監視における赤外線
概要
デイナイトカメラ
デイナイト機能搭載カメラは、画像処理に赤外光 (IR) を使用することができます。カメラのセンサーは可視光だけでなく、可視光に近い波長の赤外光も検出します。
デイモードではカメラが可視光を使用してカラー映像を生成します。
ナイトモードでは、カメラは赤外光もとらえ、それを使用して高画質のグレースケール映像を生成します。
環境光が設定され光の強度を下回ると、カメラはデイモードからナイトモードに切り替わります。
デイナイトカメラは、サーマルカメラではありません。サーマルカメラは、赤外線スペクトルの異なる部分を使用します。
赤外線光源
赤外線 LED 照明は、通常の照明が適さない暗闇での監視を可能にする、電力効率に優れた目立ちにくい手段です。
赤外光は、太陽光や月光の中にも自然に存在します。
赤外線 LED を内蔵したカメラは、照明用のケーブルやデバイス、電源の追加が不要なため、便利なソリューションです。
カメラに一体化された LED 照明は、特定のカメラとその機能に合わせて独自に調整されています。
スタンドアロン型の赤外線投光器は、一般的により高出力で光が遠くまで届くため、場合によっては適しています。
OptimizedIR
Axis OptimizedIR は、カメラのインテリジェンス機能と高度な LED テクノロジーを組み合わせた、先進のカメラ一体型赤外線ソリューションです。
OptimizedIR は、カメラの機種ごとに調整されています。典型的な例としては、カメラの可変視野内で均一な照明を実現する特許取得のテクノロジー、極めて効率的な熱管理、カメラに合わせて微調整された高品質の長距離対応 LED などがあります。
OptimizedIR は継続的に改良され、高度な新機能が随時追加されています。
はじめに
カメラのほとんどは可視光と近赤外光 (IR) を使用して画像や映像を生成することができます。撮影シーンに人工的な赤外線照明を加えることで、まったくの暗闇でも高品質映像の取得が可能です。
本ホワイトペーパーは監視環境において赤外線照明が広く使用される理由について説明するとともに、カメラ内蔵の投光器とスタンドアロン型の投光器、そして赤外線ソリューションの独自の組み合わせによる Axis OptimizedIR についても記載しています。
光感度と電磁スペクトル
光は光子 (フォトン) と呼ばれる個々のエネルギーの集まりです。カメラのイメージセンサーは光に反応する数百万個のピクセルを有し、これがセンサーに入る光子の数を検出します。カメラはこの情報を使って画像を生成します。
また、光はエネルギーや波長がそれぞれ異なり、カメラセンサーの光子検出能力はその波長に依存します。一般的に、センサーは波長が 0.4 μm (マイクロメーター) ~ 0.7 μm の可視光子を検出しますが、通常はそれよりも若干波長の長い、電磁スペクトル内の近赤外線 (0.7~1.5 μm) の光子も検出します。このような光は太陽光の中など自然界に存在しますが、人工的な光源を使用して追加することも可能です。
スペクトル内のLWIR (長波赤外線) の範囲にあたるさらに波長の長い光子は、サーマルカメラセンサーで検出することができます。LWIR光はあらゆる生物や物体が自然に発する熱放射です。サーマルカメラ画像では、温かい物体 (人や動物など) がそれよりたいてい温度の低い背景から際立って映ります。
1. X線
2. 紫外線
3. 可視光
4. 近赤外線 (NIR) 放射 (約 0.7~1.5 μm)
5. 短波長赤外線 (SWIR) 放射 (1.5~3 μm)
6. 中波長赤外線 (MWIR) 放射 (3~5 μm)
7. 長波長赤外線 (LWIR) 放射 (8~14 μm)
8. 遠赤外線 (FIR) 放射 (約 15~1,000 μm
9. マイクロ波
10. ラジオ/TV電波
11. 赤外線照明
12. Axisサーマルカメラ
低光量の条件下では、カメラセンサーに届く光子の数が少なくなります。Axis Lightfinder テクノロジー搭載カメラは、センサー、レンズ、微調整された画像処理のバランス良い組み合わせにより光感度が非常に高いため、少ない光子を使用してカラー画像を生成することができます。しかし、撮影シーンが暗すぎると可視光子の数が足りず、センサーがそれらを検出できません。そのような極度の低光量シーンで検出するためには、可視光 (およびカラー映像) を使わずに、スペクトルを広げて近赤外線波長 (デイナイトカメラを使用) または長波赤外線波長 (サーマルカメラを使用) を使用する必要があります。
赤外線イメージングと赤外線照明
赤外線 LED 照明の使用は、電力効率が高く、暗闇でも目立たない監視を可能とします。まったくの暗闇でのイメージングでは、スタンドアロン型の投光器またはカメラ内蔵の赤外線投光器を使用して赤外光を追加する必要があります。
画像処理に赤外光を使用できるカメラはデイナイト機能を備えているか、デイナイトカメラです。これらは月の光などの自然の赤外光や、白熱灯や専用の赤外線光源からの人工的な光を利用することができます。赤外線照明を内蔵するカメラはすべてデイナイトカメラですが、デイナイトカメラに必ずしも赤外線照明が内蔵されているとは限りません。赤外線投光器を内蔵したAxisのカメラの製品名には、LED (発光ダイオード) を意味する「L-」の文字が付いています。
通常、カメラの内蔵照明とスタンドアロン型の照明はどちらも 850 nm の波長の赤外光を使用します。可視光の波長に近いため、赤外線 LEDは目に見えるかすかな赤色の光を放ちます。赤外線 LEDには波長が 940 nm のものもあり、可視光を発生させる危険性を低減します。ただし、次の図に示すように、カメラセンサーの感度はその波長より若干低くなっています。
Axis Lightfinder テクノロジーは赤外光と可視光を使用します。Lightfinder を搭載するカメラは赤外線照明を遠くまで届けるため、シーン内遠方の自然の赤外光が見えやすくなります。
デイナイトカメラ
デイナイトカメラはデイモードとナイトモードの 2 つのモードの切り替えが可能です。デイモードではカメラが可視光を使用してカラー映像を生成します。一定の光度を下回ると、カメラは自動的にナイトモードに切り替わります。ナイトモードでは可視光と近赤外光の両方をとらえて高品質のグレースケール映像を生成します。
1.センサーの相対光感度
2. ナイトモードで使用される波長
3. デイモードで使用される波長
4. 可視光
5. 近赤外光
デイモードとナイトモードの切り替えには、機械的に取り外し可能な IR カットフィルターが使用されます。デイモードでは、色歪みのない映像を得るためにこのフィルターが自然の赤外光を遮断してカメラセンサーに届かないようにします。ナイトモードではフィルターが取り外され、赤外光がセンサーに当たり、カメラの光感度が高まります。赤外光はセンサー上の三原色のカラーフィルター (RGB) のすべてから漏れるため、色の情報が失われ、カメラはカラー映像を生成することができなくなります。
1. ソレノイド
2. フロントガード
3. 光学部品ホルダー
4. イメージセンサー
5. ナイトフィルター
6. デイフィルター
ナイトモードで生成されるグレースケール映像は、赤外光を視認できない人間の目に対応しています。ただし、特定の反射性を持つ物質は予想外のグレースケール色で映し出されることがあります。例えば、色の濃いジャケットがかなり明るく映ったり、逆に薄い色が濃く映ったりします。
サーマルカメラではなく赤外線イメージングを使用する理由
まったくの暗闇で利用可能な映像は、サーマルカメラと赤外線照明内蔵のビジュアルカメラでとらえることができます。サーマルカメラはあらゆる物体が自然に発する熱放射のみを検出するため光源を必要としません。

左:赤外線照明内蔵デイナイトカメラによる画像。
右:熱放射を受動的に検知するサーマルカメラによる画像。
この 2 つのカメラテクノロジーは一般的に異なる目的に対応します。サーマルカメラは主に物体の存在を検出し、赤外線カメラはその条件に応じて個体の認識または識別に使用できます。そのため、赤外線照明内蔵カメラは完全一体型のスタンドアロン型監視カメラとして使用できますが、大型のさまざまな監視システムに統合することも可能です。一方、サーマルカメラは監視システムを補完するという点で効果的ですがそれに代わるものではありません。通常はシステム内のどこかに識別を行うためのビジュアルカメラが必要です。
サーマルカメラはキロメートル単位の優れた検出範囲を有しますが高価格です。赤外線照明内蔵カメラの検出範囲はカメラの解像度と投光距離に依存します。Axisの赤外線製品については、データシートに投光距離に関する情報が記載されています。このデータは夜間に屋外で実際のシーンの実際の物体を使用した評価に基づいています。
サーマルカメラはガラスを通して物体をとらえることができませんが、赤外線照明を使用したビジュアルカメラではそれが可能です。この点に関する効果はその状況と監視目的によって異なります。例えば、サーマルカメラは監視が許可されていない窓の向こう側を誤って撮影してしまうことがないため、屋内監視においての利点があります。
サーマルカメラテクノロジーの詳細については、www.axis.com/technologies/thermal-imaging をご覧ください。
可視光照明ではなく赤外線照明を使用する理由
人工的な白色光照明が禁止されている場所やそれが美観を損なうような場所では、赤外線照明を使用して監視を行うことが可能です。
その一つの例として、白色光ではドライバーの集中力が大幅に妨げられる夜間の交通監視が挙げられます。また、赤外線には目立たない監視が可能という利点もあり、一般的な光害を悪化させないということのほかにも、さまざまなシナリオにおいて戦略的に有効活用できます。しかし、多くの場合には可視光投光器による威嚇効果が好まれます。
赤外線照明は色彩情報をとらえることがそれほど重要でない場合に使用できます。ただし、グレースケール映像はカラー映像に比べてビットレートが大幅に低いため、帯域幅とストレージが最小限に抑えられます。
赤外線照明を使用したデイナイトカメラは高コントラスト・低ノイズで、特にビデオ分析や、交通監視などの高速で移動する物体の夜間監視に適しています。赤外線照明を使用した映像は、場合によってはビデオ分析アプリケーションのナンバープレート認識 (LPR) でも有効です。ナンバープレートは画像内の他の物体よりも赤外光を多く反射するため、LPR アルゴリズムが他の物体でなくナンバープレートに反応できるようになります。ナンバープレートの不正な改造も容易に検出できます。
カメラ内蔵の赤外線照明とスタンドアロン型の赤外線照明
人工的な赤外線照明は、スタンドアロン型の赤外線投光器またはカメラ内蔵の赤外線投光器から得られます。監視用途では、この両方のタイプを同時に使用することでメリットを得られる場合があります。通常、スタンドアロン型の赤外線投光器はより高出力で光が遠くまで届きますが、カメラ内蔵の赤外線投光器は機能やズームレベルなどがそれぞれのカメラに合わせて個別に適合・調整されているため、近距離の用途にはこちらの方がより適している場合もあります。
赤外線投光器の一般要件
カメラ内蔵型でもスタンドアロン型でも、赤外線投光器はカメラの視野全体に均一な明視野を提供できなければなりません。投光器は投光距離が長くなければなりませんが、付近の物体に対するカメラの露出オーバーを防ぐことも必要です。そのためには、通常カメラにワイドダイナミックレンジ機能が搭載されている必要があります。
赤外線投光器には可視光検知器が内蔵され、日中や光源が十分な光を放っている場合には節電のため自動的にシャットダウンすることが必要です。また、LEDの寿命を長く保つためにオーバーヒートを防ぐ機能も必要です。
内蔵投光器
カメラと投光器が一体化された装置を使用することで、より目立たない設置が可能になります。これは、美術館や歴史的な建造物など、古い建物や重要文化財の監視には特に重要な利点です。
赤外線照明を内蔵したAxisのカメラは容易に設置・統合を行うことができます。内蔵の赤外線 LED は電力消費量が低く Power over Ethernet (PoE) を使用してカメラから電源を得るため、外部ケーブルや電源の追加が不要です。また、照明内蔵カメラによるシステムは、設置に必要な部品数が少なくそれに伴って整備やメンテナンスを行う部品の数も少なくなるためより安価です。
一部のカメラでは、赤外線 LEDをレンズから隔離された場所に配置し、シールドされたドームによりドーム上の水滴や雪に対するIR反射を防いでいます。これにより、常にクリアで鮮明な画像を実現します。赤外線照明を内蔵したその他のカメラでは、ウェザーシールドを使用することで、ドーム上の水や雪を最小限に抑えることができます。

左:このカメラは、レンズの下に2つの赤外線 LEDを搭載し、雨天時に水滴からドームを保護するウェザーシールドが付いています。
右:このカメラはドームのシールド部分の裏側、レンズから隔離された部分に配置された2つの赤外線 LEDを搭載しています。
スタンドアロン型投光器

デイナイトカメラに使用されるスタンドアロン型の赤外線投光器は、一般的にカメラ内蔵の赤外線照明より長い投光距離を有しています。これは使用されている LED の数が多く光量が多いためです。そのため、カメラがより自由に照準を合わせることもできます。
光とカメラレンズの物理的な距離は、カメラ内蔵の赤外線照明よりもスタンドアロン型投光器を使用した場合の方が離れているため、光に自然と集まる虫やほこりがレンズに近づきすぎて映像の妨げとなることがありません。
スタンドアロン型投光器を使用する場合は、照明がシーンに適していることを確認する必要があります。投光範囲が狭すぎるとシーンの中央にホワイトアウトやグレアが出たり、より広角での不適切な照明の原因となります。逆に投光範囲が広すぎると、前方向に届く光の量が減ったり、対象範囲外の物体が不必要に照射されます。
Axisのスタンドアロン型投光器は交換可能な凹レンズが備わっており、シーンに合わせて照明の幅を選ぶことができます。投光器の調整は現場において手動で行う必要があるため、スタンドアロン型投光器は一定のズームレベルと視野を保つカメラと併せて使用するのが最適です。
Axis OptimizedIR
Axis の OptimizedIR 搭載カメラは、インテリジェントなカメラと高度な LED テクノロジーを独自に組み合わせたパワフルな製品で、Axis の最も高度なカメラ内蔵赤外線ソリューションが使用されています。その中には、カメラの可変視野内で均一な照明を確保する特許取得のテクノロジー、極めて効率的な熱管理、カメラに合わせて微調整された高品質のロングレンジ LED の使用などがあります。OptimizedIR はそれぞれのカメラモデルに合わせて調整されています。カメラ固有の条件や機能に応じてそれぞれ異なるソリューションで構成されていることもあります。また、OptimizedIR は継続的に改良され、高度な新機能が随時追加されています。
柔軟に調節可能な投光角度
一部のリモートズームカメラに搭載されている OptimizedIR 機能は、ズームレベルに合わせて投光角度を調節することができます。高精度のカスタムメイドレンズを使用しながら、赤外線 LED がカメラのズーム動作に追従して照明を当て、適切な量の光を提供します。視野全体に照明が均一に行き渡るため、完全な暗闇でも適切に露出された高品質・低ノイズの映像が得られます。

左:赤外線照明の角度は、カメラの画角よりもわずかに大きく、カメラの視野全体 (水色) を均一に照らすことができます。
右:カメラの画角が狭くなると、赤外線照明の角度も自動的に狭くなります。
調節可能な光の強度
Axisの最も高度なソリューションの一部では、カメラに内蔵された LED の光強度を手動または自動で調節できます。最適な画質が必要とされる場合は、Webインターフェースから遠隔操作で個々のライトの減光や消灯が可能です。
カメラは最適な画質を得るために自動的に露出を調節します。また、壁際や角際への設置では、カメラが壁や角に最も近い LED を自動的に減光するので、画像の一部にサチュレーションを引き起こす可能性のある反射を防ぐことができるという利点もあります。
例えばシーン内の外部の光源など、設置環境やカメラ周囲の条件に応じて、個々の LED の光強度を手動で調節して赤外線照明をカスタマイズすることも効果的です。
電力効率と耐久性
OptimizedIRには、電力効率が非常に高い LED が使用されています。熱放散が最小限に抑えられており、電源は PoE の電力で十分にまかなえるため、追加の電源ケーブルは必要ありません。
これらの LED は高品質で耐久性に優れており、低発熱のため寿命もさらに長くなります。動作時の温度が低く、長期の使用が可能です。また、OptimizedIR はシーン全体を均一に照らし、視野の外側の光の量を最小限に抑えるため電力効率にも優れています。これは最適な機械設計により、使用する LED の数を抑えることで達成されています。
PTZカメラのカスタマイゼーション
高度な熱管理ソリューションと洗練されたカメラ機能により、Axisは一部の PTZ (パン/チルト/ズーム) カメラにも OptimizedIR を搭載しています。異なるレンズと光強度の調節機能を備えた複数の LED を使用し、視野やズームファクターに合わせて照明が最適に調整されます。カメラのパン、チルト、ズーム動作で、赤外線照明がカメラの視野に合わせてスムーズに調節されます。
PTZ カメラを目立たないデザインにするため、内蔵 LED はすべて外部のヒートシンクに接続せず、イメージセンサーの近くに配置する必要があります。そのため、LED の冷却が非常に重要です。
OptimizedIR を搭載するAxisの PTZ カメラは、ヒートパイプを使用して LED が発する熱をセンサーと LED から逸らしてこれらの適切な動作温度を維持します。これにより、センサーは高品質・低ノイズの画像を生成するとともに、LED の長寿命が確保されます。また、この熱管理ソリューションによって方向的に目立たないコンパクトなドーム型のデザインが可能となり、OptimizedIR による近赤外線照明とともに完全に目立たない監視が実現します。
Axisの赤外線装置の安全性
Axisのカメラは、国際規格 IEC 62471 に基づく欧州規格 EN 62471:2008 に基づいて、使用の安全が確認されています。この規格に準拠するカメラとその内蔵照明は、カメラを直視する生物の目に害を与えることはありません。