Pアイリスを理解する
概要
Pアイリスは、あらゆる照明条件下でネットワークカメラが最適に機能することを可能にするソリューションです。回折と画像収差を自動的に最小限に抑えながら、十分な被写界深度を備えた鮮明な高解像度映像の配信を可能にします。
レンズのアイリスは、レンズの開口部の大きさを調節するもので、絞りとも呼ばれます。画像に適正な露出が得られるよう、通過する光量を調整します。ただし、開口部の大きさは、被写界深度や画像のシャープネスにも影響します。
屋外など、光源レベルが変化する環境では、自動調整式のアイリスをお勧めします。この場合、一般的にはDCアイリスが使用されます。しかし、DCアイリスレンズは光源レベルのみに反応し、アイリスの開口部が被写界深度など他の画質に与える影響は考慮されません。この欠点を克服するために、Pアイリスは設計されました。
Pアイリスシステムは、Pアイリスレンズとカメラ内の専用ソフトウェアで構成されています。このソフトウェアは、Pアイリスレンズのモーターを制御し、絞りの正確な自動制御を可能にします。Pアイリスの主な目的は、できる限りレンズの中心部や最も性能の良い部分を使うよう最適な絞り位置を設定することで、画質を向上させることです。特定のF値として表されるこの位置は、レンズが最適な性能を発揮し、光学的な誤差が少なく、画質 (コントラスト、解像度、被写界深度) が最も高い位置です。
Pアイリスレンズは、対応しているカメラで使用することができます。
はじめに
今日のネットワーク映像監視は、驚くほど高い解像度の映像を生成します。メガピクセル、HDTV、または4Kのイメージセンサーを搭載したカメラは、人物や車両の識別に役立つ極めて詳細な映像を提供します。しかし、画質はカメラセンサーの解像度だけに依存するわけではありません。特に、カメラが大きく変化する光条件に対応しなければならない屋外環境では、鮮明な画像を得るには、多くの部品や要因が関わってきます。例えば、レンズの品質やアイリスコントロールの能力も、良い画質を得る上で非常に重要な要素となります。
光条件の変化による課題を克服するため、Axisとレンズメーカーの興和が共同開発したのが、新しいタイプのアイリスコントロールを備えたレンズです。このタイプのレンズのアイリスは、precise iris (正確な絞り)を意味するPアイリスと呼ばれます。オープンスタンダードに基づいており、対応しているカメラであれば、どのカメラでも動作します。Pアイリスレンズは、固定ネットワークカメラによる映像監視において、画像の鮮明度と使い勝手を向上させます。
このホワイトペーパーでは、カメラレンズのアイリスと、その設定が画質にどのような影響を与えるかに関する背景について、説明しています。また、アイリスコントロールの仕組みと、特にPアイリスレンズが絞りを調整することで、画像のコントラスト、鮮明度、解像度、被写界深度を最適化する仕組みについても詳しく説明しています。
アイリスの役割
レンズのアイリスは、基本的に人間の目の虹彩と同じような働きをします。画像に適正な露出が得られるよう、通過する光量を調整します。アイリスの開口部は、絞りと呼ばれます。絞りの大きさは、被写界深度と画像のシャープネスにも影響します。
- レンズのアイリスは、通過する光量を調整します。
レンズは、フォーカスポイントと呼ばれる1点だけで正確にピントが合いますが、フォーカスポイントの前後には、物体が鮮明に見える範囲があります。この範囲を被写界深度、あるいはフォーカスレンジと呼びます。被写界深度が深いと、より多くのシーンがはっきりと見えるため、監視カメラでは重要な指標となります。
被写界深度はアイリスの開口部の大きさ (絞り値) に反比例し、絞りを大きくすると被写界深度は浅くなり、絞りを小さくすると深くなります。したがって、被写界深度を最大化するには、絞りを小さくする (F値を大きくする) 必要があります。
しかし、画像のシャープネスには、十分な被写界深度を確保するだけでなく、光学誤差やレンズ収差を最小限に抑える必要があります。レンズの表面全体を使用すると、すべてのレンズで何らかの画像収差が発生します。アイリスの開口部が小さすぎると、回折による画像のブレが生じることがあります。特に明るい屋外のシーンでは、強い光によってカメラが絞りを最小限に抑え、光が多数のピクセルに拡散 (回折) するという問題が起こります。
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右の画像のように、アイリスの開口部が小さすぎると、回折が発生します。
回折は、カメラのイメージセンサーのピクセルサイズが小さいほど、より深刻な問題を引き起こします。ピクセルが小さいほど、回折した光がより多くのピクセルに到達します。これは、自動DCアイリスレンズとピクセルが小さいメガピクセルセンサーを組み合わせて使用するカメラの典型的な問題です。
アイリスコントロールのオプション
レンズには、固定絞りと調整式の絞りがあり、調整式レンズは手動または自動で調整できます。自動アイリスコントロールには次の3種類があります。
DCアイリス
ビデオアイリス
Pアイリス
手動絞りのレンズでは、絞りの開口部を手動で調整する必要があります。光源レベルが一定の屋内用途では、絞りの開口部を常に調整する必要がないため、固定絞りのレンズまたは手動絞りのレンズが適しています。
屋外対応カメラシステムなど、光源レベルが変化する状況では、絞りを自動的に調整できるレンズのほうが適しています。DCアイリスレンズとビデオアイリスレンズは、どちらもアナログ信号を制御信号に変換して使用します。DCアイリスレンズではこの変換はカメラ内で行われ、ビデオアイリスレンズではレンズ内で行われます。DCアイリスまたはビデオアイリスレンズは、シーン内の光源レベルにのみ反応します。被写界深度など、その他の画像品質に対する絞りの開きの影響は考慮しません。これらのタイプのレンズは、カメラは明るさの程度に応じて絞りを開くか閉じるかを把握するだけで、絞り位置については把握しません。この欠点を克服するために、Pアイリスは設計されました。
最新の開発規格であるi-CSレンズは、Pアイリスレンズのものと同様の最適化されたアイリスコントロールと、オートフォーカスおよびリモートズーム機能を併せ持つレンズです。
Pアイリスの仕組み
Pアイリスシステムは、Pアイリスレンズとカメラ内の専用ソフトウェアで構成されています。このソフトウェアは、Pアイリスレンズのモーターを制御し、絞りの正確な自動制御を可能にします。DCアイリスレンズとは異なり、Pアイリスコントロールの主な役割は、レンズを通過する光の流れを連続的に調整することではありません。Pアイリスの主な目的は、レンズの中心部や最も性能の良い部分を使うように最適な絞りを設定し、画質を向上させることです。特定のF値として表されるこの位置は、レンズが最適な性能を発揮し、光学的な誤差が少なく、画質 (コントラスト、解像度、被写界深度) が最も高い位置です。Pアイリスを搭載したネットワークカメラでは、これがデフォルト設定になっています。


Pアイリスと連携して機能するのは、照明条件のわずかな変化に対応し、画像をさらに最適化するための電子的手段、ゲイン (信号レベルの増幅) と露出時間の使用です。これにより、最適な絞り位置を、可能な限り長く維持することができます。絞りの設定位置とカメラの電子処理能力では十分な露出補正ができない場合、Pアイリスカメラは自動的に、アイリスに対して別の位置に移動するよう指示します。例えば暗い状況では、アイリスが全開になります。明るい状況では、Pアイリスを搭載したカメラは、アイリスの絞り値を回折やぼやけを回避する位置に制限するようプログラムされています。したがって、Pアイリスは、あらゆる照明条件下で最適な画質を実現するための調整を自動的に行うことができます。
Pアイリスレンズを使用するには、カメラがPアイリスレンズに対応している必要があることを、覚えておいてください。