行してサポートすることができます。ストリームごとに選択可能なコーデックと設定が可能となる真のマルチストリーミングにより、これらすべてのタイプの映像の送信や保存が可能となり、最大限の柔軟性が実現します。このマルチコーデックアプローチは、規格の移行期間を可能な限り円滑に進めるための中心となるソリューションです。
さまざまな用途
カメラ監視システムの場合は、高画質を維持しながら、ビットレートを削減する必要があります。わずかな逸脱でも検知し、インシデント発生後に高度なフォレンジック調査を実施できる必要があります。Zipstreamは静的シーンに低いビットレートを使用するため、連続録画を可能にします。
AXIS Camera Station Edgeでは、システムコストとインストールの容易さが優先されるため、さらに低いビットレートが望まれます。これは、費用対効果に優れたエッジストレージに、十分な画質の映像を保存することを目的としています。しかし、イベントの経過を容易に検索して理解するためには、適切な方法で画質を低下させる必要があります。Zipstreamは、余分なデータを生成することなく、動きによりトリガーされる各イベントの録画セグメントを長くすることで、見落とされるトリガーの数を低減します。
ストレージコストやネットワークの負荷の低減を望むすべてのユーザーにZipstreamは最適です。システムの規模やストレージソリューションに関わらず、どのような映像監視システムでも、ストレージ容量の削減が直接的な総コストの削減につながります。Zipstreamを使用すると、録画1分当たりに必要なストレージ容量が低減されます。これにより、ストレージ容量を増やすことなく、録画時間の延長と解像度の向上を図り、カメラ台数を増やすことができます。
ZipstreamとAV1を使用するカメラは、低ビットレートの効率的なビデオエンコードを必要とするクラウドソリューションにとって非常に魅力的です。AV1はプラグインを必要とせず、多くのモバイルデバイス、コンピューター、Webブラウザでネイティブにサポートされているため、AV1対応のZipstreamはクラウドプロバイダーのツールボックスとのシームレスな統合が可能です。さらに、AV1をWebRTCと併用することで、従来のH.264によるエンコードと比較して大幅に低いビットレートで、リアルタイム、低遅延、高解像度のビデオストリーミングを実現できます。
現場検証に適した高精細映像
Axisは、シーンの内容に応じて、リアルタイムで画質が調節される可変ビットレート(VBR)方式のネットワークビデオを使用することを推奨しています。ストレージ容量を削減するために固定ビットレート(CBR)を使用することはお勧めできません。これは、カメラからCBRビデオが転送される場合は、ビットレートの制限により、フォレンジック調査で重要となる詳細部分が削除される可能性があるためです。
Zipstreamを利用することで、制限の有無に関わらず、システム設置担当者はVBRを使用することができ、これによりストレージを削減しながら、最適な画質を確保できるようになります。これにより、監視システムで高画質映像を維持することが可能となります。顔やタトゥー、衣服の模様といった現場検証において重要な詳細部分は分離・保存され、白い壁や芝生、植物など、重要度の低い部分は削除されます。
ストレージソリューションやネットワーク帯域幅の上限値を変更できない場合は、ZipstreamをMBRと共に使用して、システム帯域幅の一時的な急上昇を回避することができます。
略語一覧
AOM:Alliance for Open Media
AV1:AOMedia Video 1
CBR:固定ビットレート(Constant bitrate)
FPS:フレーム/秒(Frames per second)
GOP:Group of Pictures
HEVC:高効率ビデオコーディング(High Efficiency Video Coding)
IEC:国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)
ISO:国際標準化機構(International Organization for Standardization)
ITU:国際電気通信連合(International Telecommunication Union)
ITU-TITU:電気通信標準化部門(Telecommunication Standardization Sector)
MBR:最大ビットレート(Maximum Bitrate)
MPEG:動画像符号化専門家グループ(Moving Picture Experts Group)
NAS:ネットワーク接続ストレージ(Network-attached Storage)
PTZ:パン/チルト/ズーム(Pan-Tilt-Zoom)
ROI:関心領域(Regions Of Interest)
SoC:システムオンチップ(System on chip)
VBR:可変ビットレート(Variable bitrate)
VCEG:ビデオ符号化専門家グループ(Video Coding Experts Group)またはビジュアル符号化専門家グループ(Visual Coding Experts Group)
VMS:ビデオ管理システム(Video Management System)