パノラマカメラ

7月, 2025

概要

パノラマカメラは、効率的な1台のカメラを設置する形で広い範囲を撮影できます。実質上、1台のカメラが複数のカメラの役割を果たします。カメラの台数が少なくなることによって、設置や操作が容易になり、費用対効果も高くなります。また、カメラの台数が少ないということは、メンテナンスの頻度も少なくすみ、ストレージのニーズも軽減されます。当社のパノラマカメラの製品群には、魚眼カメラ、パノラママルチセンサーカメラ、全指向性カメラ、PTZ (パン/チルト/ズーム) 搭載の全指向性カメラが揃っています。

比較的小型でコンパクトな魚眼カメラは、周囲360°を効率的にとらえる単一センサーを搭載しています。デフォルトの円形「魚眼」ビューは、シーンに応じてさまざまなビューに簡単に歪み補正できます。

パノラママルチセンサーカメラは、複数のイメージセンサーを使用し、高精細かつシームレスな180ºビューを提供します。複数のセンサーとレンズが1台のユニットに統合されています。これらのセンサーからの画像をつなぎ合わせて完全な180°の画像が完成します。

全指向性カメラは、個別に調整可能なカメラヘッドを備え、同時に複数の方向を監視して高精細な分割ビューを提供することができ、優れた柔軟性を実現します。PTZ搭載全指向性カメラは、広範囲を撮影するとともに、選択したエリアの現場検証用として高い価値を持つ、鮮明で詳細なズーム映像を提供します。すべて一本のネットワークケーブルで電源供給と制御が可能です。

使用するパノラマカメラを選択する際は、撮影シーンにおける課題と監視の目的、両方を考慮する必要があります。例えば、人物を特定する必要があるのか、それとも人物の存在の有無を検知するのみで十分なのかなどを検討します。最適なカメラと配置を選択することで、適切な視野で必要な詳細レベルを得られます。多用途性に優れたパノラマカメラは、ビデオ画像の詳細レベルに多様な要件がある無数のシナリオに最適な選択肢となります。

パノラマカメラとは?

パノラマカメラでは180º~360ºの画角を撮影できます。画角はモデルによって異なります。活動の検知、人の流れの追跡、エリア管理の改善など、広範なエリアをカバーする必要がある場合に、複数の固定カメラを設置しなくても、これ1台で効率的に目的を達成することができます。

パノラマカメラには、広角レンズ1つを備える単一センサーカメラと、複数のレンズを備えるマルチセンサーカメラがあります。

    パノラマカメラの選択
  1. 左上:単一センサーカメラ
  2. 右上:マルチセンサーカメラ
  3. 左下:全指向性カメラ
  4. 右下:PTZ (パン/チルト/ズーム) 搭載の全指向性カメラ

パノラマカメラの利点

パノラマカメラを使用すると、複数のカメラの役割を1つにまとめることができます。カメラの台数を少なくすることで、設置や操作が容易になり、費用対効果も高くなります。例えば、ネットワークスイッチのケーブルやポートを減らすことができます。監視システムの管理が容易になります。

使用するパノラマカメラのタイプは、撮影シーンのタイプ、必要な解像度のレベル、カメラから撮影シーンまでの距離など、監視の目的によって異なります。最適なパノラマカメラの選択について詳しくは、第8項を参照してください。

Axisパノラマカメラを使う理由

Axisパノラマカメラには、市場におけるその他のパノラマカメラとは異なる主な特徴があります。

Axisパノラマカメラは、帯域幅とストレージの要件を平均50%以上削減しながら高画質を維持する、Axis Zipstream テクノロジーをサポートしています。画像内の重要な詳細部分をしっかり確認できると同時に、不要なデータは削除するアルゴリズムを使用しています。

これらのカメラは、高画質の映像を提供しながら、消費電力を最小限に抑えるように設計されています。

さらに、電力効率の高い赤外線LED投光器とAxis OptimizedIRテクノロジーにより、特定のパノラマカメラは完全な暗闇でも動作します。そのため、追加照明の必要性が低減します。

魚眼カメラ

魚眼カメラは、1つの広角レンズを備える単一センサーカメラです。監視エリアを360°の円形「魚眼」ビューで見ることができます。カメラは小型で目立たず、お求めやすい価格で、天井または壁面に簡単に設置できます。天井に取り付けると、部屋全体を見渡すことができ、小さな小売店などの死角を効果的になくすことができます。壁に取り付けると、カメラは人物の顔を確認するのにより適した視野角で、有用なオーバービューをとらえることができます。

    単一センサーカメラからの円形表示。
  • 左: カメラを天井に設置すると、部屋全体の完全なオーバービューを得ることができます。
  • 右: カメラを壁面に設置すると、人物の顔を確認するのに適した角度でオーバービューを得ることができます。
  • 円形表示は、シーンに適合するように異なるビュー (パノラマビュー、ダブルパノラマビュー、4つの異なるカメラをシミュレートする4分割表示など) に簡単に変換または歪み補正することができます。

    円形表示では、エリア内の動きを簡単に追跡できる、完全なオーバービューを得ることができます。一方、歪み補正ビューでは、より自然な映像を得ることができ、多くのシナリオに適しています。また、歪み補正ビューは、円形表示のたる型歪曲を生じさせません。

    ACSや他のVMSでは、録画のストリームにデジタルパン、チルト、ズームを使用することが可能です。つまり、円形表示で録画して、シーンの完全なオーバービューを得ることができます。その後、VMSの歪み補正機能を使用して、録画のストリームをパン、チルト、ズームすることができます。

      選択した歪み補正領域を示すオーバーレイ付きのオリジナル画像と、それに対応する歪み補正されたパノラマビュー。
      オリジナル画像と、それに対応する歪み補正されたダブルパノラマビュー。
      オリジナル画像と、それに対応する歪み補正された4分割表示。

      歪み補正してコリドールフォーマットを選択することにより、通路下の円形オーバービュー (左) を2つの有用な画像 (右) に変換できます。

    単一センサーパノラマカメラでは、最大4つの個別にトリミングされたビュー領域で、デジタル的にパン、チルト、ズームすることもできます。これらの設定は4分割表示に反映されます。

    一部の単一センサーのパノラマカメラは立体射影レンズ (stereographic lens) を使用しています。立体射影レンズは、通常の広角レンズよりもセンサーの広い領域にレンズの端を投影します。これにより、立体射影レンズ は、円形の視野の中心部よりも周辺部の方が解像度が高くなり、周辺の物体の形状をよりよく保つことができます。カメラが天井に取り付けられている場合は、この機能が特に有用となります。

    マルチセンサーカメラ

    マルチセンサーパノラマカメラは、1つのケーシングに複数のセンサーとレンズを搭載しています。センサーからの個別の映像はわずかに重なり合っており、まとめて1つの詳細な180°パノラマオーバービューになるよう配置されます。

      4つのセンサーを備えたマルチセンサーカメラによる180°表示。

    パノラママルチセンサーカメラの水平補正機能は、傾きを補正し、歪みを取り除いて水平線をまっすぐにすることで、まっすぐな画像を生成します。詳しくは、ホワイトペーパー「水平補正」をご参照ください。

      水平補正機能付きマルチセンサーカメラによる表示

    マルチセンサーカメラは、180ºの水平視野角を提供しますが、さまざまな垂直視野角のものがあります。

      壁面用マルチセンサーカメラの視野。4つのセンサーを備えたカメラでは、180ºの水平視野角と90ºの垂直視野角をとらえることができます。

    90ºの垂直視野角を備えたカメラでは、完全な範囲をとらえることができます。垂直方向の視野が低くても、同じ高解像度センサーを搭載したカメラの場合は、より小さな視野角で、より高いピクセル密度を実現することができます。これらの画像は異なる垂直視野によるカメラの表示です。

      90°の垂直視野角による完全な撮影範囲。

      多くの場合、垂直視野角が小さいほど、高いピクセル密度で必要な監視領域を撮影することができます。

    マルチセンサーカメラでは、個別の画像が「スティッチング」プロセスによって1つのまとまった画像に変換されます。すべてのセンサーに、共通のホワイトバランス設定と露出同期を使用し、個々の画像の位置合わせをして、一貫性のある1つの画像を形成します。これは、球形や円筒形などの湾曲した共通の表面に画像を投影することによって行われます。この投影は、たる型歪曲など、元の画像に存在する画像の歪みも補正します。

    単一センサーカメラと同様、マルチセンサーパノラマカメラは、死角のない視野全体をとらえます。複数のセンサーを搭載していますが、VMSでは1つのカメラのように動作し、1つのIPアドレスしか使用しません。

    最新のマルチセンサーパノラマカメラでは、個別に切り取った複数のビューエリアで、デジタルでパン、チルト、ズームすることができます。便利なプリセットポジションを使用して、さまざまなビューエリアに合わせてカメラを簡単に調整できます。一部のマルチセンサーカメラは、ワンクリックPTZ機能やレーダーペアリングによってPTZカメラやレーダーと密に連携します。

    マルチセンサーカメラは、画像の詳細部分を監視する必要のある、駅や空港、街の広場などの広大なエリアでの監視に特に役立ちます。マルチセンサーテクノロジーは、重要なインフラ施設の周辺監視にも理想的です。

    全指向性カメラ

    360°の監視領域を実現する全指向性カメラは、1つのケーシングに4つのカメラヘッドを備え、4方向を同時に監視することができます。このカメラは非常に高い柔軟性を備え、各バリフォーカルレンズで、全体監視に適した広い視野、またはより詳細な情報が必要とされるズーム表示に対する狭い視野といった、特定の監視要件に合わせて視野を最適化できます。それぞれのカメラヘッドはチルトすることができ、円形トラックに沿って±90°スライドさせ、最適な配置を実現することができます。

      駅に配置された全指向性カメラの4つのビュー。この例では、2つのバリフォーカルレンズがズーム表示を提供しています。

    センサーを等間隔に配置した標準のセンサー配置では、360°の4分割表示が得られます。

      可動式センサーを等間隔に配置した全指向性カメラは、通路の交差地点などで完全なオーバービューを提供します。

    可動式センサーを異なる位置に配置することで、設置場所ごとにセンサーの使用を最適化することができます。例えば、建物の外壁にカメラを設置する場合、3つのセンサーで270°の範囲をカバーし、4つ目のセンサーは、単に壁に向けるのではなく、下方やより注意が必要な他のエリアに向けることができます。例えば、カメラの真下にズームインすることも可能です。

      外壁の角に取り付けるために最適化した場合の全指向性カメラ。3つのセンサーで必要な270°の範囲をカバーし、4番目のセンサーを下に向けてズームインすることで、カメラの真下の解像度が向上します。

    一部の全指向性カメラでは、各カメラヘッドを90º回転させることで、コリドールフォーマットをサポートします。これにより、長い廊下や道路、また他の垂直方向のシーンを簡単にキャプチャーすることが可能となります。

      全指向性カメラからのコリドールフォーマットビュー。この例では、画像が左右に並べて表示されています。4分割表示オプションも利用可能です。

    屋内か屋外かに関わらず、全指向性カメラは広いエリア、建物の外側の角、廊下や道路の交差点に最適です。学校や小売店などの場所に特に適しています。

    PTZ(パン/チルト/ズーム)を搭載した全指向性カメラ

    PTZ搭載全指向性カメラは、360°の全指向性カメラとモーター駆動のPTZカメラを1つのユニットとして組み合わせたものです。全指向性カメラは全体を見渡し、PTZカメラはフォレンジックな価値のあるシャープで詳細なクローズアップ映像を提供します。すべての電源と制御は1本のネットワークケーブルで行います。

    このカメラの組み合わせは、効果的な追跡システムとして使用できます。全指向性カメラのヘッドが各方向を常に監視し、イベントを検出すると、PTZが自動的に追跡し、重要なオブジェクトや人物にズームインします。

      PTZ (パン/チルト/ズーム) 搭載の全指向性カメラを使用した駐車場監視。
  • 左:360°を4分割表示
  • 右: PTZズームイン表示
  • AxisのPTZ搭載全指向性カメラは、カメラヘッドを柔軟にチルトすることができます。レンズを交換できるため、1つまたは複数のカメラヘッドの標準レンズを交換して、重要エリアでより高いピクセル密度を実現することも可能です。

    PTZ搭載全指向性カメラは、街の広場や交差点などの都市監視のオーバービューを監視できるだけでなく、空港や政府機関の建物などの高セキュリティエリアでフォレンジックな詳細を確保することができます。このカメラの機能と能力を最大限に活用するには、オペレーターによる能動的な視聴が必要になります。これは特にPTZ機能に当てはまります。

    適切なパノラマカメラの選択

    使用するパノラマカメラを選ぶ際は、カメラが撮影シーンと目的にあった詳細レベルを提供できるか確認する必要があります。例えば、人物を特定する必要があるのか、それとも人物の存在の有無を検知するのみで十分なのかなどを検討します。カメラと重要な監視対象との間の距離はどのくらいかなどを検討します。

    詳細レベルは、映像内の被写体のピクセル密度によって異なります。1メートルあたりまたは1フィートあたりのピクセル数は、どのくらい必要でしょうか?ピクセル密度は、センサーの解像度とレンズ、およびカメラから監視対象物までの距離の影響を受けます。Axisでは、存在検出には25 px/m(8 px/ft)、存在する人物の数とその特徴の検出には63 px/m(19 px/ft)、過去に撮影した人物の認識を可能にするためには125 px/m(38 px/ft)、人物の識別には250 px/m(76 px/ft)を推奨しています。

    監視の目的に応じた必要なピクセル密度。
    監視の目的必要なピクセル密度

    検知
    人物が存在するかどうかを判断できます。

    25 px/m (8 px/ft)

    観察
    存在する人物の数を判断し、衣服などの細部をとらえることができます。

    63ピクセル/m (19 ピクセル/ft)

    認識
    撮影した個人が過去に撮影した人物と同一人物かどうかを判断することができます。

    125 px/m (38 px/ft)

    識別
    個人を識別することができます。

    250 px/m (76 px/ft)

    単一センサーのパノラマカメラは、360度の完全な視野を提供し、検知や認識を目的とした全体監視に適しています。このカメラは非常に広い範囲をカバーするため、認識や識別に必要なピクセル密度は、対象物がカメラに近ければ達成することができます。

    マルチセンサーカメラは、すべてのレンズを組み合わせて180度の視野で高いピクセル密度を実現します。視野が広いだけでなく、カメラから遠く離れていても、認識や識別が可能です。

    全指向性カメラは、多数の選択肢を提供します。標準レンズやバリフォーカルレンズを使用したワイドビューモードでは、主に広範囲の検知が可能なピクセル密度を実現します。PTZ (パン/チルト/ズーム) 搭載の全指向性カメラに特殊レンズを使用した場合は、各センサーが非常に高いピクセル密度を持つようになり、限られた視野における識別が可能となります。2つのビューモードを組み合わせて、検知レベルの360°オーバービューを維持しながら、限られた領域で識別レベルのピクセル密度を実現することもできます。PTZを備えた全指向性カメラでは、PTZカメラの視野内で最大数百メートルまでの優れた識別能力を発揮します。