パノラマカメラ

8月, 2021

まとめ

パノラマカメラなら、複数のカメラの役割を1つにまとめ、効率性の高い1台のカメラで広範囲の撮影が可能です。カメラの台数が少ないほど、設置と運用が容易になり、費用対効果も高くなります。パノラマカメラには、単一センサーカメラ、マルチセンサーカメラ、全指向性カメラ、PTZ搭載全指向性カメラがあります。

コンパクトな単一センサーカメラは、360ºのオーバービューを効率的に撮影する広角レンズ1つを備えています。デフォルトの円形「魚眼」ビューは、シーンに応じてさまざまなビューに簡単に歪み補正できます。

パノラママルチセンサーカメラは、複数のイメージセンサーを使用し、高精細かつシームレスな180ºビューを提供します。

全指向性カメラは、個別に調整可能なカメラヘッドを備え、同時に複数の方向を監視して高精細な分割ビューを提供することができ、優れた柔軟性を実現します。PTZ搭載全指向性カメラは、広範囲を撮影するとともに、選択したエリアの現場検証用として高い価値を持つ、鮮明で詳細なズーム映像を提供します。すべて一本のネットワークケーブルで電源供給と制御が可能です。

使用するパノラマカメラを選択する際は、撮影シーンにおける課題と監視の目的、両方を考慮する必要があります。例えば、人物を特定する必要があるのか、それとも人物の存在の有無を検知するのみで十分なのかなどを検討します。最適なカメラと配置を選択することで、適切な視野で必要な詳細レベルを得られます。多用途性に優れたパノラマカメラは、ビデオ画像の詳細レベルに多様な要件がある無数のシナリオに最適な選択肢となります。

パノラマカメラとは?

パノラマカメラは、180º~360ºの画角を撮影できる固定カメラです。画角はモデルによって異なります。活動の検知、人の流れの追跡、エリア管理の改善など、広範なエリアをカバーする必要がある場合に、複数の固定カメラを設置しなくても、これ1台で効率的に目的を達成することができます。

パノラマカメラには、広角レンズ1つを備える単一センサーカメラと、複数のレンズを備えるマルチセンサーカメラがあります。

    パノラマカメラのラインナップ: 単一センサーカメラ (左上)、マルチセンサーカメラ (右上)、全指向性カメラ (左下)、PTZ搭載全指向性カメラ (右下)。

パノラマカメラの利点

パノラマカメラを使用すると、複数のカメラの役割を1つにまとめることができます。カメラの台数を減らすことで、設置と運用が容易になり、費用対効果も高くなります。例えば、必要なケーブルやネットワークスイッチのポートが少なくて済みます。ほとんどの場合、使用するIPアドレスは1つだけのため、各パノラマカメラに必要なソフトウェアライセンスも1つのみです。

どのタイプのパノラマカメラを使用するかは、監視の目的、つまり、撮影シーンのタイプ、必要な解像度のレベル、カメラと撮影シーンの間の距離などによって異なります。最適なパノラマカメラの選択について詳しくは、第8項を参照してください。

Axisのほとんどのパノラマカメラは、帯域幅とストレージの要件を削減しながら高画質を維持する、Axis Zipstreamテクノロジーをサポートしています。一部のパノラマカメラはWDR (ワイドダイナミックレンジ) もサポートしており、厳しい照明条件下でも、撮影シーンの暗い領域と明るい領域の両方で部分の詳細を確認できます。さらに、完全な暗闇でも、電力効率に優れたIR LED (赤外線発光ダイオード) イルミネーターとAxis OptimizedIRテクノロジーを使用して機能するカメラもあります。

単一センサーカメラ

単一センサーカメラは、1つの広角レンズを備え、監視エリアを360°の円形「魚眼」ビューで見ることができます。カメラは小型で目立たず、お求めやすい価格で、天井または壁面に簡単に設置できます。天井に取り付ければ、部屋全体を見渡すことができ、小さな小売店などの死角を効果的になくすことができます。代わりに壁に取り付けた場合、カメラは人物の顔を確認するのにより適した視野角で、有用なオーバービューをとらえることができます。

    単一センサーカメラからの円形表示。カメラを天井に設置すると、部屋全体の完全なオーバービューを得ることができます (左)。カメラを壁面に設置すると、人物の顔を確認するのに適した角度でオーバービューを得ることができます (右)。

円形表示は、シーンに適合するように異なるビュー (パノラマビュー、ダブルパノラマビュー、4つの異なるカメラをシミュレートする4分割表示など) に簡単に変換または歪み補正することができます。

円形表示では、エリア内の動きを簡単に追跡できる、完全なオーバービューを得ることができます。一方、歪み補正ビューでは、より自然な映像を得ることができ、多くのシナリオに適しています。また、歪み補正ビューは、円形表示のたる型歪曲を生じさせません。

円形表示をストリーミングおよび録画することで両方の表示タイプを最大限に活用し、録画に基づいてAXIS Camera Stationや別のビデオ管理システム (VMS) で歪み補正を実行することができます。こうすることで、1つのビデオストリームで完全なビューをキャプチャーできますが、歪み補正されたビューの利点を活用することが可能となります。カメラから歪み補正されたビデオストリームを得ることもできます。

    選択した歪み補正領域を示すオーバーレイ付きのオリジナル画像と、それに対応する歪み補正されたパノラマビュー
    オリジナル画像と、それに対応する歪み補正されたダブルパノラマビュー。
    オリジナル画像と、それに対応する歪み補正された4分割表示。

    歪み補正してコリドールフォーマットを選択することにより、通路下の円形オーバービュー (左) を2つの有用な画像 (右) に変換できます。

単一センサーパノラマカメラでは、最大4つの個別にトリミングされたビュー領域で、デジタル的にパン、チルト、ズームすることもできます。

単一センサーパノラマカメラは、イメージセンサーが長方形でも、円形の画像を生成します。Axisのほとんどの単一センサーパノラマカメラは、円形画像をカバーするために必要な最小の2次ビューのみをストリーミングすることで、帯域幅とストレージの要件を最小限に抑えます。

    長方形のイメージセンサーで見た、単一センサーパノラマカメラの円形表示。円をカバーするために必要な2次ビュー (この場合は2048 x 2048ピクセル) のみをストリーミングすることにより、帯域幅とストレージの要件を最小限に抑えます。

一部の単一センサーのパノラマカメラは立体射影レンズ (stereographic lens) を使用しています。立体射影レンズは、通常の広角レンズよりもセンサーの広い領域にレンズの端を投影します。これにより、立体射影レンズ は、円形の視野の中心部よりも周辺部の方が解像度が高くなり、周辺の物体の形状をよりよく保つことができます。カメラが天井に取り付けられている場合は、この機能が特に有用となります。

マルチセンサーカメラ

マルチセンサーパノラマカメラは、1つのケーシングに複数のセンサーとレンズを搭載しています。センサーからの個別の映像はわずかに重なり合っており、まとめて1つの詳細な180°パノラマオーバービューになるよう配置されます。

    4つのセンサーを備えるマルチセンサーカメラからの180°ビュー (曲がっているように見える通りは、実際は直線です)。

マルチセンサーカメラは、180ºの水平視野角を提供しますが、さまざまな垂直視野角のものがあります。

    壁に設置されたマルチセンサーカメラの視野。左:4つのセンサーを備えたカメラでは、180ºの水平視野角と90ºの垂直視野角をとらえることができます。右:3つのセンサーを備えたカメラでは、180ºの水平視野角と60ºの垂直視野角をとらえることができます。

90ºの垂直視野角を備えたカメラでは、完全な範囲をとらえることができます。垂直方向の視野が低くても、同じ高解像度センサーを搭載したカメラの場合は、より小さな視野角で、より高いピクセル密度を実現することができます。

    90°の垂直視野角による完全な撮影範囲。

    多くの場合、垂直視野角が小さいほど、高いピクセル密度で必要な監視領域を撮影することができます。

一部のマルチセンサーカメラでは、それぞれのセンサーが撮影シーンの最適な解釈を提供するよう個別に適応します。各センサーが、ゲイン、ホワイトバランス、露出時間に対する独自の設定を使用します。理想的な表示体験は提供されない場合もありますが、結果として得られるパノラマビューは現場検証の観点からは完璧で、センサーごとに最適に設定された詳細なビューを実現します。カメラが配置されているシーンがあまり複雑でなく、照明の均一性が高い場合、パノラマビューの外観も一貫性が高くなります。

その他のマルチセンサーカメラでは、個別の画像が「スティッチング」プロセスによって1つのまとまった画像に変換されます。すべてのセンサーに、共通のホワイトバランス設定と露出同期を使用し、個々の画像の位置合わせをして、一貫性のある1つの画像を形成します。これは、球形や円筒形などの湾曲した共通の表面に画像を投影することによって行われます。この投影は、たる型歪曲など、元の画像に存在する画像の歪みも補正します。

単一センサーカメラと同様、マルチセンサーパノラマカメラは、死角のない視野全体をとらえます。複数のセンサーを搭載していますが、VMSでは1つのカメラのように動作し、1つのIPアドレスしか使用しません。Axisの分析アプリケーションに必要なライセンスも1つで済みます。

便利なプリセットポジションを使用でき、さまざまな表示領域に合わせてカメラを簡単に調整できます。

マルチセンサーカメラは、画像の詳細部分を監視する必要のある、駅や空港、街の広場などの広大なエリアでの監視に特に役立ちます。マルチセンサーテクノロジーは、重要なインフラ施設の周辺監視にも理想的です。

全指向性カメラ

360°の監視領域を実現する全指向性カメラは、1つのケーシングに4つのカメラヘッドを備え、4方向を同時に監視することができます。このカメラは非常に高い柔軟性を備え、各バリフォーカルレンズで、全体監視に適した広い視野、またはより詳細な情報が必要とされるズーム表示に対する望遠視野といった、特定の監視要件に合わせて視野を最適化できます。それぞれのカメラヘッドはチルトすることができ、円形トラックに沿って±90°スライドさせ、最適な配置を実現することができます。

    倉庫の交差地点に配置された全指向性カメラの4つのビュー。この例では、2つのバリフォーカルレンズがズーム表示を提供しています。

センサーを等間隔に配置した標準のセンサー配置では、360°の4分割表示が得られます。

    可動式センサーを等間隔に配置した全指向性カメラは、通路の交差地点などで完全なオーバービューを提供します。

可動式センサーを異なる位置に配置することで、設置場所ごとにセンサーの使用を最適化することができます。例えば、建物の外壁にカメラを設置する場合、3つのセンサーで270°の範囲をカバーし、4つ目のセンサーは、単に壁に向けるのではなく、下方やより注意が必要な他のエリアに向けることができます。例えば、カメラの真下にズームインすることも可能です。

    外壁の角に取り付けるために最適化した場合の全指向性カメラ。3つのセンサーで必要な270°の範囲をカバーし、4番目のセンサーを下に向けてズームインすることで、カメラの真下の解像度が向上します。

一部の全指向性カメラでは、各カメラヘッドを90º回転させることで、コリドールフォーマットをサポートします。これにより、長い廊下や道路、また他の垂直方向のシーンを簡単にキャプチャーすることが可能となります。

    全指向性カメラからのコリドールフォーマットビュー。この例では、画像が左右に並べて表示されています。4分割表示オプションも利用可能です。

屋内か屋外かに関わらず、全指向性カメラは広いエリア、建物の外側の角、廊下や道路の交差点に最適です。学校や小売店などの場所に特に適しています。

PTZ(パン/チルト/ズーム)を搭載した全指向性カメラ

PTZ搭載全指向性カメラは、360°の全指向性カメラとモーター駆動のPTZカメラを1つのユニットとして組み合わせたものです。全指向性カメラは全体を見渡し、PTZカメラはフォレンジックな価値のあるシャープで詳細なクローズアップ映像を提供します。すべての電源と制御は1本のネットワークケーブルで行います。

このカメラの組み合わせは、効果的な追跡システムとして使用できます。全指向性カメラのヘッドが各方向を常に監視し、イベントを検出すると、PTZが自動的に追跡し、重要なオブジェクトや人物にズームインします。

    PTZ搭載全指向性カメラを使用した駐車場監視。4分割表示360°/ PTZズーム表示。

AxisのPTZ搭載全指向性カメラは、カメラヘッドを柔軟にチルトすることができます。レンズを交換できるため、1つまたは複数のカメラヘッドの標準レンズを交換して、重要エリアでより高いピクセル密度を実現することも可能です。

PTZ搭載全指向性カメラは、街の広場や交差点などの都市監視のオーバービューを監視できるだけでなく、空港や政府機関の建物などの高セキュリティエリアでフォレンジックな詳細を確保することができます。このカメラの機能と能力を最大限に活用するには、オペレーターによる能動的な視聴が必要になります。これは特にPTZ機能に当てはまります。

適切なパノラマカメラの選択

使用するパノラマカメラを選ぶ際は、カメラが撮影シーンと目的にあった詳細レベルを提供できるか確認する必要があります。例えば、人物を特定する必要があるのか、それとも人物の存在の有無を検知するのみで十分なのか。カメラと重要な監視対象との間の距離はどのくらいかなどを検討します。

詳細レベルは、映像内の被写体のピクセル密度によって異なります。1メートルあたりまたは1フィートあたりのピクセル数は、どのくらい必要でしょうか?ピクセル密度は、センサーの解像度とレンズ、およびカメラから監視対象物までの距離の影響を受けます。Axisでは、存在の検知には25 px/m(8 px/ft)、以前に撮影された人物の認識には125 px/m(38 px/ft)、人物の識別には250 px/m(76px /ft) を使用することを推奨しています。

監視の目的に応じた必要なピクセル密度。
監視の目的必要なピクセル密度

検知
人物の存在を確認することができる

25 px/m (8 px/ft)

認識
映っている人が知っている人物かどうかを判断することができる

125 px/m (38 px/ft)

識別 (良好な条件下)
個人の身元を識別することができる

250 px/m (76 px/ft)

識別(低照度など困難な条件下)

500 px/m (152 px/ft)

単一センサーのパノラマカメラは、360度の完全な視野を提供し、検知や認識を目的とした全体監視に適しています。このカメラは非常に広い範囲をカバーするため、認識や識別に必要なピクセル密度は、対象物がカメラに近ければ達成することができます。

マルチセンサーカメラは、すべてのレンズを組み合わせて180度の視野で高いピクセル密度を実現します。視野が広いだけでなく、カメラから遠く離れていても、認識や識別が可能です。

全指向性カメラは、多数の選択肢を提供します。標準レンズやバリフォーカルレンズを使用したワイドビューモードでは、主に広範囲の検知が可能なピクセル密度を実現します。特殊レンズや望遠モードを使用した場合は、各センサーが非常に高い画素密度を持つようになり、限られた視野における識別が可能となります。2つのビューモードを組み合わせて、検知レベルの360°オーバービューを維持しながら、限られた領域で識別レベルのピクセル密度を実現することもできます。PTZを備えた全指向性カメラでは、PTZカメラの視野内で最大数百メートルまでの優れた識別能力を発揮します。