監視向けのレンズ

1月, 2025

概要

レンズによってカメラの視野角とカメラセンサーに到達する光量が制御されます。また、レンズによって画像の焦点も合わせられます。固定レンズ、バリフォーカルレンズ、ズームレンズの場合は、柔軟性のレベル、被写界深度、リモート調整機能がそれぞれに異なります。

視野角は、カメラがキャプチャーできる角度を表します。レンズの焦点距離とイメージセンサーのサイズによって決まります。焦点距離が長いほど、画角が狭くなります。広角レンズ、標準レンズ、望遠レンズの場合は、ユースケースに合わせて異なる視野角を使用することができます。

レンズの絞りは、人間の目の虹彩と同じような働きをします。カメラの画像が正しく露出されるように、通過する光の量を制御します。また、解像度、コントラスト、被写界深度などの画質面を最適化するために使用することもできます。光源レベルが制御されている環境では、固定アイリスレンズを使用することができます。しかし、困難な照明条件下では、カメラで絞りを変更して最適化できるDCアイリスレンズかPアイリスレンズが必要となります。

また、レンズはマウント規格の違いによっても分類されます。多くの監視カメラには、ブロックレンズが付属しています。このレンズは、モーターを使用して画質が最適化されますが、レンズを交換することができません。M12またはSマウントレンズは、モジュラー型カメラ、装着式カメラ、インターコムなどで一般的に使用される小型レンズで、交換可能な場合もあります。CマウントまたはCSマウントレンズは、固定ボックス型カメラで使用される交換可能なレンズです。i-CSレンズは、ズームとフォーカスをリモートで調整できるモーターを内蔵したCSマウントレンズです。

カメラのレンズを適切に選択できるように、Axisはレンズカリキュレーター、AXIS Site Designer、アクセサリーセレクターといったツールを提供しています。こうしたツールには、www.axis.com/support/toolsからアクセスすることができます。

はじめに

レンズは透明な光学デバイスです。レンズによって、カメラのイメージセンサーに光が集められ、クリアで焦点の合った画像が作成されます。映像監視で効果的なシーン監視を実現するには、クリアな画像が不可欠となります。そのため、カメラレンズは重要なコンポーネントとなります。レンズの選択肢は数多くありますが、視野角、焦点距離、絞りのタイプ、センサーの互換性といった要素を慎重に考慮して選択する必要があります。

本ホワイトペーパーでは、映像監視におけるレンズの概念、レンズの機能、主なレンズのタイプ、適切なレンズを選択および構成して最適な画質を実現する上で考慮すべき要素についてご説明します。

レンズの機能

カメラのレンズ(またはレンズ素子の集合体)にはいくつかの機能があります。以下は、その一例です。

  • 視野角を定義します。これによって、画像にシーンがどの程度写るかが決まります。

  • レンズの解像度とセンサーの解像度を一致させることで、シーンの細部を保持します。

  • 画像の露出が適正になるように、イメージセンサーに届く光の量をコントロールします。

  • 画像の焦点を合わせます。集合体のレンズ素子を調整するという方法で機能する場合、またはレンズ集合体とイメージセンサー間の距離を変更するという方法で機能する場合があります。

レンズの種類

    固定レンズ (1)、バリフォーカルレンズ (2)、ズームレンズ (3) を搭載したカメラ。

用途に応じて、さまざまなタイプのレンズがあります。 

  • 固定焦点距離レンズ。 固定レンズとも呼ばれます。焦点距離が固定で、視野角は1つのみです。 

  • バリフォーカルレンズ。焦点距離は可変で、視野角も変わります。視野角は、レンズで、またはカメラのWebインターフェースで調整できます。バリフォーカルレンズで焦点距離を調整するには、レンズのフォーカスを再調整する必要があります。 

  • ズームレンズ。 視野角を調整できるのはバリフォーカルレンズと同じですが、このレンズでは視野角を変更してもフォーカスを再調整する必要はありません。焦点距離が変わっても、フォーカスは維持されます。このタイプのレンズは、セキュリティ業界では非常に珍しいものですが、この機能は電動レンズで模倣できます。  

焦点距離

レンズの焦点距離は、レンズでどれほど光が屈折するかを示す尺度となります。焦点距離の短いレンズの場合は、光がより屈折します。焦点距離は通常、mm単位で示されます。

焦点距離は物理的なレンズの長さに対応するものではなく、レンズ自体に基づいて簡単に焦点距離を測定することはできません。  

レンズの集合体の場合、焦点距離 (f) は、センサーが配置されている画像平面 (F) と平行に入射する光線が曲がってセンサーに焦点を合わせるように見える仮想平面 (H) との間の距離として定義されます。この仮想平面は主平面と呼ばれます。  

    カメラに取り付けられたレンズ。焦点距離 (f) は、センサーが配置されている画像平面 (F) と平行に入射する光線が曲がってセンサーに焦点を合わせるように見える主平面 (H) との間の距離として定義されます。
  1. 入射光
  2. レンズ素子
  3. レンズ
  4. イメージセンサー
  5. イメージプロセッサ
  6. カメラハウジング

画角

視野角は、カメラがキャプチャーできる角度を表します。レンズの焦点距離とイメージセンサーのサイズによって決まります。焦点距離が長いほど、画角が狭くなります。視野角は、HFoV、VFoV、またはDFoVと表記して、水平方向、垂直方向、または対角線方向の視野角を示すこともあります。

    焦点距離 (mm) が長いほど、視野角は狭くなります。

レンズは、どの角度を再現できるかによって、3つのカテゴリーに分類されます。

  • 広角レンズ。人間の目よりもはるかに広い視野角を得られます。一般的に被写界深度も深くなります。

  • 標準レンズ。人間の目の中心視野と同じような視野が得られます。

  • 望遠レンズ。人間の目よりも視野角が狭く、拡大効果を得られます。被写界深度が浅くなることがあります。

    広角レンズ (1)、標準レンズ (2)、望遠レンズ (3) での視野角。

F値

カメラの集光能力は、レンズのF値 (Fストップとも呼ばれる) によって指定されます。F値は、レンズを通過してイメージセンサーに到達する光の量を定義します。これは、レンズの焦点距離をレンズの絞り直径で割った比率です。

F値が小さいほど集光性が高く、イメージセンサーまで通過できる光の量は多くなります。低照度環境では、一般的にF値が小さいほどよりよい画質が得られ、F値が大きいほど被写界深度が深くなります。通常、F値が小さいレンズの方がF値が大きいレンズより高価になります。

一部のレンズでは、開口のサイズを変更できます。これは絞りによって行われ、絞りは手動でまたはカメラによって自動で制御できます。バリフォーカルレンズやズームレンズを使用する場合、焦点距離を変えるとF値も変わります。焦点距離が長いほど、f値は大きくなります。レンズに印字されたF値は通常、ワイド設定にのみ有効です。

    カメラの集光能力は、F値が小さいほど高くなります。

入射瞳とは、レンズシステムの前面(物体側)を通して見た絞りまたは開口の光学画像です。開口部の前にレンズがなければ(例:ピンホールカメラ )、入射瞳の場所とサイズは絞りと同じになります。入射瞳は光を集める部分で、レンズのタイプによって絞りの物理的な大きさよりも小さくなったり大きくなったりします。

    広角レンズ (上) の場合は、入射瞳 (1) は通常、物理的な絞り (2) よりも小さくなります。望遠レンズ (下) の場合は、入射瞳 (1) は通常、物理的な絞り (2) よりも大きくなります。
  1. 入射瞳
  2. 虹彩

絞りタイプ

レンズの絞りは、人間の目の虹彩と同じような働きをします。カメラの画像が正しく露出されるように、通過する光の量を制御します。また、解像度、コントラスト、被写界深度などの画質面を最適化するために使用することもできます。

セキュリティ業界では、次の3種類の絞りが一般的です。

  • 固定アイリスレンズは、アイリス開口部のサイズを変更することができません。固定アイリスは、M12 (Sマウント) レンズで使用されています。このタイプの絞りを備えたレンズは、光量が制御された環境、一般的には屋内で使用されることがほとんどです。

  • DCアイリスレンズでは、カメラは光量に応じて自動的にアイリス開口部のサイズを変更して、イメージセンサーに到達する光量を制御できます。このタイプの絞りを備えたレンズは、屋外など、より厳しい光量条件下で使用できます。

  • Pアイリスレンズでは、DCアイリスレンズよりもはるかに精密にアイリス開口部のサイズを制御できます。これにより、カメラはイメージセンサーに到達する光の量を最適化できるだけでなく、シャープネス、コントラスト、被写界深度をより適切に調整できます。

    セキュリティ業界で一般的なアイリスの種類: 固定アイリス (1)、DCアイリス (2)、Pアイリス (3)。

被写界深度

被写界深度とは、最も近い被写体と最も遠い被写体が同時に鮮明に見える距離のことです。これは、駐車場の監視などでは、20、30、50メートル離れた場所のナンバープレートを読み取る必要があるために重要です。

    被写界深度 (1) とカメラから焦点までの距離 (2) を示しています。被写界深度が深いほど、焦点の周りのより長い範囲で被写体が鮮明に見えます。

被写界深度は、焦点距離、F値、カメラから被写体までの距離、画像の視野の取り方の4つの要素に影響されます。画像の視野の取り方は、ピクセルのサイズ、モニターと観察者との距離、観察者の視力などに関係する側面です。

焦点距離が長いほど、F値が小さいほど、カメラと被写体との距離が短いほど、モニターと観察者との距離が短いほど、被写界深度が浅くなります。

    左: 被写界深度の浅い写真 - 手前のペンにのみフォーカスが合っている。右: 被写界深度の深い写真 - すべてのペンにフォーカスが合っている。

レンズとセンサーの適合

カメラのレンズを交換する際は、レンズをカメラのイメージセンサーに合わせることが重要です。レンズがカメラのセンサーのサイズよりも小さい場合、画像の隅が黒くなります。レンズがカメラのイメージセンサーのサイズよりも大きい場合、イメージセンサーの外側の情報が失われるため、視野角がレンズの最大視野角よりも小さくなります。このような場合、すべてのものがズームインされる望遠効果が生じることになります。

    1/1.8インチセンサーに対するさまざまなレンズの影響。
  1. 右:1/2.7インチのレンズはセンサーに対して小さすぎるため、画像の隅に黒い部分が現れている。
  2. 中央:1/1.8インチのレンズはセンサーのサイズに合っている。
  3. 左:1/1.2インチのレンズはセンサーに対して大きすぎるため、イメージセンサーの外側の情報は失われる。

監視におけるレンズのタイプ

モーターを使用して、フォーカスとズームをリモートで調整し、画質を最適化できるブロックレンズ。一般的にPTZカメラ、ドームカメラ、バレット型カメラで使用されています。このタイプのレンズはカメラに内蔵されており、交換不可です。

通常、M12レンズは焦点距離が固定され、アイリスコントロールがありません。小型なため、モジュラー型カメラ、一部のドームカメラ、装着式カメラ、インターコムに使用されています。一部のカメラでは、このレンズは交換可能です。このレンズはSマウントレンズとも呼ばれます。

CまたはCSレンズは、固有のネジマウントを備えており、レンズの交換が容易です。このタイプのレンズはボックス型カメラで使用されます。DCまたはPアイリスコントロールを備えたバリフォーカルレンズです。柔軟性に優れ、さまざまな監視用途に適しています。

i-CSレンズは、C/CSレンズと同じネジマウントを備えていますが、ズームとフォーカスをリモートで調整するためのモーターが内蔵されているため、よりインテリジェンスです。ブロックレンズと同様の利点がありますが、交換可能です。i-CSをサポートするボックス型カメラと互換性があります。

「Cマウント」と「CSマウント」は、交換可能レンズ用のマウント規格です。Axis固定ボックス型カメラは、両方の規格に対応しています。

CマウントとCSマウントの外観は全く同じです。両方共に口径が1インチ、TPI(1インチあたりのネジ山数)が32となります。Cマウント規格の更新版であるCSマウントは、Cマウントよりも一般的に使用されています。

CマウントとCSマウントの唯一の違いはフランジ焦点距離(FFD)です。FFDは、レンズをカメラに取り付けたときの取り付けフランジからカメラのセンサーまでの距離を指します。

    CマウントレンズとCSマウントレンズの唯一の違いは、フランジ焦点距離(FFD)です。
  1. Cマウントレンズ
  2. CSマウントレンズ
  3. カメラのイメージセンサー

レンズ上の表記

通常、レンズの焦点距離やF値、またその他の主な特徴は、レンズに明確に表示されています。以下の例をご覧ください。

  1. センサーフォーマット:1/1.8
  2. 焦点距離12~50 mm
  3. F値:F/1.4
  4. レンズマウントタイプ:CSマウント
  5. IR補正レンズ
  6. 絞りタイプ:Pアイリス

ツール

カメラやレンズ、またその他のアクセサリーをより容易かつ適切に選択できるように、Axisはレンズカリキュレーター、AXIS Site Designer、アクセサリーセレクターといった便利なツールを提供しています。こうしたツールには、www.axis.com/support/toolsからアクセスすることができます。

レンズカリキュレーター

当社のレンズカリキュレーターツールは、さまざまなカメラとレンズの組み合わせについて、設定距離におけるカメラの撮影範囲とピクセル密度を決定します。

ピクセル密度プレビューは、期待される画像品質を示すサンプル画像です。実際の画質および人物・物体を認識または識別できる可能性は、物体の動き、ビデオ圧縮、照明条件、カメラの焦点、レンズの歪みなどの要因によって異なります。

レンズカリキュレーターに一覧されている検知、観察、認識、識別のピクセル密度要件は、可視光カメラで撮影した画像を見る人間の目の程度に合わせられています。ナンバープレート検証など、画像を分析するソフトウェアの場合は、他のピクセル密度が必要になる可能性があります。

    レンズカリキュレーターツールのスクリーンショット。

AXIS Site Designer

AXIS Site Designerを使用して、インストールワークフローによって監視システムの設計を合理化します。何千ものAxisのデバイスを使用するシステムを作成する必要がある場合でも、あるいは少数でも、Axis Site Designerを使用すれば、正確な運用要件やニーズに適合する監視システムの設計、承認、設置を行うことができます。直観的なプロダクトセレクターを使用して、各状況に最適なカメラとデバイスを簡単に識別し、配置位置に合わせてマウントとアクセサリーを選択できます。また、システムストレージと帯域幅を効果的に見積もることもできます。

アクセサリーセレクター

このツールを利用することで、カメラのレンズ、マウント、ハウジング、ブラケット、電源など、適切なアクセサリーを選択することができます。