ネットワークビデオの照明
概要
監視に使用するネットワークカメラを選択する際は、いくつかの事項を考慮に入れる必要があります。照明もその1つに含まれます。ビューエリアの光源と状況により、カメラの性能と画質が左右されます。
現在、大半のネットワークビデオシステムには、優れた光源としてLED(発光ダイオード)が使われています。高コスト効率、長い耐用期間、低消費電力であることから、LEDは非常に普及している光源です。異なるタイプの照明が必要となる夜間の監視と日中の監視では、その考慮事項が若干異なります。たとえば、色補正機能を搭載したイルミネーターであれば、夜間の監視でも物体の真の色を実現することができます。
他にも考慮すべき照明要素がありますが、これはカメラの使用目的によって大きく異なります。以下のような要素が挙げられます。
光の動作:これは光が当たるさまざまな表面に関係するもので、画質に影響します。拡散素材や反射素材(鏡面反射、拡散反射、再帰反射)などが考えられます。
照射距離とパターン:ネットワーク映像監視向けとして設計された照明システムで良好な性能を実現するには、均一な照度を提供できる機能が備わっていなければなりません。カメラの視野に対して適度な照明が必要となります。また、イルミネーターから対象物までの距離も考慮に入れる必要があります。柔軟性の高いAxisイルミネーターはいくつかの角度に設定できるため、使用するカメラの視野に最適な照射角度を選択することができます。
本ホワイトペーパーでは、特にこうした要因について詳しくご説明します。
はじめに
日中または夜間の監視に使用するネットワークカメラを選択する際は、画質に影響を与えるいくつかの要素をまず理解することが重要となります。本ガイドは、こうした要素の1つである「照明によって画像にもたらされる影響」を説明することを目的としています。これは、低光量の環境で良好な照明を配置するために考慮に入れなければならない重要な要素です。
光とは?
光はネットワークビデオの基礎となるものです。シーンで反射する光により、画像が人間の目やカメラに見えるようになるのです。そのため、ネットワークビデオシステムの性能は、カメラやレンズだけでなく、存在する光の量、品質、分布によって大きく左右されます。
電磁放射の一種である光はエネルギーの一形態です。光波長(または周波数)によって、光の色と種類が決まります。人間の目に見える可視光は、約400(紫)~700(赤)nmの非常に狭い範囲の波長のみです。しかし、ネットワークビデオカメラの場合は、可視光の範囲外の光も検知できるため、白色光だけでなく、近赤外線(715~950 nm)を使用して、夜間の監視を行うことが可能となります。
光の動作は光が当たる素材や表面によって異なり、反射、拡散、吸収という効果、より一般的にはこうした効果の混合の影響を受けます。大半の物体の表面は、光の何らかの要素を反射します。一般的には、表面の色が明るいと反射率が高くなります。黒い表面は可視光を吸収します。白い表面はほぼすべての可視光を反射します。赤外線の場合は、常に可視光と同じように反射するとは限りません。赤外線は、素材の性質によってその反射が異なります。
色とは?
人間の目と脳で色が認識されるプロセスは非常に複雑です。そのため、本ガイドに示されている色の定義は著しく簡素化されていることにご注意ください。
脳において、人間の目に見える400(紫)~700(赤)nmの波長の光が色として解釈されます。網膜に分布する錐体細胞が色覚の基礎となります。錐体細胞には光を受容する色素タンパク質である視物質が含まれており、異なる波長に反応する錐体があることで、色彩の区別が可能となります。人間の網膜には赤錐体、青錐体、緑錐体の3種類があることで、人は三色覚(赤、青、緑)を区別することができます。藍、藍紫、黄、オレンジなど、こうした三原色の波長の間にある他すべての可視色は、原色の混合物として認識されます。
同量の赤、青、緑のスペクトル色が存在すると、この波長は白色光として見えます。カメラにおいても、人間と同様の方法で光が収集され、色が認識されます。デジタルカメラの多くには、イメージセンサーによってカラー撮影を可能とするカラーフィルタ「ベイヤーパターン」が採用されています。このカラーフィルタのパターンでは、各カラーピクセルが原色(赤、青、緑)の個別の色成分で構成されており、これがセンサーに適用されます。このパターンは、欠けている色を補間するプロセスであるデモザイク処理が容易になるように最適化されています。さまざまな色に対する人間の目の感度を模倣することを目的として、このパターンではピクセル総数の半分に緑、総数の1/4ずつに赤と青が割り当てられます。
緑の葉が緑色に見えるのは、葉が白色光に含まれる緑の波長を反射するためです。赤い照明の下で葉を見ると、照明には緑が含まれていないため、これが黒く見えます。色付きの衣類を購入する際も、同様の仕組みが適用されます。店内で気に入った衣服が目に止まると、それをドアや窓の付近に持って行って、日光の下でどのように見えるかを確認することはありませんか?室内照明と日光では、含まれている波長の組み合わせがわずかに異なります。そのため、店内と屋外では衣服の見た目の色が変化するのです。
ネットワークビデオについても全く同じことが言えます。イルミネーターの色出力は、カメラで見える色、たとえばナトリウム街灯の下で見られるような黄色がかった光の影響を受けます。ネットワークビデオの画像で真の色を実現するには、色補正機能を搭載したイルミネーターを使用して、可視スペクトルに一致する照明を提供する必要があります。
物体に色が付いて見えるのは、物体から光が選択的に反射されるためです。反射された波長のみが目に見え(つまり色)、吸収された波長は見えません。たとえば、赤以外の白色光のすべての波長を吸収する色素分子が含まれている花の場合は、反射されるのが赤のみであるため、この花は赤く見えます。
可視スペクトルよりも短い波長は紫外線(UV)です。これは日焼けの要因となることから、ネットワークビデオに使用するには安全と言えません。可視スペクトルよりも長い波長が赤外線(IR)です。
赤外線とは?
赤外線(IR)は、可視スペクトルの外にある長波長の光です。そのため、人間の目には見えません。ネットワークビデオ照明に使用されるIRは、可視スペクトルよりわずかに長い700~1100 nmの波長です。この赤外線の範囲は、近赤外線(NIR)としても知られています。NIRは原色フィルタとは関係なく、3つのピクセルすべてで検知されるため、NIR光も色光として数えられます。そのため、すべての近赤外線光をブロックするIRフィルタカメラに取り付けない限り、カラー画像を実現することは不可能になります。このフィルタは、日中にセンサーの前に取り付けられ、光がほとんどない夜間にはアクチュエーターによって取り外される仕組みになっています。これにより、すべてのピクセルにNIR光(すべてのピクセル内)を割り当て、各タイプのカラーピクセルに可視光を割り当てることが可能となります。混合光からこの画像を使用可能にするために、(すでに破壊されている)色情報が破棄され、画像が白黒で表示されます。
カメラでは人間の目には見えないIRも検知されるため、このIRをさまざまな方法でコンピューター画面に表示することができます。画像を白黒にして、人間の目で赤外光が見えるように被写体を表示する方法が一般的です。他の疑似色を使用して、可視光とIRを比較するように画面を表示することもできます。これは時々、科学目的の画像処理で使用されます。
秘密の監視が必要なアプリケーションや低レベルの可視光を避ける必要のあるアプリケーションにIRは最適です。
カラー画像とモノクロ画像
夜間監視用の照明を設定する際にまず決定しなければならないのは、カラー画像とモノクロ画像のいずれを使用するかということです。多くの場合、カラー画像のほうが望ましいと言えますが、真の色を実現するにはかなりの注意が必要となります。この場合は、色補正機能を搭載したイルミネーターを使用する必要があります。低圧ナトリウム街灯のような黄色の光を検討してください。不適切な白色光を使用すると、性能が低下し、不正確な演色性につながる可能性があります。カメラの性能がどれほど優れていても、照明が不適切であれば、良好な画像を得ることはできません。
白色光が妨害要因となる場合、または秘密の監視が必要な場合には、照明には赤外線を使用する必要があります。また、同じ出力レベルで、赤外線光は白色光よりも遠くまで届きます。
輝度とグレア
輝度(明るさ)は、特定の領域から見た物の輝きの強さに対する主観的な認識です。グレアは、視野内の明るい部分と暗い部分の差が激しい場合に発生します。暗闇になると、この問題がより顕著化します。これは、明るい部分と暗い部分のコントラストにより、暗闇では人間の目(および赤外線を使用したネットワークビデオカメラ)が明るさの変化に適応することが困難になるためです。
拡散:
拡散素材の場合は、これを通過する光が拡散します。光の方向と種類によって、物質を通過する際の拡散が異なります。
反射:
光が素材の表面に当たって跳ね返ることがあります。これが反射光です。表面の質が反射の種類に影響します。ひどくざらつきのある素材の表面には小さな凹凸があるため、光がより散乱します。一方で、鏡のような平らな表面の場合は、光がより集中して反射します。
鏡面反射:
鏡のような表面が光を跳ね返す反射を鏡面反射と言います。鏡面反射の場合、入射角と反射角が等しくなります。
鏡面反射。入射光(1)と反射光(2) 拡散反射:
拡散反射面では、反射面の小さな凸凹によって光がさまざまな方向に反射します。たとえば、表面がざらざらしている場合は、光がさまざまな方向に跳ね返ります。拡散反射面の場合は、光が全方向に同じ割合で拡散します。
拡散反射。入射光(1)と拡散反射光(2) 再帰反射:
これは、光の当たる方向に関わらず、光源に向かってそのまま反射するように工夫されている反射方法です。交通標識や車両ナンバープレートに再帰反射が使われています。
再帰反射。入射光(1)
反射レベル:
反射率は、入射光に対してどれだけ反射するかの割合を示す尺度です。物体から光が反射される割合はさまざまで、反射されなかいエネルギーは吸収されて熱に変換されます。反射率の低い物体は、多くのエネルギーを吸収します。たとえば、太陽光に曝されたレンガの壁が暖かく感じられるのはこのためです。
露出計で光量を測定できますが、カメラではシーンの周囲光ではなく、シーンに存在する物体から反射される光を使用することが重要となります。
吸収:
素材によっては、光を吸収するものがあります。素材で光の一部が吸収され、残りが反射されるため、その物体の特定の色が目に見えます。黒い表面の場合は、そこに当たる光の大部分が吸収されます。通常、光エネルギーは熱に変換されるため、黒い物質は加熱されやすいということになります。
光源
白熱電球(ハロゲンを含む):
世界で初めて開発された電球である白熱電球は、非常に効率が悪く、入力エネルギーの90%が熱として浪費されるため、触れると熱く感じます。ハロゲン電球ではわずかに効率が向上しましたが、やはり最大で入力エネルギーの85%が熱として浪費されます。ネットワークビデオで使用する場合は、白熱電球は耐用期間が短く、著しく非効率です。
蛍光灯:
ネットワークビデオで蛍光灯が用いられることはほぼありません。これは、ネットワークビデオカメラでシーンを撮影する際に蛍光灯の「フリッカー現象」が認識されるためです。蛍光灯は一般的に低消費電力で、主に屋内設置向けに設計されています。大きな拡散光源を備えているため、光出力の焦点を合わせること、また制御することが困難となります。
HIDランプ(高輝度放電ランプ):
優れた演色性、最大1万2,000時間の長寿命、高い効率性を備えたHIDランプは、ネットワークビデオに十分に使用できますが、点灯後明るくなるまでに時間がかかること(2~3 分)から、オン/オフを迅速に切り替えられないという欠点があります。
LED:
ネットワークビデオアプリケーションの照明ソリューションとして、最も急速に成長しているのがLED(発光ダイオード)です。LEDは全体的に80%~90%と効率が高いことで知られていますが、最も効率の良いのが赤色LEDです。電力消費が非常に低いこと、動作温度が低いこと、またユニットの耐用年数を通して一貫した色が実現するというメリットがあるLEDは、多くの場合、ネットワークビデオアプリケーションで第一選択肢となります。
従来型の電球とは異なり、LEDは耐久性が高く、振動の影響を受けにくいだけでなく、ハードケースに収まっているため壊れにくいという利点があります。また、フィルタがなくても一定の波長で光が放射され、瞬時に点灯します。
LEDを使用すれば、ランニングコストを可能な限り低く抑える(最高出力ユニットで100ワット未満)ことができ、さまざまな光源の中では最長となる最大10万時間(10年間)の耐用期間を享受することができます。ちなみに耐用期間を比較すると、一般的に蛍光灯の寿命は1万時間、白熱電球の寿命は1,000 時間となります。LEDの中には、ドライバ回路の周波数が使用している電源周波数と同じでないものがあります。この場合は、フリッカー現象を排除することが不可能です。LEDランプの場合は、米国では常に30 Hz、60 Hz、120 Hz、240 Hz以上、欧州では50 Hz、100 Hz、150 Hz、200 Hz以上が使用されます。カメラと表示画面で同じフレームレートを使用するように設定すると、ちらつきのないビデオを作成することができます。
ネットワークビデオの照明に選択する波長
白色光:400~700 nmの光の組み合わせにより、真の白色光が得られます。
実用的な用途:
ネットワークビデオシステムのエリアを照明する
職場の全体的な照明レベルを向上させる
権限のある人員に快適な環境を提供する
侵入行為が発生しないように、エリアを照明して犯罪を抑止する
モノクロ、カラー、デイナイトカメラで使用できる
赤外線:
715~730 nm:オバートIR:赤信号のような赤い光が生成される
815~850 nm:セミコバートIR:ほのかに赤い光が生成される
940~950 nm:コバートIR:人間の目には見えない
赤外線の実用的な用途:
ネットワークビデオで目立たないように、または人の目に全く留まらないように照明を使用する
光害を最小限に抑える
非常に遠くを照明する
モノクロ、デイナイトカメラで使用できる
照明と安全性
白色光は可視光であるため、人間は白色光への過度の曝露を自然に防止できる機能を備えていると言えます。光の量を調整する眼球の虹彩が自然に縮小するため、可視光の影響が軽減されます。これで十分でなければ、単に目をつむればよいわけです。赤外線は人間の目には見えないため、赤外線への過度の暴露を自動的に防止することができません。しかし、赤外線は熱を発生するため、この特性を安全対策に活かすことができます。赤外線ユニットに熱を感じた場合は、光源を見ないでください。
照射パターン
シーン全体を適切に照らし、ネットワークビデオに十分な光を供給できるように、照射角度を調整する必要があります。最新の適応照明ユニットを活用すれば、特定のシーンの要件に合わせて、現場で照射角度を調整することができます。照射角度が狭すぎると、一部のエリアが適切に照明されなくなり、画像の中央に白飛びやグレアが発生します。
照射角度が広すぎると、光が「無駄」になり、照射距離が短くなります。
システムの性能を最大化するために、多くの場合、バリフォーカルレンズが使用されますが、照明に関しても同等レベルの柔軟性を実現することが理想的です。Axisのポートフォリオに見られるような柔軟な映像監視向けイルミネーターなら、広範な照射角度の選択肢が備わっているため、最適な角度を選択して正確に視野をカバーし、最適な画像を実現することができます。利便性が高く、素早く調整でき、そして適切な角度を簡単に選択できる製品を選んでください。
逆2乗の法則
特定の距離に存在する光量(照度)は、光源からの距離の2乗に反比例します。光量はこの逆2乗の法則に従って計算できるため、まずこの法則がどのように適用されるかをご説明します。
光は点光源から遠ざかるにつれて、水平方向と垂直方向に広がり、距離が遠くなるほど光量が少なくなります。たとえば、光源から離れたある場所に存在する物体Aとその2倍離れた距離に存在する物体Bがあるとした場合、物体Bが受ける光量はAの1/4となります((2 x 距離)² = 4)。
別の例を挙げると、光源から10メートルの距離にある物体の照度が100ルクスとした場合、この物体が光源から40メートルの距離に移動すると、その照度はその1/16((4 x 距離)² = 16)に当たる6.25ルクスに低下します。白色光と赤外線の両方に逆2乗の法則が同じように当てはまります。
Axis製品の照射距離
下に示されている図を利用して、イルミネーターから対象物までの距離に応じて、適切なAxis赤外線イルミネーターを選択してください。使用に最適な距離は、濃度が100%の色で示されています。最適ではないけれども、照明が届く距離は、色が薄くなっています。また、選択するレンズによっても、図示されている照射角度と照射距離が変化します。たとえば、AXIS T90D20 IR-LEDの場合は、標準レンズ(10°)と発散レンズ(35°、60°、80°、120°)のいずれかを選択することができます。
複数のイルミネーターの使用
逆2乗の法則により、距離に応じて光量(照度)がどのように低下するかを理解することができます。これを適用することで、特定の距離を照明するために必要となるイルミネーターの数を見積もることが可能となります。
1つのイルミネーターからの距離が2倍になると、照度が25%に低下します。その2倍の距離の地点を、1つのイルミネーターによる元の地点の照度と同じ明るさで照らすには、(シーンにおける出力が同じと考えた場合)4つのイルミネーター(2² = 4)が必要になるということです。同様に、3倍の距離の地点を同じ照度で照らすには、9つのイルミネーター(3² =9)が必要になります。
逆2乗の法則を使用して、光源の照度との差異を平方根で計算することで、複数のイルミネーターを使用する場合の効果を見積もることもできます。たとえば、同等の照度を達成する場合に、4つのイルミネーターを使用すれば照射距離を2倍(√4 = 2)、25個のイルミネーターを使用すれば照射距離を5倍(√25 = 5)に延ばせるということです。
イルミネーターの数を増やすだけが、照射距離を延ばす手段ではありません。照射角度が狭いイルミネーターや強力なイルミネーターを使用すれば、照射距離を延ばすことができます。
ズームレンズなどを使用する場合で、照明が必要となるのが特定の距離にある特定の物体のみである場合は、小型のイルミネーターを対象物の近くに配置するだけで済みます。一例として、敷地の建物やその他のインフラストラクチャーから比較的離れた位置にある門やドアが挙げられます。
イルミネーターなし | 距離の乗数 |
1 | 1 |
2 | 1.4 |
3 | 1.7 |
4 | 2 |
5 | 2.2 |
6 | 2.4 |
7 | 2.6 |
8 | 2.8 |
9 | 3 |
照射距離を2倍に延ばすには、4倍のイルミネーターが必要になります。イルミネーターの数を2倍にすると、照射距離が1.4倍になります。
光の測定
白色光:
白色光は、国際単位系(SI)における照度の単位「ルクス」で表されます。測定には、光が広がる面積も考慮されます(1ルクス = 1平方メートルあたり1ルーメン)。測定単位としては、現在でもフートキャンドルが広く使用されています(10ルクス ≈ 1フートキャンドル)。露出計を使用するだけで、シーンの白色光を簡単に測定することができます。さまざまな状況における一般的な照度(ルクス)は以下のようになります。
明るい晴れた日 | 10,000~100,000ルクス |
曇りの日 | 1,000~10,000ルクス |
たそがれ時 | 1~100ルクス |
街灯 | 5ルクス |
満月 | 0.1ルクス |
明るく澄んだ星空が見える日 | 0.01~0.0001ルクス |
赤外線光:
ルクスは可視光の測定単位であることから、定義として、不可視光を生成する赤外線の測定にルクスを使用することはできません。赤外線は最も一般的には、特定の領域における光源のエネルギー量を単純に表す1平方メートルあたりのmWで示されます。
均一な照度の必要性
照明システムの設計における最も重要な点として、均一な照度を実現することが挙げられます。人間の目とネットワークカメラ/レンズは両方共に、視野内で光量の相違を処理しなければなりません。
夜間に空いている道路を運転する場合は、車のヘッドライトだけで十分明瞭に見ることができます。反対車線に別の車が現れると、実際にはその場の光量は増加しているはずですが、見にくく感じます。これは、その場の中心付近に非常に強い光が存在することで、眼球の虹彩が縮小して、夜目が効きにくくなるためです。ネットワークビデオカメラの場合もこれと同じで、シーンの1ヵ所に明るい部分が存在するとアイリスが絞られ、夜間の性能が低下します。夜間に優れた画像を撮影するには、光を均一に分散する必要があります。そのため、この目的向けに設計された照明製品を使用してください。
OptimizedIR:
Axis OptimizedIRにより、カメラの視野における均一な照度が実現します。この製品は、各カメラに合わせて特別に調整されています。たとえば、OptimizedIRを搭載したAxis PTZ(パン/チルト/ズーム)カメラでは、カメラのズームインとズームアウトに応じて、その赤外線のビーム幅が自動的に調整されるため、均一な照度が実現します。
OptimizedIRを搭載したカメラは、シーンを均一に照らす機能だけでなく、高品質のLEDと優れた熱管理機能を備えています。
適切なカメラの選択
感度:
感度とは、カメラの光感度を指しています。これにより、基本的に許容可能な画像を生成するために必要となる最小の光量を見積もることができますが、これは相当に主観的なものとなります。ある画像を許容可能と考える人もいれば、論外と考える人もいるためです。
Axis Lightfinderテクノロジーにより、ノイズを排除し、低光量の場所でも詳細な画像を生成することができます。Lightfinderを搭載したカメラなら、低光量の場所でもフルカラーの画像やビデオを撮影することが可能となります。
通常、感度はルクスで表されます。カメラメーカーは、許容可能な写真を実現する上で必要となる最小照度をルクスで示します。しかし、通常、シーン、レンズ、カメラチップなど、この数値がどの場所の最小照度を指しているかは記載されていません。Axisカメラの場合は、この数値は常にシーンの照度を指しています。
往々にしてこの数値は誇張して記載される傾向があり、最小照度とは可視光におけるカメラの性能のみを表すものと考えてください。とは言え、同じ方法で最小照度を主観的に比較しているのであれば、この数値はカメラの感度を測定できる1つの手段となります。
ゼロルクスのカメラというものは存在しません。高品質の画像を生成する上で、多かれ少なかれどのようなカメラにも光が必要です。最も光感度の高いカメラでも、光量が多ければ、より高い信号とより低いノイズの画像が生成されます。この例外として、サーマルカメラが挙げられます。サーマルカメラでは、車両や人物から放射される熱に基づいて画像が生成されるため、完全な暗闇でも撮影が可能となります。一部のカメラ製品では、近赤外線(NIR)エミッターを追加して、ゼロルクスを謳っていますが、こうしたカメラでは色の波長が失われ、白黒ではすべての物体が同じように見えます。
光感度の詳細については、ホワイトペーパー | アクシスコミュニケーションズに掲載されているAxisのホワイトペーパーのLightfinderを参照してください。
適切なレンズの選択
F値:
レンズの F値(絞り値)によって、レンズを通過してカメラチップに到達する光量が決まります。簡単に言えば、F値が低いほど、レンズを通過する光量が多くなります。しかし、レンズのメーカーや品質もレンズを通過する光量に影響します。下表は、ネットワークビデオシステムで使用するレンズの口径によりもたらされる影響が示されています(· = 開放F値 [開放絞り値])。
F値 | 通過する光の割合(%) | センサーで1ルクスの照度を達成するために必要となる光量 |
f/1 · | 20% | 5ルクス |
f/1.2 | 15% | 7.5ルクス |
f/1.4 · | 10% | 10ルクス |
f/1.6 | 7.5% | 13.3ルクス |
f/1.8 | 6.25% | 16ルクス |
f/2 · | 5% | 20ルクス |
f/2.4 | 3.75% | 30ルクス |
f/2.8 · | 2.5% | 40ルクス |
f/4 | 1.25% | 80ルクス |
大半のカメラセンサーでは、レンズのF値が低いほど、センサーにあたる光量が多くなります。ズームレンズの場合は、広角設定でのみ最高のF値を達成することができます。レンズがズームすると、絞りが絞られます。低光量下で良好な画像を生成する上で、これがシーンで必要となる光量に影響します。
透過率:
レンズの効率は、その光の透過率によって測定されます。レンズの素材、厚さ、コーティング特性により、レンズを通過する際に失われる光の量が左右されます。効率の高いレンズでは、通過する光の割合が高くなります。レンズのF値はレンズを通過する光量を表すもので、これが全体的な効率の尺度になるわけではありません。
レンズの透過率は波長によって変化します。たとえば、可視光の95%および850 nmの赤外線の80%が通過するレンズもあれば、可視光の95%および850 nm赤外線の50%が通過するレンズもあります。レンズを選択する際は、使用する光の波長を考慮に入れてください。また、ガラスレンズはプラスチックレンズよりも効率が高い傾向があることにも注意してください。
補正レンズ:
IR補正レンズ:
昼光と夜光の間のフォーカスシフト(絞りによりピントの位置がずれる現象)の問題を排除することを目的として設計されたレンズが、IR補正レンズです。特殊なガラスとコーティング技術を使用して、光の分散を最小限に抑えられるようになっています。フォーカスシフトは、光の波長の違いに起因して発生します。レンズを通過した後、個々の波長により、異なる点に焦点が合わせられます。
色補正レンズ:
太陽などの光源からは、広範囲の照明が生成されます。人間に見える光のスペクトルの範囲が白色光となります。人間の目で認識される画像と同じ画像を正確に生成するには、カメラを通過する光の種類を制御する機能がレンズに備わっている必要があります。安価なレンズの多くでは、通過する色と可視スペクトルが効率的に一致されないため、不正確なカラー画像が生成されます。色補正レンズを利用すれば、可視光のみが通過し、それぞれの色を同じ点に集中させられるため、真の色と鮮明な画像が実現します。
いくつかの例外はあるものの、大半の色補正レンズは赤外線照明での使用には適していません。