AXIS TU8003 90 W Connectivity Midspanの動作温度範囲の拡張

3月, 2024

概要

ミッドスパンをAXIS T91G61 Wall Mountまたは同様のマウント内に配置すると、AXIS TU800390 W Connectivity Midspanの指定動作温度範囲が拡張されます。

製品動作温度範囲

AXIS TU8003

-25°C60°C(-13°F140°F

AXIS TU8003AXIS T91G61内に配置した場合)

-50°C50°C(-58°F122°F

大半のAxis屋外対応PTZカメラと同じ程度まで範囲が拡張されます。

当社の温度試験では、下限と上限の両方において、マウント内部の温度がミッドスパンの許容レベル内に収まっていることが実証されました。

周囲温度が非常に低い場合(-50°C)も、カメラの電力消費によってミッドスパンで十分な熱出力が生成されるため、マウント内でミッドスパンが十分な温度で維持されます。

周囲温度が非常に高い場合(50°C)は、カメラはヒーターを使用しているときほどの電力をミッドスパンから必要としません。そのため、ミッドスパンからの熱出力は低温時よりも低くなります。AXIS T91G61 Wall Mountの金属により、外気への熱伝達が促進されます。

はじめに

セキュリティカメラは世界各地で活用されています。そのため、カメラは、灼熱の中東地域から極寒のアラスカに至るまで、非常に広範な温度範囲に対応できるものでなければなりません。また、電柱や建物の上に設置されることが多いため、強風や日光に対する耐性も必要です。

多くの場合、カメラはマウントとミッドスパンと共に取り付けられます。カメラとミッドスパンには、動作温度範囲が指定されています。

本ホワイトペーパーでは、AXIS TU8003 90 W Connectivity MidspanをAXIS T91G61 Wall Mount内に配置すると、その動作温度範囲が拡張される理由をご説明します。

背景

パワーインジェクタであるミッドスパンを活用することで、既存のイーサネットインフラストラクチャーでPoE(Power over Ethernet)カメラを使用できるようになります。AXIS TU8003 90 W Connectivity Midspanでは、最大90 Wを使用するAxis PTZカメラがサポートされています。これにより、まるで音声とI/O 接続がカメラに統合されているようになります。

屋外使用が実証されている(IP66規格準拠)耐衝撃性の材料で製造されたAXIS T91G61 Wall Mountは、ミッドスパンなどのデバイスを内部に収容して、そのミッドスパンを水の浸入から保護するように設計されています。このマウントには、プレマウントされたイーサネットケーブルとコネクターが付属しているため、大半のAxis PTZカメラに対して電源とデータの容易な接続性を提供します。

ミッドスパンの動作温度

ミッドスパンのデータシートには、動作温度が -25°C60°C-13°F140°F)と指定されています。

下限はミッドスパンの内部温度を指しています。ミッドスパンの内部温度が-25°C以上になっている限り、周囲温度がこれより低くても許容されます。

上限は周囲温度によって決まります。ミッドスパンの(動作中)内部温度は、常に周囲温度より高くなります。これは、ミッドスパンの熱エネルギー出力に起因します。

ミッドスパンはNEMA TS 2(2.2.7)に準拠しており、最大温度74°C165°F)で(AXIS T91G61 Wall Mount内部に設置した状態ではなく)スタンドアロンでテストされています。

マウント内のミッドスパンの動作温度

ミッドスパンをAXIS T91G61 Wall Mountまたは同様のマウント内に配置すると、ミッドスパンの保護が強化されるため、ミッドスパンの動作温度範囲が拡張されます。

大半のAxis屋外対応PTZカメラ(AXIS Q60-EQ61-EQ63-Eシリーズ)と同じ程度までその範囲が拡張されます。つまり、-50°C50°C-58°F122°F)の範囲となります。

製品動作温度範囲

AXIS TU8003

-25°C60°C(-13°F140°F

AXIS TU8003AXIS T91G61内に配置した場合)

-50°C50°C(-58°F122°F

拡張範囲により、カメラとマウントの一定周囲温度の下限と上限が定義されます。これは、マウント内部の温度を指しているのではありません。当社の温度試験では、下限と上限の両方において、マウント内部の温度がミッドスパンの許容レベル内に収まっていることが実証されました。

周囲温度が非常に低い場合(-50°C)は、カメラを暖めるために更に電力を消費することから、ミッドスパンの熱エネルギー出力は比較的高くなります。これによりミッドスパンが暖まります。ミッドスパンがマウント内部で保護されている場合は、この内部加熱の影響がさらに大きくなります。このように、マウント内部の温度(ミッドスパンの周囲温度)がはるかに低くなっても、ミッドスパンは常に下限値(-25°C)以上の温度で維持されます。

周囲温度が非常に高い(50°C)場合は、カメラのヒーターに電力が使用されないため、ミッドスパンの電力出力は常に低下します(最大34 W。本ホワイトペーパーで後述されている推定消費電力を参照)。これにより、ミッドスパンの内部温度が低く抑えられます。また、AXIS T91G61 Wall Mountの金属により、外気への熱伝達が促進されることで、マウント内部の温度が低く維持され、ミッドスパンの過熱が防止されます。

温度試験

より広い動作温度範囲にミッドスパンが対応できることを確認するため、当社はラボ環境で広範な耐候試験を実施しています。

風のない状態で一定の周囲温度が維持される人工気候室に試験対象のカメラを配置して試験を実施し、マウント内部の温度とミッドスパンの内部温度を記録しました。周囲温度に伴い、ミッドスパンの出力が変化します。カメラの一般的な消費電力は周囲温度に左右され、これがミッドスパンの熱エネルギー出力(これが内部加熱につながる)に影響します。実際には、周囲温度がいくら高くても、ミッドスパンの出力が30 Wを超えることはないことに注意してください。

    さまざまな周囲温度における温度変化の測定と一般的な消費電力。
  1. ミッドスパンの内部温度
  2. マウント内部の温度
  3. 周囲温度(屋外)
  1. A、B、C、Dの網掛けの部分が、次のセクションに詳説されている状況に対応しています。

上のグラフを見ると、高温か低温かに関わらず、マウント内部の温度はマウント周囲の温度とそれほど差がないことが分かります。マウント内部の温度は10°C未満高いだけで、温度の高い環境でも、AXIS T91G61内の温度はミッドスパンの許容動作温度範囲内に収まっています。

上のグラフを見ると、マウント内部の温度がはるかに低い場合でも、ミッドスパンの内部温度が-25°C-13°F)をはるかに上回っていることも分かります。ミッドスパンの電源をしばらく切ってから、-40°C-40°F)で再度起動した場合が唯一の例外となります。この場合は、温度が短時間で-25°C-13°F)に達しています。この状態が時々発生しても、ミッドスパンの機能や寿命には影響しません。

カメラの推定消費電力

カメラの総消費電力を、電力が使用される主な機能別に分類することができます。カメラでどの機能が使用されているかによって、消費電力が異なります。また、これは温度(ヒーターの使用は温度によって異なる)と照明条件(IR LEDは主に夜間に作動する)によっても部分的に左右されます。先のグラフでマークが付けられている各状況の推定消費電力をご覧ください。

状況A:昼夜を問わず寒い環境。-10°C~10°C(14°F~50°F
カメラの機能消費電力電力が消費される理由

ヒーター

39 W

低電力モード:0 W

0°C付近で、氷の形成を防ぐ上で強力な加熱が必要となるため

低電力モードではすべてのヒーターがオフになるため

IR LED

最大18 W

IR LEDが作動する可能性があるため

ファン

0 W

20°C68°F)未満でファンが停止するため

PTZモーター

最大18 W/6 W

稼働時/非稼働時

ワイパー

4 W/0 W

使用時/非使用時

AXIS OS

10 W

1つのH.264ストリームをSDカードに録画するため

合計

最大>71 W1通常55 W/>71 W1(IRなし/あり)

低電力モード:最大32 W/50 W、通常16 W/34 W(IRなし/あり)

1. Aは、消費電力が最大になる状況です。十分な電力がない場合、パンとチルトリングヒーターは低電力で動作します。

低電力モードが有効になっている場合は(-5°C [23°F] 以上でサポート)、すべてのヒーターはオフのままとなり、通常の消費電力はわずか16 W/34W [IRなし/あり](最大32 W/50 W)となります。

Bは、暑い夜間で35°C95°F2です。
カメラの機能消費電力電力が消費される理由

ヒーター

0 W

20°C68 °F)を超えるとヒーターが停止するため

IR LED

最大18 W

夜間にはIR LEDが作動する可能性があるため

ファン

3 W/2 W

30°C86 °F)を超え、IR LEDは作動/停止するため

PTZモーター

最大18 W/6 W

稼働時/非稼働時

ワイパー

4 W/0 W

使用時/非使用時

AXIS OS

10 W

1つのH.264ストリームをSDカードに録画するため

合計

最大 53 W。通常37 W(IR LED作動時)

2. 暑い夜間の典型的な温度は、最大35°C95°F)となります。weatherspark.comに、1時間ごとの世界の平均気温が色分けされたグラフで掲載されています。このサイトで、カメラが設置され得る場所の気温を確認することができます。

Cは、極寒の夜間で-40°C-40°F)以下です。
カメラの機能消費電力電力が消費される理由

ヒーター

13 W

一部のヒーターが作動するため

IR LED

最大18 W

夜間にはIR LEDが作動する可能性があるため

ファン

0 W

20°C68°F)未満でファンが停止するため

PTZモーター

最大18 W/6 W

稼働時/非稼働時

ワイパー

4 W/0 W

使用時/非使用時

AXIS OS

10 W

1つのH.264ストリームをSDカードに録画するため

合計

最大 63 W。通常47 W(IR LED作動時)

Dは、暑い日中で50°C122°F)です。
カメラの機能消費電力電力が消費される理由

ヒーター

0 W

20°C68 °F)を超えるとヒーターが停止するため

IR LED

0 W

日中はIR LEDが作動しない可能性が高いため

ファン

2 W

30°C86 °F)を超え、IR LEDは停止するため

PTZモーター

最大18 W/6 W

稼働時/非稼働時

ワイパー

4 W/0 W

使用時/非使用時

AXIS OS

10 W

1つのH.264ストリームをSDカードに録画するため

合計

最大34 W。通常18 W