Lightfinder

9月, 2021

概要

Axis Lightfinderテクノロジーは、ネットワークカメラに卓越した光感度をもたらします。他のカメラであればナイトモードとグレースケール映像に切り替わるような非常に暗い場所でも、Lightfinderを搭載したカメラはデイモードを維持し、カラー画像を配信し続けます。監視状況では、色が人物、物体、車両などの識別に対する重要な要素になる場合があります。

Lightfinderは、完全な暗闇のシーンだけでなく、通常の屋内照明より光源レベルが低い場所でも付加価値をもたらします。質の良い画像を生成するために光量を減らす必要がある場合、Lightfinder搭載カメラは、露出時間を短縮することなどにより、ブレやノイズを最小限に抑えることができます。

このホワイトペーパーでは、高度に制御された照明を備えるスタジオからの画像を使用し、Lightfinderの低照度性能を実証しています。光の強度が1.5〜5ルクスのシーンは、人の目では非常に暗く感じられましたが、カメラはそのシーンを明るいものとして表示しました。光の強度を低下させると、人の目は0.5ルクスあたりで色覚と部分の詳細を失いましたが、カメラは引き続き鮮やかな色を生成しました。0.02ルクスまで低下させ、人が非常に淡い色の物体だけをかすかに識別できるだけで、実質的には完全な暗闇であると認識する中でも、カメラはカラー画像を提供し続けました。

Lightfinderテクノロジーは、監視用途に最適化された高品質レンズや厳選されたイメージセンサーをはじめとする最高水準の光学部品を、入念に調整して組み合わせることにより実現しました。デジタル画像処理アルゴリズムは、システムオンチップに組み込まれています。これらすべての構成要素の定期的な改良により、Lightfinderもまた、常に進化しています。Lightfinder 2.0のコンセプトは、この進化における一歩を反映し、光感度の向上、より自然な色再現性、そして上級ユーザー向けのカスタムチューニングを可能にしています。

Lightfinderは、カラー処理、フィルタリング、およびチューニングに関する幅広いノウハウを基盤としています。LightfinderとAxis Zipstreamテクノロジーは、併せて調整されています。これにより、慎重な圧縮の実行が可能になり、平均ビットレートの低減とストレージコストの削減を実現しながら映像を生成するとともに、画像の詳細部分を維持します。

はじめに

Lightfinderは、極端に暗い場所でもネットワークカメラが高品質のカラー映像を提供することを可能にする、Axisのテクノロジーです。このテクノロジーは、適切なセンサーとレンズ、そして最先端のチップに組み込まれている最適化された画像処理アルゴリズムを独自の方法で組み合わせることにより開発されました。

Lightfinderを搭載したネットワークカメラは、カラー映像が人物、車両または事象を効率的に識別できる可能性を大幅に高めることのできる駐車場、市街地監視、キャンパス、建設現場など、要求の厳しい低照度環境下でのあらゆる映像監視用途に効果的です。

このホワイトペーパーでは、Lightfinderテクノロジーの基礎と主な利点について説明します。照明が制御された低照度シーンでLightfinderを使用して撮影した映像のスナップショットを用い、画質を実証しています。技術的な理解を深めるため、まずは光の基本、光の検出および光の測定について説明します。

低光量環境下でもカラー画像を提供 - 背景

光は、光子と呼ばれる電磁エネルギーの不連続な塊から成ります。光子は異なるエネルギー準位、あるいは波長を持っています。可視光のエネルギーの範囲では、波長によって光の色が異なります。下の図は、電磁スペクトルのエネルギー範囲の一部を示しています。

波長 (ナノメートル) でエネルギー範囲を記した電磁スペクトルの一部。エネルギー範囲 (左から右に向かって): (1) 紫外線、(2) 可視光、(3) 赤外線、(4) マイクロ波。

赤外線エネルギーの範囲は、さらに次のように分割されます: 近赤外線、短波長赤外線、中赤外線、長波長赤外線、遠赤外線。

光の検出

人の目は、約400 nmから700 nmの間の波長の光 (光子)、すなわち可視スペクトルを検出することができます。目には、光を検出する2種類の視細胞、桿体細胞と錐体細胞があり、これらは異なる強度と波長の光を測定するよう最適化されています。錐体細胞は色覚の機能を持っていますが、何かを感知するためには、強い光 (多数の光子) を必要とします。一方、桿体細胞は、わずかな光 (数個の光子で十分) でも感知することができますが、波長を区別することができないため、色情報は提供しません。つまり光量が低下すると、桿体細胞は機能し続けますが錐体細胞は何も認識せず、これが暗い場所で人の目が色覚を失う理由です。

デジタルカメラで、目の桿体細胞と錐体細胞に相当するのは、イメージセンサーにある何百万もの感光部 (ピクセル) です。デジタルカメラセンサーには、可視光光子だけでなく、スペクトルの近赤外線部分におけるわずかに長い波長 (700-1000 nm) の光子も検出できるという利点があります。近赤外線は、通常、太陽光と人工光の両方に存在します。

可視光のレベルが非常に低い場合でも、デジタルカメラ (取り外し可能なIRカットフィルターを備えたデイナイトカメラ) は、利用可能な近赤外線を使用し、画像を生成することができます。ただし、この光には色情報がありません。そのため、可視光のレベルが非常に低い場合は、人の目も一般的なデイナイトカメラも、グレースケール画像しか提供できません。

しかし、Lightfinderを搭載したカメラは、光源レベルが人の目が色を認識できるレベルよりもはるかに低いレベルまで低下しても、色覚を維持し、カラー画像を継続的に生成します。

Lightfinder搭載カメラに赤外線イルミネーターを追加して、代わりにカメラのナイトモードを使用することも可能です。ナイトモードのグレースケールの赤外線画像は、インテリジェントアプリケーションなどにおいて非常に役立ちますが、多くのケースでは、色と自然な画像を備えるデイモード映像の方が断然見栄えに優れています。

Lightfinder搭載カメラが既存の光源を最大限に利用して撮影した、夜間の映像のスナップショット。

ルクスで表す光の強度

光の強度は、照度、または単位面積当たりの光束として、測光により定量化することができます。照度は、光の絶対的な放射強度 (W/m2 で測定される放射照度) に基づいています。しかし、照度には、波長ごとの人の目が感じ取る明るさを標準化した、人の目の感度特性による重み付けも加味されています。これは、照度が人の目が感じ取る光の強度を表していることを意味します。照度はルクス (lx) で測定され、1ルクスは1平方メートル当たりの1ルーメンに相当します。

自然のシーンにおける照明は複雑なことが多く、影とハイライトによってシーンのさまざまな部分でルクス値が異なります。測定値1ルクスは、シーン全体の光の状態を示すものではなく、また、光の方向に関する情報も含まれていません。とは言え、光の強度の測定は、光の状態を推定し、さまざまなシーンを比較するための有益なツールを提供します。下の表は、さまざまな光条件に対する一般的なルクス値の一覧です。

さまざまな条件に対するルクス値。
光の強度説明

0.05~0.3ルクス

満月の晴れた夜

1ルクス

1 mの距離にろうそくがある状態

80ルクス

オフィスビルの廊下

500ルクス

オフィスの照明

10,000ルクス

昼光

100,000ルクス

強い太陽光

最低照度として表される光感度

多くのメーカーは、妥当な画像を生成するために最低限必要な照度として、ネットワークカメラの光感度を指定しています。これらの仕様は、同じメーカーによるカメラの光感度を比較する上では役立ちますが、異なるメーカー間の製品でこのような比較を行うには注意が必要です。最低照度の測定方法には国際基準がないため、各メーカーは、それぞれ異なる方法を採用しており、妥当な画像に対する基準も異なります。

Lightfinderの主要構成要素

Lightfinderテクノロジーは、高品質の光学部品と、監視用途に特別に設計されたシステムオンチップの高度な画像処理技術を入念に調整して組み合わせることにより実現しました。これらすべての構成要素の定期的な改良により、Lightfinderテクノロジーもまた、常に進化しています。

Axisネットワークカメラの立体分解図。ハイライトされているコンポーネントは、Lightfinderテクノロジー向けに最適化されているものです。(1) 画像信号処理 (ISP) モジュール内蔵システムオンチップ、(2)イメージセンサー、(3)レンズ、(4)フィルター。

高品質のレンズによって集光・集束された光は、デジタルカメラの中核であるイメージセンサーに到達します。センサーは、光を電気信号に変換する一連の高感度光子検出器からなる電気光学部品です。すべてのLightfinder製品には、監視に最適な特性を備える、厳選された高感度CMOSセンサーが搭載されています。

イメージセンサーと同様に重要なのが、システムオンチップのISPモジュールに組み込まれているデジタル画像処理アルゴリズムです。このチップは、映像監視専用に設計されています。また、最新のASICテクノロジーに基づいて製造されており、最大限のデジタルビルディングブロックを保証します。このアルゴリズムは、ノイズの除去、色の復元、各画像の鮮明化をリアルタイムで実行し、非常に小さなセンサー信号からでも極めて有用な映像を生成します。ただし、画像コンテンツの維持は、重要な詳細部分を削除する可能性がある拡張フィルタリングよりも常に優先されます。監視においては、画像アルゴリズムがシーン内のフォレンジック情報を破壊しないことが特に重要です。アルゴリズムは、正常に動作するとともに予測可能である必要があり、画像を見やすくする過程で画像に余分な情報を取り入れることがあってはなりません。

光路内にあるすべてを慎重に評価し、すべてのデジタルアルゴリズムを最適に調整することで、低照度が非常に大きな課題となるほとんどの光条件下で、卓越したカメラ性能を実現することが可能です。Lightfinder製品では、レンズとセンサーを他の光学部品 (通常はレンズフィルター) と組み合わせて、光感度と解像度の最大化を図りながら、画像の乱れを回避します。LightfinderとAxis Zipstream technologyは、併せて調整されています。これにより、正確な圧縮の実行が可能になり、平均ビットレートの低減とストレージコストの削減を実現しながら映像を生成するとともに、画像の詳細部分を維持します。

Lightfinderの主な利点

Lightfinderは、カメラがわずかな光でシーンの色を再現することを可能にしますが、低ノイズで動きによるブレ (モーションブラー) を最小限に抑えた高品質の映像も提供します。これは、卓越した光感度が露出時間の短縮を可能にするためです。

超低照度環境下でも正確な識別を可能にするカラー映像

他のデイナイトカメラであればナイトモードとグレースケール映像に切り替わるような非常に暗い場所でも、Lightfinderを搭載したカメラはデイモードを維持し、カラー映像を配信し続けます。監視映像の色は、人物、車両または事象を効率的に識別するために、極めて重要となる場合があります。Lightfinderは、オペレーターに衣服や車両の色を素早く正確に報告する機能を提供することで、迅速な対応と正確な識別を可能にします。

さまざまな光源レベルにおけるLightfinderの使用例

Lightfinderの低光量性能を実証するため、Lightfinder搭載カメラを高度に制御された照明をもつスタジオに設置し撮影した、映像シーケンスの画像がこのセクションには含まれています。

超高感度のF0.9レンズを搭載したAXIS Q1645 Network Cameraを、色とりどりの被写体から10 mの位置に配置しました。カメラが使用した露出時間は、動いている物体をとらえるのに十分であると考えられる1/30で、WDRはオフになっています。

最初の図は、1.5ルクス (三輪車周辺で測定) から5ルクス (マネキンの腰の辺りで測定) の光源レベルで、カメラによって再現されたシーンを示しています。人の目 (同じく被写体から10 mの位置、カメラの隣) は、暗さに慣れるのに十分な時間が経過した後でも、このシーンは画像で見るよりもかなり暗いと感じました。この時点では、まだ目は色を認識することが可能ですが、光源レベルは「不快な暗さ」と表現することができます。

光の強度が1.5ルクス (三輪車) から5ルクス (マネキンの腰の高さ) のスタジオのシーン。Lightfinder搭載カメラは、鮮明な色と実際よりも明るい画像を生成しました。人の目でも色を認識することはできましたが、シーンは非常に暗いと感じました。

次の3つの画像は、同じ設定で撮影した同じシーンのトリミング画像ですが、光源レベルを徐々に下げています。約0.5ルクスでは、人の目は色覚を失いましたが、Lightfinder搭載カメラは引き続き明るい色を再現しました。実際、Lightfinder搭載カメラは、かなり抑えられた色ではあるものの、テストを行った光源レベルの最低値である0.02〜0.08ルクスまで色覚を維持していました。これらのレベルでは、人の目は色も部分の詳細も認識できず、シーンをほぼ完全な暗闇と感じ、最も明るい色の被写体だけをかすかに識別できる程度です。

被写体の測定値、0.2ルクス~0.7ルクス。Lightfinder搭載カメラは、明るい色を再現しています。人の目では色の識別は曖昧で、主に明るい表面は認識できるものの、詳細部分はほとんど見ることができませんでした。
被写体の測定値、0.1ルクス~0.3ルクス。Lightfinder搭載カメラは、鮮明さは低下しているものの、詳細部分が非常にクリアなカラー画像を生成しています。人の目では暗い表面を識別できず、部分の詳細や色を認識することはできませんでした。

被写体の測定値、0.02ルクス~0.08ルクス。Lightfinder搭載カメラは、抑え気味ではあるものの判別可能な色の付いた、色味の暗い画像を提供します。人の目では最も明るい表面をぼんやりと識別できるのみで、部分の詳細や色はまったく認識できませんでした。

Lightfinder 2.0

2019年5月の時点で、Lightfinder 2.0を搭載した新しいAxisネットワークカメラが、続々と登場しています。ARTPEC-7システムオンチップを使用するカメラで利用可能なLightfinder 2.0のコンセプトは、Lightfinderの進化における一歩を反映しています。

利点

Lightfinder 2.0は、画像処理パイプラインの完全な再設計により、画像の乱れの少ない一層鮮明な画像を提供します。カメラの全般的な光感度を高めるだけでなく、Lightfinder 2.0は、より正確な色再現性、ホワイトバランスの向上、そして影や暗い被写体を浮き上がらせることのできる可能性の向上も実現します。

また、Lightfinder 2.0には、時空間フィルタリングを制御するための新しい設定も搭載されています。これは、特定のインテリジェントアプリケーション向けに画像を最適化する必要がある、上級ユーザーにとって特に役立ちます。

次の画像は、Lightfinder 2.0を搭載したAxisカメラの監視映像テストのスナップショットです。この画像には、特に優れた点は何もないように見えます。しかしそれは、このシーンが実際はいかに暗いかを知らない場合です。画像では、橋の下に人が立っているのがわかります。この人物の光の強度の測定値は、わずか0.05ルクスでした。Lightfinder 2.0は、この非常に暗い場所を、あたかも日光が降り注いでいるかのように再現しています。

Lightfinder 2.0搭載カメラによって撮影された鮮明で明るいカラー画像。この時の橋の下の光の強度は、わずか0.05ルクスです。

次の画像の同じシーンのスナップショットと比較してみてください。これは画像を操作し、人の目で見た状態を視覚化したものです。Lightfinder 2.0搭載カメラの隣に立っている人の目からは、橋の下の領域は非常に暗く見えるものの、一部の詳細部分はまだ識別することが可能でした。

その場にいる人が目で見たシーンの状態を示しています。この画像は、人の目が感じる暗さを視覚化するために操作されています。

次の画像は、最新のスマートフォンで撮影した同じシーンの写真です。当然のことながら、スマートフォンは監視用に画像を最適化するわけではありません。しかし、橋の下の領域が完全に黒い状態で写っていることから、このシーンが実際はいかに暗かったかということは大まかに理解できます。

iPhone8で撮影した同じシーン。