音質を重視した設計
概要
Axisスピーカーは、正確なコンポーネントの選択、体系的な試験、精密なチューニングという厳格なプロセスに従って設計されています。設計段階全体を通じて、ハードウェア開発とソフトウェア開発には密接な関係があります。スピーカーを音声システムに統合することで、ユーザーはデバイスのリモートヘルスモニタリングを含む、堅牢性とサイバーセキュリティを備えたソリューションを活用できます。
スピーカーを設計する際、当社では次のような多くの要素を慎重に評価します。
ドライバー特性。ドライバーは電気音声信号を音波に変換する電気機械部品です。重要な仕様は周波数特性、歪み、電力処理能力に関連しています。
適切な指向角度を実現するハードウェア設計。
適切な音響特性を実現するためのデジタル信号処理。これは、ダイナミックレンジコントロールとラウドネス補正によって、スピーカーのソフトウェアで最適化されます。
堅牢な製品を実現する機械設計。これには、プラスチック、電子回路、ドライバーコンポーネントを適宜選択する必要があります。
ドライバーに完全に適合した低消費電力アンプを選択することで、消費電力を抑えることができます。
製品の設置を容易にするために配慮された設計。
研究開発ラボでの音響測定は、重要なコンポーネントの微調整において重要な役割を果たします。客観的な測定を補完するために、厳格な科学基準に従って知覚的なリスニングテストも実施し、音質の主観的な側面を評価しています。開発の間、Axis製品はハードウェア品質試験を含め、社内の試験環境で1年以上を費やします。
はじめに
Axisネットワーク音声は、設定とメンテナンスが非常に簡単なシステムによる鮮明かつ明瞭なサウンドを提供します。高品質なハードウェアとあらかじめ設定された組み込みのデジタル信号処理により、お客様のユースケースに最適化されたサウンドを実現します。
このホワイトペーパーでは、当社のスピーカーの優れた音声品質を確保するためのAxisの取り組みについて説明します。また、当社の厳格な設計プロセスとコンポーネントの選択、徹底した試験、精密なソフトウェアチューニングについても説明します。さらに、音質、ハードウェアの品質、システムの品質における相互作用に焦点を当てています。
ネットワーク音声の利点
Axisネットワーク音声を使用すると、スピーカーをIPネットワークに接続し、メインユニットなしで分散型音声システムを構築できます。このシステムは柔軟性に優れ、必要に応じて簡単に拡張することができます。さらに、各スピーカーはスタンドアロンのスマート音声ユニットとして機能します。当社の多目的スピーカーは、ニーズの変化に応じてさまざまな方法で活用できます。
アクティブスピーカー
Axisのスピーカーはアンプを内蔵したアクティブスピーカーで、デジタル信号処理 (DSP) 用ソフトウェアを搭載しています。当社の設計プロセスの1つとして、想定している使用ケースに合わせてサウンドを調整し、音声コンテンツに関係なく音声が適切に聞こえるようにすることがあります。DSPの事前設定は最先端を誇る当社の研究開発施設で行われ、トーンバランス (さまざまな周波数帯域の再現方法) やダイナミックレンジの調整が含まれます。これらの設定はスピーカーの出力レベルに応じて動的にも調整されます。これにより、リスナーがアナウンスをクリアに聞き取ることができる、優れた明瞭度を実現する製品を提供します。
- 左:ネットワークスピーカーは、すべてがそろった音声システムです。
- 右:従来のスピーカーには、追加のハードウェアが必要です。
Axisスピーカーを使用した大規模なシステムでは、ミキシングコンソール、アンプ、イコライザー、コンプレッサーを備えたコントロールルームは必要ありません。これらの機能はすべてスピーカーに統合されています。従来の音声システムに比べて必要な音声機器の数が少ないため、必要なスペースやメンテナンスを最小限に抑えることができます。信号がスピーカーに到達するまでに複数のデバイスを通過する必要がないため、サウンドの信頼性も向上します。また、システムの設定、調整、試験にプログラマーやサウンドエンジニアを必要としません。すべてのコンポーネントがすでに互いに調整されているため、問題なくクリアなサウンドが得られます。
さらに、当社のマルチドライバースピーカーのほとんどはアクティブクロスオーバーフィルターを採用しており、より精度と詳細度に優れた音声信号の再現を実現します。音声信号は増幅前に分割されます。つまり、内蔵アンプを最適化して、ドライバーユニットに完全に適合させることができます。また、非効率性をもたらし信号品質を低下させる可能性があるパッシブフィルターとは異なり、当社のアクティブフィルターはクリーンかつ正確な信号伝達を保証し、ダイナミクスの向上、歪みの低減、より詳細で魅力的なリスニング体験を実現します。
デジタル音声
音声信号は、録音ソース素材から内蔵アンプとスピーカードライバー端子の接続部分まで、すべてデジタルです。デジタル音声は、電気的なノイズや干渉に対する耐性を持つため、放射性電磁波によって歪みが発生することがありません。さらに、デジタル信号は長いケーブル配線で発生する可能性のあるキャパシタンスやインダクタンスなどの寄生効果によるエネルギー損失にも耐性があります。したがって、信号はケーブルの長さに影響されることなく、強力かつ完全な状態で維持されるため、必要な場所にスピーカーを自由に配置することができます。
Power over Ethernet
Axisスピーカーは、Power over Ethernet (PoE) を使用して標準ネットワークに接続し、電力を受け取りデータ通信を行います。電源ケーブルや専用の音声ケーブルは必要ありません。
リモートヘルスモニタリング
当社のスピーカーは、さまざまな用途で多様な目的に使用できます。緊急警告や犯罪抑止などの重要な用途では、スピーカーの信頼性が不可欠です。この場合、最適な音質とは、単にバランスの取れたサウンドを提供するだけでなく、スピーカーとシステム全体が適切に機能することを意味します。Axisスピーカーのリモートヘルスモニタリングと内蔵テスト機能により、すべてのデバイスが完全に機能し、ネットワークに接続され、適切なサウンドが再生されていることを常に把握することができます。大規模かつ重要なシステムでスピーカーを使用し、現場に行って確認することなく、確実に動作していることを確認できます。
サイバーセキュリティ
ネットワーク上のデータとシステムを保護するには、ネットワークに接続されたデバイスとソフトウェアサービスをサイバー脅威から保護することが重要です。Axisは、製品のサイバーセキュリティを確保することに取り組んでいます。当社の音声デバイスはカメラと同じオペレーティングシステムを使用しており、監視システムに不可欠な高水準のネットワークデバイスの設計における40年の経験に基づいています。Axisの製品、サービス、テクノロジー、ツールは、ベストプラクティスを反映し、サポートしています。詳しくは、axis.com/cybersecurityをご覧ください。
音質はシステムと製品の品質に依存する
Axis音声製品の開発プロセスでは、全体を通じて品質が重視されます。当社は新規製品に最適な仕様の設定から始まり、完成品の徹底的な試験と評価に至るまで、品質に関するあらゆる側面に細心の注意を払っています。当社が使用する下請けサプライヤーも同様に、厳格な品質要件を遵守する必要があります。
Axisの品質へのこだわりは、個々の製品の開発にとどまりません。各デバイスを監視するスマートシステムに個々の製品を統合することで、各デバイスが確実に接続され、正常に機能し続けるようにしています。システムの堅牢性は音質にとって極めて重要です。スピーカーがネットワークから切断されると、高音質であっても動作できなくなります。堅牢なシステムでは、デバイスが切断されたり損傷したりした場合に、オペレーターに通知が送信されます。
製品品質のさまざまな側面が音質に直接影響します。例えば、スピーカーが幅広い温度や環境で動作できるようにすることは製品設計の一環ですが、それが最終的には音声の性能を確保することにつながります。優れた製品設計は、スピーカーのドライバーや電子機器を保護し、機能を低下させることなく維持することができます。
優れたサウンドを実現する製品開発
Axisのネットワーク音声製品の仕様と開発は、企画段階から完成品に至るまで社内で行われています。当社のエンジニアは、ハードウェアとソフトウェアが完璧に適合するように開発を行っています。これは、Axisによる研究開発への大規模な投資によって実現しています。
設計プロセスは、再生するコンテンツのタイプ、音響環境、製品が使用される状況を考慮し、お客様のニーズを理解することから始まります。この包括的なアプローチにより、特定の要件を満たすカスタマイズされたソリューションの作成が可能になります。
お客様のニーズを明確に理解した上で、高度なモデリングとシミュレーション技術を駆使してコンセプト設計の開発を進めます。当社のチームは、音響設計を慎重に選択し、製品独自の特性に合わせて最適化されたスピーカードライバーと組み合わせます。製品の内部と外部の形状はどちらも、最終的な音質を決定する上で重要な役割を果たします。
コンセプトが確定したら、製図段階からプロトタイプ作成段階に移行します。最初の手作りのユニットから大量生産ラインの認定まで、すべてのプロトタイプは、設計と組み立ての完全性を確保するために、客観的な測定による厳格な評価を受けます。
検証され再現可能な設計が整った状態で、デジタル信号処理を活用して製品の可能性を最大限に引き出します。

品質に影響を与える要素を理解する
スピーカーの最終的な音質には、さまざまな要素が影響します。スピーカーを設計し、そのユースケースに合わせて音を調整することは複雑なプロセスで、次のような多くの要素が慎重に評価されます。
ドライバー特性.ドライバーは、電気音声信号を音波に変換する繊細な電気機械部品です。ドライバーの重要な仕様は、周波数特性、歪み、電力処理能力に関連しています。
指向角度。 音の周囲への伝わり方は、ハードウェア設計の選択によって大きく左右されます。使用目的に応じて、広い指向角度が必要な業務放送向けの広指向性設計と、集中した音が求められる狭指向性ソリューションのどちらを選択するかが決まります。
最大音圧レベル。これは、人間の聴覚しきい値20μPaを基準として、dBSPLで測定されます。目標の最大音圧レベルを選択する際には、リスナーの位置と周囲のノイズ条件を考慮します。
音響特性。選択したハードウェアの機能と音響設計に基づき、(デジタル信号処理、DSPを通じて) ソフトウェア機能を調整し、スピーカーの性能を最大限に引き出しています。
消費電力。製品のPoE分類では、許容消費電力に厳しい制限が課せられます。当社のスピーカーは、ドライブユニットに完璧に適合した低消費電力のクラスDアンプによって消費電力を抑えます。
機械設計。Axisのスピーカーは、堅牢性に関する非常に厳しい要件に基づいて開発されています。スピーカーのIP等級とIK等級は、その製品の防水性、防塵性、耐衝撃性を反映しています。材料を選択する際は、環境面も考慮しています。当社の製品は、廃棄物や環境への影響を最小限に抑えながら、過酷な条件にも耐えられる必要があります。
動作温度。 ほとんどのAxisスピーカーは、極端な温度に耐えられるよう設計されています。それに応じて、プラスチックや電子回路に加え、ボイスコイルやサスペンションシステム、磁石など、ドライバーに不可欠なコンポーネントを選択しています。
外観のデザイン。Axisは、製品デザインにおいて数々の賞を受賞しており、非常に誇りに思っています。スピーカーが視覚的に環境の調和を乱すことは避けたいため、ハードウェアの美観は音声システムの使用体験に影響を与えます。しかし、外観のデザインは美しさだけを追求するものではありません。クリックイン式の取り付けオプションや、デバイスが正常に接続されると点灯するLEDなど、配慮の行き届いた設計は、設置を簡単、安全、かつ効率的にすることで製品の品質にも影響します。
サウンドの事前設定
設計段階全体を通じて、ハードウェア開発とソフトウェア開発には密接な関係があります。ハードウェアの設計が成熟するにつれて、ソフトウェアの最適化を通じて製品の性能を微調整することに重点を置き、最適な結果を得るための仕上げを行います。デジタル信号処理を使用して、音声の明瞭度を向上させるだけでなく、音楽の最適化も行います。スピーカーには次のような音声を最適化するための方法が組み込まれているため、どのような環境でも音質が保証されます。
ダイナミックレンジコントロール。 音声信号には多くの場合、音量にピークや谷がありますが、この機能はこれらのバランスをとることで、リスナーにとって理想的な音量で音が伝送されるようにします。
ラウドネス補正。 音量が低い場合、一部の周波数は人の耳では知覚されにくくなります。ラウドネス補正機能は、リスナーが聞き逃すことがないようにこれらの周波数をブーストします。Axisスピーカーではこれが自動的に行われ、特に音楽を使用する場合に適しています。
周波数の最適化。 Axisスピーカーのエッジ処理により、周波数が最適化され、どのスピーカーも同じ特性を持つようになります。そのため、手動によるチューニングや設定なしで組み合わせることが可能で、Axisスピーカーを追加するだけでシステムを容易に拡張することができます。
最適化設定に加えて、音声プロファイルによる追加の処理レイヤーも提供しています。これにより、セキュリティメッセージ、安全警告、BGMなど、その時々のシステムの使用目的に応じて最適な設定を選択することができます。
徹底的な試験
音声品質と機械的品質を確認するため、当社では開発プロセスを通じてプロトタイプを継続的にテストしています。
音質試験
最先端を誇る当社の研究開発ラボでは、音響測定がパネル、メッシュ、導波管などの重要なコンポーネントを微調整し、最適なパフォーマンスを実現するために重要な役割を果たしています。業界をリードするツールと当社独自の方法論を組み合わせることで、パフォーマンスを最適化し、イノベーションを推進することができます。

客観的な測定を補完するために、当社では知覚的なリスニングテストを実施し、音質の主観的な側面を評価します。フロイド・トゥールやショーン・オリーブなどの科学者の先駆的な研究にヒントを得て、当社のリスニングテストは厳格な科学的基準に準拠し、偏見を排除して再現性を確保するためにブラインドテスト方法を採用しています。訓練を受けた多様なリスナーのグループが複数の設計反復を評価し、設計の決定に役立つ貴重なフィードバックを提供します。また、同じタイプのスピーカーを複数組み合わせたシステム全体をテストし、一緒に使用した場合の音質が良好であることを確認します。
ハードウェア品質試験
開発中、Axis製品は1年以上にわたって自社の試験環境に置かれ、機械的な摩耗や損傷、水や湿気、汚損・破壊行為、極端な温度、振動などに耐えられるかどうかが試験されます。これらの製品は社外の規格に対する認証を取得していますが、Axisの試験は必要とされる認証基準よりも高いレベルで行われます。
当社では、設置後に製品の品質が低下しないことを確認するために、高度加速寿命試験 (HALT) も実施しています。これは、製品がその寿命にわたりさらされる可能性のあるストレス条件をシミュレートした過酷な条件に製品をさらすことで製品の信頼性をテストすることを意味し、実際の使用で予想されるよりも厳しい条件下で行われます。HALTは設計上の問題や潜在的な弱点を特定し、製品をさらに改良して品質、信頼性、寿命を向上させるのに役立ちます。ハードウェアの品質と試験の詳細については、whitepapers.axis.com/tested-without-compromiseをご覧ください。