監視におけるプライバシー

12月, 2023

概要

現地、地域、国などにより、プライバシーに関する法規制や規則が制定されています。監視ソリューションを使用する際は、個人識別情報(PII)収集に関する制限が設けられている法規制・規則に準拠する必要があります。

以下のように、監視上のプライバシー保護に役立つツールやテクノロジーを利用することができます。

  • 動的マスキングにより、ビデオに映っている人物や車両をリアルタイムで匿名化することが可能となります。分析アプリケーション「AXIS Live Privacy Shield」を活用することで、AIベースの動的マスキングにより、特定のカメラで人物やナンバープレートを検知してマスキングすることができます。また、互換性のあるカメラすべてで、モーションベースの動的マスキングを適用して、すべての移動物体をマスキングすることも可能となります。

  • 静的マスキングにより、すべてのライブビデオと録画ビデオに恒久的なマスキングを適用して、選択した領域を隠すことができます。この機能は、Axisネットワークビデオ製品に標準機能として備わっています。これは、撮影・監視禁止エリアが設けられている屋内外の場所に最適です。

  • ビデオ管理ソフトウェア(VMS)に備わっているビデオ編集機能により、映像に映っている調査対象者以外のプライバシーを保護しながら、フォレンジック調査などを目的としてビデオをエクスポートすることができます。

  • 非視覚型の監視

    サーマルカメラでは、物体から放射される熱に基づいて画像が生成されます。形状のみがキャプチャーされるため、個人に関する詳細は含まれません。

    監視向けレーダーを活用することで、個人を特定できる詳細を生成することなく、検知を実施することができます。

  • ビデオや音声に基づく分析機能を使用すれば、対象エリアを監視し、監視が必要と考えらえる状況が発生した際にアクションをトリガーすることが可能となります。分析機能を活用すれば、録画を保存することなく、ダッシュボードでデータを視覚化することもできます。

プライバシー規制を遵守する責任は、監視システムの所有者にあります。

はじめに

監視映像に関するプライバシー保護を実現する方法には、さまざまな選択肢があります。その数例として、カメラビューの領域をブロックする、映っている人物をマスキングする、監視映像に非視覚型のテクノロジーを使用するといった方法が挙げられます。

本ホワイトペーパーでは、監視ビデオのキャプチャー、録画、表示、エクスポートに関連して発生し得るプライバシーの問題に対応できる主要なツールとテクノロジーをご紹介します。

背景

監視により、安全性とセキュリティを向上させることができます。こうした監視のメリットに対する理解が市民の間で高まっていることから、公共の場における監視が従来よりも受け入れられるようになってきました。監視業界では常にプライバシーが重要視されてきましたが、欧州のGDPR(EU一般データ保護規則)や米国のFISMA(連邦情報セキュリティ管理法)などが制定されたことで、一般市民の権利に対する意識も高まっています。

公共の場か私有地かを問わず、地方自治体や組合により、映像監視とプライバシーに関する法規制や規則が制定されています。こうした規制や規則は、人のプライバシー権を尊重することで、人権を保護することを目的としています。そのため、ビデオデータのキャプチャー、保存、共有に関しては、導入されている制御手段に従って、こうした規制・規則に準拠する必要があります。

適用されるすべての地域的・国際的なプライバシー規制に確実に準拠して監視を行うことは、常に監視システム所有者の責任となります。しかし、メーカーやベンダーも、顧客に監視のベストプラクティスに関する情報を継続的に伝達することで、この準拠の一助を担うことができます。これには、収集データを正しく倫理的な方法で使用する方法、また必要な措置を講じて規制を遵守する方法などが含まれます。

ビデオのマスキング

さまざまな手法を用いて、監視ビデオに映っている特定のエリアを隠すこと、また人物を匿名化することができます。

すべてのタイプのマスキング機能で、単色とモザイク(ピクセル)のマスキングのいずれかを選択することができます。単色のマスキングを活用することで、プライバシーを最大限に保護しながら、被写体の動きを確認することができます。モザイクマスキングを使用すると、移動する物体や人物が非常に低解像度で表示されます。これにより、映っている人物・物体の実際の色を確認できるため、形状をより適切に把握できるようになります。

    単色のマスキングとモザイクのマスキング

動的マスキング

このテクノロジーを活用することで、ビデオ分析機能により、映っている人物が自動的に匿名化されます。対象エリアのアクションや動きを監視する際、分析機能により、リアルタイムでマスキングが適用されます。

エッジベースの分析アプリケーション「AXIS Live Privacy Shield」により、可視光カメラでAIベースの動的マスキングが実現します。

AIベースのマスキング

これは、ディープラーニングプロセッシングユニット(DLPU)を搭載した一部のカメラでサポートされています。AIベースのマスキングの場合は、アプリケーションでライブビデオが分析され、人物やナンバープレートが検知されます。移動している人物や静止している人物、顔、ナンバープレートのいずれかをマスキングすることができます。マスキング方法を反転して、背景をマスキングすることも可能です。

    AXIS Live Privacy Shieldによる人物のマスキングと背景のマスキング

AXIS Live Privacy Shieldでは、1秒あたり最大10フレームにAIベースの動的マスキングが適用されます。これは、製造施設、病院、老人ホーム、ホテル、学校、オフィス、店舗など、屋内外で近距離を監視する場合に適しています。

AIベースのマスキングにより、長時間静止している人物にもマスキングがかけられます。

マスキング映像のストリームとマスキングされていない映像のストリーム

AXIS Live Privacy Shieldによるマスキングは永続的なものです。つまり録画後にマスキングをビデオから削除できないということです。しかし、マスキング映像をストリーミングするのと同時に、マスキングされていない映像を別のストリームで配信することをアプリケーションで選択することができます。VMSによっては、ストリームのアクセス権を構成できる場合があります。

これにより、許可された人物以外は、マスキングされていない映像を表示できなくなります。調査上、映像に映っている人物の身元を確認することが重要である場合は、当該情報を取得する方法があります。パラレルストリーミングにより、個人のプライバシー権を保護できるだけでなく、特に公共空間において、監視ビデオ所有者は人々の安全を守るという自身の義務を全うすることが可能となります。

静的マスキング

静的プライバシーマスキングは、監視禁止エリアが設けられている屋内外の場所に最適です。これにより、ライブビデオと録画ビデオに恒久的なマスキング(不透明またはモザイク)を適用できるため、選択したエリアを隠すことができます。モザイクマスキングを使用すると、そのエリアが非常に低解像度で表示されるため、個人を特定できる詳細を隠した状態で、活動や状況を確認することが可能となります。

Axisネットワークビデオ製品には、静的プライバシーマスキングが標準機能として備わっています。これは、AXIS Live Privacy Shieldの動的マスキングと組み合わせて使用することができます。

    静的プライバシーマスキングを用いて、映っている建物をポリゴンモザイクで恒久的に隠した監視映像

意図していないエリアが偶発的に監視映像に映るのを防ぐには、長距離と広範囲をカバーできるPTZ(パン/チルト/ズーム)カメラが有用となります。PTZカメラなら、静的プライバシーマスキングがカメラの座標に固定されます。そのため、視野が変わっても、シーンの同じエリアにマスキングが適用されます。

ビデオの編集

録画を共有する場合は、調査対象者以外のプライバシー保護に関連する規制・規則を遵守する必要があります。  AXIS Camera Station のビデオ編集ツールを使用することで、調査に関係のない個人やエリアの映像を簡単にマスキングすることができます。たとえば、特定の移動物体のみ、または調査対象者以外のすべての静止物体や移動物体をマスキングすることが可能となります。

ビデオ編集は、ライブビデオでは使用できないことにご注意ください。

非視覚型の監視

場合によっては、普通のカメラの代わりに非視覚型の検知器を使用することで、最も確実に監視映像でプライバシーを保護することができます。こうしたソリューションは、天候や照明条件を問わず良好に機能します。

サーマル画像

サーマルカメラでは、可視光による物ではなく、人物や物体の熱が検知されます。つまり、カメラの「視野」内に存在する人物や物体から放射される熱に基づいて、画像が生成されるわけです。これにより、個人情報を収集せずに、リモートモニタリングが可能となります。移動しているか静止しているかに関わらず、形状のみがキャプチャーされます。

動体検知分析機能が組み込まれているサーマルカメラは、プライバシー要件の高い環境で非常に有益に働きます。医療施設や高齢者施設といった場所でサーマルカメラを活用することで、個人のプライバシーを保護しながら、予期せぬ現象が発生した場合にスタッフに迅速に警告を発することができます。たとえば、患者が転倒した場合や医療援助が必要な状況が発生した場合に、スタッフが迅速に対応することが可能となります。

    サーマルカメラにより、個人識別情報を捉えることなくリモートモニタリングが実現

レーダー

ビデオ技術の代わりにレーダー技術を使用するレーダーを活用することで、完全にプライバシーを保護しながら、監視を実施することができます。

レーダーでは、電波が送信され、検知範囲内に存在する物体から反射した同じ電波を受信することで分析機能が働きます。分析機能を搭載したレーダー技術を利用すれば、動きを検知して、個人データを収集することなく、アラームを発信することが可能となります。これは、広い空間で侵入者を検知する場合に最適です。レーダーから自動的にセキュリティ担当者に警告が発信され、スピーカーが作動するために、優れた抑止効果があります。

分析機能

ビデオ分析機能と音声分析機能を活用することで、対象範囲をリアルタイムで監視し、措置が必要と考えらえる状況が発生した際に事態に対応することができます。分析機能により生成されるメタデータを使用して、ビデオストリームや音声ストリームにアクセスすることなく、また録画を保存することなく、対象範囲の状況を把握することが可能となります。データはスプレッドシートとして出力すること、またダッシュボードで視覚化することができます。これにより、リアルタイムでアラームをトリガーすることも可能です。これにより、個人データに関するプライバシー上の懸念に対処することができます。音声分析機能を活用すれば、人の叫び声やガラスの割れる音など、マイクで異常な音が検知された場合にアラームをトリガーすることが可能となります。

データ保護

データ保護は、本ホワイトぺーバーの項目には含まれていません。しかし、プライバシー保護という点では、映像監視データの処理方法も重要な側面となります。詳細については、www.axis.com/about-axis/cybersecurityを参照してください。